婚約破棄の特等席はこちらですか?

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間章①

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 テストの結果が発表され、二日後、このタイミングで再び悪意イベント②が始まるのでアリアちゃんの後をずっとつける。





 このイベントは自分より格下の貴族が自分達より優れた成績を出していることに暗い感情を抱いている中位貴族達の暴走が理由ではあるが、それは隠され、コーネリアのために動いたという理由にされたうえで本人には無断で行われる。





 まあ、後で知ったコーネリア自身も王子と近づこうとするアリディアに少し警告をしたいという気持ちもあったのか、黙認することにしたので同罪っちゃ同罪だが。







 今回は、前回のように言葉だけでは終わらず、ビンタを食らったうえで泥水をかけられることになる。





 そして、寮に帰る途中でクラウス王子が偶然それを見つけるのだ。

 彼は彼女を気遣い、その努力を踏みにじる者達に怒りを覚える。



 人という生き物の醜さを改めて感じ、彼女に問う。報復したいか?と。望むなら、それを手伝ってもいいと。

 王子の人間嫌いは加速していく。恐らくアリアちゃんがそれを望んでいれば彼は闇に飲まれていたかもしれない。





 だが、彼女はそれを望まない。ただ、気にしていないとそれだけ言う。





 彼女は他人を中心に置くことが多い。だからこそ、そんな危うさを王子は感じ取り、さらに気にかけていくようになるのだ。







 この悪意イベントを見るのはかなり心が痛い。だが、どうしても必要なこと。貴方の幸せには必要なのよとアリアちゃんに心の中で声をかける。このイベントが無いことで彼女が幸せになれなくなる可能性があるなら、血涙を流しながら耐えよう。











 そして、図書館に向かおうとする彼女が以前と同じように校舎の陰に連れて行かれる。



 前のよりも人数が多い。それだけ、不満が高まっているのだろう。アリアちゃんは他の人とほとんど話すことが無いので、お高く留まっていると誤解されやすいのかもしれない。

 今回は見守りが基本スタンスだが、水の魔法を使って泥水をある程度操作するつもりである。



 このため、音を聞き取るための風の魔道具を使って状況把握に努める。









「貴方、ちょっとテストの結果が良いからって調子に乗っているんじゃないかしら?貧乏男爵家のくせに生意気なのよ」



「……………………」





 うわードロドロした女の嫉妬怖い。正直、お近づきになれないタイプだ。アリアちゃんは家族のことを愛しているので、貧乏男爵家という部分に反応したが、言い返したら長引くと思ったのだろう。何も口にしない。





「何か言ったらどうなの!?それに、最近図書館で貴方が殿下に話しかけている姿が目撃されたらしいわ。このことにコーネリア様は大層ご立腹よ。人の婚約者に無断で話しかけるなんて恥を知りなさいよ」





「…………別に私が話しかけているわけじゃない」





 違う女生徒がヒステリックに叫ぶ。いや、殿下から話しかけているし、私は逆に応援旗を振るくらいそれを後押ししているのだが。





「何よ!?殿下があんたに話しかけているとでもいうの!?都合よく記憶を捻じ曲げてるんじゃない?

 でも、どちらにせよコーネリア様と婚約者になることは確実よ。まだ正式な決定前とはいえね。

 だから、あの方は大層悲しまれ、同時に貴方に怒りを覚えているわ。

 それに何も思わないのかしら?あーこれだから田舎貴族は無節操ではしたない」





「…………本当にそのコーネリア様がそう思ってるの?」





 おや、何やら記憶とセリフが違う。

 彼女は一言発するとそれ以後は無駄だと悟って何もしゃべらなくなる。そして、ビンタと泥水を食らい終了するはずなんだが。





「……そうよ。私達が嘘を言ってるとでもいうつもり?」





「…………彼女には一度もテストで勝ててない。私が毎日のように勉強してるのに関わらず。

 そんな才能があるはずの人がそんな風に思うのがあまり信じられない」





 あーそれかー。確かに、本編ではコーネリアは常に上位十人には入っているものの一位争いには最後 まで食い込んでこない。つまり、アリアちゃんには一度も勝たずに本編が進む。



 嬉しいセリフではあるのだが、そのせいで若干シナリオがずれてきている。





「っ!!うるさい!!嘘なわけじゃないでしょ!?自分が頭が良いからってバカにして!!」





 いけない。彼女たちの魔力が放出されていく。

 それほど強力な魔法ではないだろうが、当たり所が悪ければ重症になるかもしれない。



 私は咄嗟に魔法を放つ。水の分厚い壁をアリアちゃんの前に作ると放たれた全ての魔法を打ち消した。





「……………………え?」





 何が起きたか理解できなかったような顔で全員が強大な水の壁を見ている。



 そして、近づいてくる私を見て血の気の引いた青い顔をする。





「貴方達は何をしているのかしら?魔法まで使って」





 さも、今来ましたムーブで対応する。少し速足で来たのは内緒だ。





「あの……これは……その……申し訳ありませんでした」





 その場でアリアちゃんを除いた全員が土下座する。

 理由を聞くかとても迷う。だが、後で過激な報復をしかねないのでくぎを刺す必要があるだろう。





「理由を聞かせて貰えるかしら?」





 彼女たちは顔を見合わせるだけで何も言葉を発しない。

 めんどくさくなってきた私はお決まりのセリフで対応することにする。 





「今すぐ話すなら、私に関係することでも不問にしてあげるわ」



 

 そして、観念したように彼女たちが話し始める。まあ、聞いていたので知っている。

 聞きながら、対応を考えていく。



 重要なのはアリアちゃんを庇う、もしくは味方をすることが婚約拒否の発生にどこまで影響を与えるかということだ。あれはアリアちゃんにとって王子と結ばれるために必須なのだから。



 少し考えて思う。あんまり影響ないなと。





 なぜなら、コーネリアは作中でも自分から動いてイジメに加担するというのはほぼ無い。

 目障りだとは思いつつも、それほど重要視はしていなかったのだろう。



 あくまで、イジメの主要因は取り巻きやそれを建前とした下の貴族の暴走だ。



  

 このため、王子がコーネリアに婚約拒否を突き付けるのは彼女を嫌いと言うよりもアリアちゃんを好きになり過ぎてしまったということが理由となる。



 アリアちゃんは相変わらず、努力家で、天使で、可愛い。ならば問題は無いだろう。



 そういう結論に達したので私はアリアちゃんの味方をある程度することに決めた。





 既に説明は終わっていたようで、中位貴族の女の子たちは、黙る私を怯えながら見ている。





「理由はわかった。まあいいわ。ただし、次は無い。いいわね?」





 それを聞くと、彼女たちは目に見えて安堵する。念のため、もう一言だけ付け加えておこう。





「それに、この際だから言っておくけど、この子に思うところは無いわ。殿下と話すことも含めて。

 私には及ばないけど、努力しているのでしょう。それを私はむしろ評価さえしているの。

 貴方達も精進なさい。この子と同じように期待してるわ」





 やばい。褒め足りない。しかし、ここは我慢だ。なんとか堪える。





「はっ…はい!!頑張ります!!!」



  

「よろしい」





 そして、次にアリアちゃんの方を見る。



 

「ごめんなさいね。私に免じて今回だけは見逃してくれるかしら?」



 彼女はこちらを驚いた目で見ている。四大公爵家の人間が謝罪の言葉を口にするのが珍しいのだろう。

 というかその顔はレアだ。スクショしたい。





「……いえ。気にしていません。それに、さっきの言葉、嬉しかったです」





 なにこの天使。撫でたい。というか部屋に持ち帰りたい。

 いや、待て、落ち着け。これは致命的なミスをする前に戦略的撤退が必要かもしれない。





「ありがとう。そろそろ、私は行くわ。じゃあね」





 打診だけとは言え婚約者候補だ。流石にその前では王子も口説けないかもしれない。

 血反吐を吐くくらいの覚悟で彼女との距離をある程度保とうと思った。自信はあまり無いが。
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