人の心が読める少女の物語 -貴方が救ってくれたから-

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五章 -触れ合う関係-

君がいるから

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 出かける準備を整え待っていた時、外から車のエンジン音が聞こえてくる。

 
「あっ、来たみたいだね」


 どうやら、迎えの車が来たらしい。透が外に出て行くのにあわせて俺も外に出ると、なかなかに派手なデカい車が停まっていた。

 軽トラとは違う。荷台の付いた普通車とでもいうのだろうか、何という分類の車かは分からなかったが海外の映画に出てきそうな迫力のあるやつだった。


「おー、透!久しぶりだなぁ」


 大きな声を出しながら明るい感じの女性が透に手を振って近づいてくる。
 鮮やかな金髪に、ピアス、日焼け、頭の上にはサングラスと車の印象に違わず、なかなかに派手な人のようだ。


「ハル姉、久しぶり!元気だった?」

「めちゃくちゃ元気。でもお前、なんというか、デカくなったなぁ、いろいろと」

「…………ちょっとハル姉、どこ見てるの?なんか目つきがやらしいんだけど」

「え、そりゃ。おっ……っぷは、やめろ!息できないじゃんか」

「もう!止めてったら」

 
 流れるような動きで相手に接近した透はその人の口に手を当て喋れないようにした後、何故かこちらをチラチラと見ながら頬を染めている。


「あーそういうことか。あっはは!ほんと、お前は乙女だなぁ」 
 
 
 その人が、透の視線を追いかけたようにこちらを見て視線が合う。
 なんだろう、と思っているとその人は大きな笑い声を上げて透の肩を叩き、こちらに近づいてくる。

 後ろでは透が恨めしそうな顔で睨んでいるものの、そんなものどこ吹く風といった感じで全く気にした様子は無さそうだ。

 
 清楚な感じの透とは対照的な雰囲気の人だが、とても仲が良いらしい。
 気の置けない関係というのがこちらに伝わってくる。


「初めまして。私は、如月(きさらぎ) 遥(はるか)。呼び方は任せるよ。それと、歳は上だけど透とは幼馴染みたいなもんなんだ」

「初めまして。俺は、透のクラスメイトの氷室 誠です。では、遥さん、しばらくの間よろしくお願いします」

「なんだ、地味な見た目の割にはシャキッとしたやつだな。まぁ、よろしく」
 
 
 はっきりとした物言いながらも、悪意を全く感じさせない彼女に逆に好感を抱く。
 
 そして、遥さんがこちらに手を出して握手を求めてきたので、俺も手を出し返そうとした瞬間、何故か透が間に割り込んでくる。


「どうした、透?」

「…………ちょっと、この隙間に入りたくなって」

「は?」

「あっははははは!ほんと、面白いな!!ひぃ、腹痛い」

 
 意味不明なことを透が言うので反応に困っていると、遥さんは理由がわかっているようで蹲(うずくま)りながら笑っている。
 
 ポカンとする俺、遥さんを睨む透、俺達の顔を交互に見て爆笑する遥さん、そのまましばらくその不思議な空間が続いた。






◆◆◆◆◆




 しばらくして、なかなか出発しない俺達におばあさんが小言を言いに来た後、車に乗って海に向かう。


「誠はバイトは初めてなのか?」

 
 遥さんはイメージ通りかなり気さくな性格なようで色々なことを聞いてくる。


「はい。なんで、ご迷惑かけたらすいません」

「ぜんぜんいいって。客ぶん殴るとか以外なら大したことじゃないから」
 
「ははっ、どこの世紀末ですか。なら大丈夫そうですね。この地味面にかけてそんなことしませんから」 

 
 あまりにもボーダーラインが低すぎて笑えてきてしまう。話しているうちにだんだんとわかってきたが、どうやら遥さんはかなり大雑把な性格らしい。
 だからだろう、こちらも気負わずに話すことができた。


「あっはっは。自虐まじウケる。お前、意外って言っていいのか、なかなか話しやすいな」

「そうですか?そんなこと一日に三回くらいしか言われないんですが」

「あははははっ。めちゃくちゃ言われてんじゃねぇか」

 
 ノリがよくとても話しやすい。いい意味でテキト―なのが俺の性格に合っているのだろう。
 それに、何を言っても楽しそうに笑い、こちらまでつられて笑いが出てくるような人だった。

 だが、そう思いながら遥さんと話している時、隣に座った透が何故かこちらの腿をつねってくる。力はほとんど入っていないので痛くは無いが。


「どうした?」  


 なんだろうと思って視線を移すと、透がぶすっとした顔をこちらに向けていた。
 いつからそんな顔をしていたのかわからなかったが、かなりご機嫌斜めなように見える。
  

「ふん。なんか、楽しそうだなって思って」

「ん?まぁ、楽しいけどさ」

「…………私と話してるより楽しい?」


 俺がそう返すと、今度は拗ねたように下を向きながらこちらにそう問いかけてくる。
 簡単なようでいて、難しい質問だ。透と話している時とは、楽しいの分類が何となく違う気がするしな。 


「うーん。どうだろ、比べられるもんじゃないからな」

「…………………」

 
 その答えはどうやらお気に召さなかったらしい。
 だが、誤魔化すための嘘はつきたく無かったので少し考えた後、俺なりに思っていることを正直に伝えることにした。


「今、俺はすごい楽しいよ。でもさ、それは透がいるからさらに楽しいんだと思う。ただ、そこにいてくれるだけでなんか違うんだ。漠然とそう思うだけだから明確に言葉にはできないんだけど」

「ふふっ。なにそれ」

「悪い。変なこと言った」

「いいよ。何となくわかったから」

「そうか?それなら良かった」

 
 急に機嫌をよくした透が、目を瞑りながらこちらにもたれかかってくる。
 少し暑いが、まぁ我慢するほかないかと思っていると、空調の風が強くなり涼しい風が当たるようになった。

 ふと前を見ると、バックミラー越しにニヤニヤとした顔の遥さんが見える。

 どうやら、気を利かせてくれたらしい。揶揄ういいネタを見つけたとでもいうような表情は若干気になるが。


 そして、そのまましばらく無言で車に揺られていると、遠くに海が見えてきた。
  
 太陽を反射して、キラキラと煌めく海。夏の始まりを、これ以上無いほどに感じさせてくれる綺麗な海が。
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