孤独な腐女子が異世界転生したので家族と幸せに暮らしたいです。

水都(みなと)

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第二章

第107話 英雄

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「結婚式か」

 鼻の下に髭のある村長さんが低く唸った。

「お父さん、お願い。今日はアリシアちゃんのお父さんたちの大切な記念日だったの。私たちもずっと準備していて、どうしても結婚式をやりたいの」

 ソフィアちゃんの懇願に、ざわついたのは避難していた村の人たちだった。

「台風の片づけもまだだってのに、結婚式なんて」
「そもそも男同士じゃないか。どうしてそんな」
「都会のやつというか、勇者ってのはよくわからんなぁ」

 ざわめきは次第に大きくなっていく。無理もない。
 私たちはまだまだ余所者で、そんな者たちがこんなときに結婚式を、しかも男同士でやりたいというのは意味が解らないだろう。
 ハドリーさんはゴリ押しでいけるっていってたけど、そんなに上手くは……

「やろうじゃないか!」

 村長さんの張りのある声が、広い部屋に響いた。みんなシンと静まり返り、村長さんに注目する。

「クローバーさんたちは危険を顧みず、避難誘導や救助を買って出てくれた。それに加え先程喫茶店のマスターから、森にあるアステリの木をクローバーさんたちが雷雨から守ってくれたと報告を受けた。彼らは村の英雄だ。プレンドーレ村をあげて礼をせねばならない」

 マスターというのはハドリーさんのことらしい。フルグトゥルスと言っても信じて貰えるかわからないから、そういう話として報告したみたい。
 アステリの木、というワードに再び村の人たちがざわめいた。

「森にアステリの木が!?」
「噂に聞いたことはあるぞ。ただの伝説だとばかり……」
「今年のアステリは全滅だと思ったが、そのアステリが守られたのなら」

 ガタッと誰かが立ち上がった。ひとつに編んだ三つ編みを肩の前に垂らした細身のお姉さんだ。でも立ち上がった途端よろけて、傍にいたお婆さんに支えられる。

「私、お手伝いします! 私と祖母はサディアスさんとハドリーさんに助けていただきました」
「あの方々が救助に来てくださらなければ、わたしも孫も逃げ遅れていたことでしょう」

 2人の言葉に、村の人たちが顔を見合わせる。

「そんなこと言ったら、俺もアルバートさんに言われなければ避難が遅れていただろうな」
「アルバートさんは川の様子を見に行くって聞かないうちの爺さんの代わりに、川を見に行ってくれたんだ。お蔭で爺さんも納得したよ」
「わしの畑もよく手伝いに来てくれてな。うちは若いのがいないから助かったさ」
「最初は本当にあれが勇者かねと思ったが、救助に駆けまわってるとこは顔つきが違ったなぁ。なかなか良い顔をしてやがった」
「あら、アルバートさんはずっと良い男ですよ」
「でも私は断然サディアス様派!」
「じゃあ、ハドリーさんはあたしが貰いますね!」

 なんか後半違う話になってる気もするけど、ざわめきが明るい雰囲気に転調していってる。
 ゴホン、と村長さんが大きく咳をした。

「ではこれより、プレンドーレ村をあげてアルバートさんとサディアスさんの結婚式を盛大に執り行う! 各々、準備に取り掛かるように!」

 おおー! と、自然と声が上がった。拍手まで沸き起こる。
 私もソフィアちゃんも力いっぱい手を叩いた。

「あなたがアリシアちゃんね?」

 拍手の中で、1人の女性に声を掛けられた。白い大きなエプロンが汚れてしまっている。

「この前、ハドリーさんから仕立ての依頼を受けたの。アルバートさんとサディアスさんの結婚式の服を」
「お姉さん、仕立て屋さんなんだ!」
「ええ、そうよ。最初は男の人2人のウェディングスーツなんてどうしようかと思ったけれど、引き受けて良かったわ。仕上がっているから、後でおうちまで届けるわね」
「はい! ありがとうございます!」

 にっこり微笑んだ仕立て屋さんに釣られて、私も緊張していた頬が緩む。
「ウエディングスーツ」と横から吐息混じりのソフィアちゃんの声が聞こえる。

「勇者様3人のウェディングスーツ……どんなに素敵なのかしら。どんなお衣裳なの?」
「私もまだ見てないんだ。ハドリーさんが頼んでくれたんだけど」
「それなら、式までのお楽しみね」

 うっとりとソフィアちゃんは胸の前で指を組んだ。

 さあ、そろそろ本当に結婚式の準備に取り掛からなくちゃ!


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