ステルスセンス 

竜の字

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ファーストステージ

新たな道

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 一度家に戻り風呂に入り一眠りした後、羽津宮は近くの小さな美容院に行き、髪を短く切った。

得に意味は無かったが何となくそうしたい気分になったのだ。

そしてスーツにブラシをかけ、靴を磨いた。

それはカッコ良く見せたいと言う気持ちではなく、もう一度スタートするんだと言う意気込みを自分自信に見せつけるためであり、自己暗示にでもかけるような気持ちでそれを淡々と行った。

夜になり明日の事を考えると少し気持ちは興奮ぎみになったが昨日の疲れのせいで羽津宮はあっさりと眠りに付く事が出来た。

 朝、目がさめると昨日の興奮も冷め、出社するのに花見で酔い潰れてしまった気まずさが一瞬歩く足を重くしたが、モモさんの話を思い出すとすぐにその足も軽くなった。とは言えいつも乗っている電車には間に合わず1本遅れの電車になってしまった。吊り革を握り満員の車内をぼんやり眺める。

いつもと変わらない風景ではあるが羽津宮の気持ちが変わったせいで見え方がまるで違っていた。羽津宮は優しい笑顔を浮かべていた。

会社に着くといつもの時間に羽津宮が来ないので、「もしかしたらこのまま無断欠勤かな」などと心配されていたであろう空気が漂っていて、羽津宮もそれを感じ気まずくはあったがそれをはね除けるように明るく「おはようございます、花見の席では大変失礼しました。ごめんなさい」と言って少し戯けた表情で皆を見渡した。

先輩達の表情は皆優しく安心したような様子で、羽津宮はその優しさに涙が溢れそうになるのを必死で堪えた。

 羽津宮は自分の席に付き、今日やるべき仕事を確認していた。いつもどおり休み明けの月曜日なのだが、羽津宮にとっては物凄く長い時間を仕事から離れて過ごして来て、まるで久しぶりの仕事の様な感覚だったのだ。

机に向かっていると誰かがポンと肩を叩いた、振り返ると堀越が立っていた。

「おはよう、なんだか気まずいよね・・・やだな」

 堀越はそう言いながら肩を細めた。

堀越も花見の席で羽津宮につられて泣きじゃくっていたので恥ずかしいようだが、彼女のキャラもあって周りも彼女に対しては誰も深刻な気持ちは無く先輩も軽くからかってくる。

「おっ泣き虫の堀越じゃないか、おはよう」

「もうやだ先輩、泣き虫は羽津宮君ですよ。私はつられただけです」

「その通りです、すみませんでした」

「あっごめんなさい。でも頑張るもんね」

「はっは、2人とも元気で良かったよ。これでも少しは心配したんだぜ」

「何で少しなんですかぁ、もっと心配して下さいよぉ」

「いや堀越の事は全然心配して無いから」

「もおおおお」

 いつもながら堀越のこの明るさに羽津宮は助けられる。笑いながら行こうとする先輩を羽津宮は呼び止めた、これまでの羽津宮ならそうしなかったかも知れない。

「せっ先輩」

「あっ?どうした」

「ありがとうございます、気を使っていただいて。先輩の心使いが無かったらもう一度頑張れたか・・わから無いです」

「はっは、何を言ってんだ。俺のおかげか?まぁなそうだろうな」

「はい!おかげです」

「はっはは、まぁ頑張ろうぜ」

 そう言うと先輩は満足そうに鼻歌を歌いながら戻って行った。

そのまま羽津宮は青梅部長の所に行き同様にお詫びの挨拶をして頭を下げた。

「青梅部長、先日は本当に失礼な態度で申し訳ございませんでした」

「いや気にするな、お前の気持ちは分かるよ」

「いえ本当に失礼しました、これからも頑張りますので宜しく御指導下さい」

「本当に大丈夫か、お前・・・続けられるのか」

 青梅部長のその言葉に販促部がざわついた、皆はその言葉の意味を「辞めるなら今辞めてくれ」ととったからだ。

羽津宮も昨日のモモさんとの会話が無ければおそらくそう受けとってここで「辞めます」と言っていたに違い無かったが、そう言う意味にとらなかった。前向きな羽津宮の心が「青梅部長は僕の気持ちを察してくれているのだろう」と感じさせたのだ。

 勝手な解釈かも知れないがそう感じ取った羽津宮は感謝の気持ちを精一杯表情に表し応えた。

「ありがとうございます、大丈夫です。やれます。先輩方が色々気を使って下さってその気持ちに答えたいと思っています」

「そうかならいいんだ。良い先輩を持ったな。頑張れよ」

「はい、失礼します」

 人見知りの気がある羽津宮にはこの気まずい雰囲気の中で明るく愛想を振りまくのには少々照れくさく気疲れしたが、それでも少しずつモモさんの法則を実践して行った。

 それを実践しないのであれば会社を続ける意味を他に見つける事は出来ない、そこまであの日の羽津宮は思いつめていたのだ。

 そんな気まずい朝を乗り切るとまたいつもの1日が始まった、昼過ぎに泉山、羽津宮、寺田、堀越が青梅部長に呼ばれこれからの指示が伝えられた。

「まず・・・」

 そう言いながら青梅部長はパラパラと書類をめくった、おそらく山根前部長からの指示書なのだろう。

「えっっと・・・まず・・もう宮下君は編集部の方に行っているので、引き継ぎ等は向こうと行き来して行って欲しい、それと私も山根前部長との引き継ぎがあってしばらく外出する事が多いと思うのでそのつもりをしておいてくれ。でだね寺田君は新刊紹介のコラムも始まるし、ポップのコメントの仕事も増えるだろう、ピーアールと平行して行うのも難しくなりそうなのでそれに集中してもらう事になった。で1人で行うのも大変だろうから、堀越君、君の紹介ポップもなかなか評判がいいと言う事なので君、寺田君に付いて一緒にやってくれないか」

「えっ良いんですか、私寺田君みたいに書けるようになりたいなって思ってたので是非協力させて下さい」

「そうか分かった。君は今までのようにピーアールにも行きつつ現場の声など聞いて2人で良い物作って行ってくれ。寺田君もいいかな」

「はい。分かりました」

「泉山君は山根部長の選任で今年からはチーフだ、大変だろうがこれまで通り成果を上げて行ってくれ、山根前部長も君には期待していると言っていたよ」

「はい、ありがとうございます。がんばります」

「そして羽津宮君、去年入った他の4人がこういう状況なので、今年の新入社員の面倒は君が見てやって欲しいんだ。まぁ他の先輩達も勿論教えては行くが君が一番近い先輩だからね、良いリーダーとして皆を引っ張って行って欲しい、大事な役目だ頼むよ。一応、越野くんは君に付いてもらうから教えてやってくれ」

「はい、分かりました」

 その元気な返事に陣も堀越も少し驚いた様子で顔を見合わせていた。

その日の仕事が終わる頃、羽津宮は陣と堀越に声をかけた。

「今日これから御飯行かない、明日祭日だし、芋粥屋行こうよ。軽く御飯だけ、おごるからさ」

「おっ、どうしたんや。かまへんよ、どうしてん」

「私も良いよ・・・どうかしたの」

 2人はまだ心配していた、今日の意外なほど元気だった羽津宮の様子も2人には何かあるのではと心配させていたようだ。

「あっ何でも無いんだけど、いつも僕を励ましてくれてる2人がチャンスを掴んで行ってるからお祝したいんだ」

「なんや気使うなや、でも行こうや。入社1年の節目でもあるしな」

「そうよね1年良く頑張ったよね」

「うん、じゃあ僕電話しておくよ」

 仕事が終わると3人はワイワイと雑談に盛り上がりながら芋粥屋に向かった。

「羽津宮、今日、芋粥屋に電話したんやろ。何注文してん」

「そうよね、電話するのって始めてよね」

「うん・・・一番自信のある料理をお願いしますって・・・」

「ばっは・・意地悪やの、そんな注文されたら困るで」

「そうよね、何出して良いかわかんないわよね」

「えっ・・・そうかな・・・何でも美味しいからお任せしようと思って・・・」

「おまえらしいわ。はっはっは」

 エレベータを上がるとすぐに阿久津の顔が見える、心なしか緊張しているようにも見えるがそうでも無いようにも見える、つくづく不思議な男だ。

「こんにちは、今日は宜しく頼むで」

 陣は羽津宮の電話の内容を聞いて意地悪っぽく声をかけた。

「はい、お任せ下さい」

 そう言うと阿久津はおしぼりとお水、あったかいお茶を持って来た。

「あれ・・・なんや今日はカンパリソーダちゃうんかいな。こだわってんのかと思ってたがな」

「はい、今日は事前に注文を頂いておりますのでそれにあった物を出しております。もう始めても宜しいですか」

「うん、はじめてください。阿久津さんすっごくお料理上手だから楽しみよね。自信作って何なのかな」

「ではお持ちしますのでお待ち下さい」

「羽津宮何出しよるか知ってんのか」

「あっいや何も聞いて無い、僕も得意料理をお願いしますとしか伝えて無いんだ」

「そうなんだ・・・・」

 そう言って堀越が出されたお茶を飲んだ、

「あっこのお茶、ほうじ茶だ・・・懐かしいな・・・子供の時良く飲んだよね」

「おっほんまや・・・懐かしいな・・・・」

「お待たせ致しました。これが私の総ての料理の根底となっている料理です」

「わぁあ待ってました、なになに」

「芋粥でございます」

「えっ、芋粥・・・・ここで・・・まじで」

「はい、お召し上がり下さい」

 そう言って阿久津はカウンターの中に戻った、お膳にのせられた芋粥は小さな土鍋に入っていてお茶碗に2杯分ぐらい入っている、それとキュウリと白菜のお漬け物、かつお節にしょうゆをかけたもの、梅干しが一つ、それに小さなコップにりんごジュースがはいっている。

「まぁ・・・芋粥屋やからな・・・自信作って言ったら・・・・そりゃそうか」

「でも不思議よね・・・それなのにメニューに無いんだもん」

 羽津宮は小さな声で2人に言った。

「ごめん・・・・ちゃんと何か注文すれば良かったね」

「あほ、ええやん。食べようや」

 そう言って3人はいっせいに芋粥を口にした。

「あ・・・おいしい・・・芋粥ってこんなに甘かったっけ・・・懐かしいよね・・・だからほうじ茶だったんだ」

 いつも一番にほうばる堀越が一口でレンゲを止めて思わずそう言った。

「やばいわ、おれ・・・懐かし過ぎる・・・風邪ひいて治りかけの時いっつもオカンが作ってくれたな・・・」

「そうだね・・・・かつお節ってこんなに美味しかったんだね・・・」

 3人はそれぞれ故郷の想い出を想いながら静かに芋粥を食べた。

「あっ、このりんごジュース、りんごをすりおろしてあるんだ・・・」

「ほんまや・・・」

 そこにきゅうすを持って阿久津がやって来た。

「お茶をどうぞ」

「ありがとう。上手かったわ。それ以上になんかジンと来てしもた・・・それにしてもなんで芋粥が阿久津さんの料理の根底なんや、イメージと違うけど」

「はい、私も幼い頃、風邪をひくと母がこれを作ってくれました。この料理ほど食べる相手に対して『体を元気にしてあげたい』と言う愛情のこもった料理は無いと思います。母の料理に勝てなくても私は来て下さるお客さまに対してそう言う気持ちのこもった料理を出したいと思っているからです」

「だめ・・・・わたし・・・泣いちゃいそう」

「僕も・・・・なんか今日この芋粥が食べられて良かったです」

「ああ・・・なんか阿久津さんにやられた感じやわ」

「いえ、めっそうもございません。いつでもいらして下さい。」

 そう言うとお茶を入れてまた阿久津はカウンターに戻った。

「あっそうだ。2人ともおめでとう。ちゃんと自分がやりたい仕事やれるようにチャンス掴んで行ってるよね」

「何言うてんねん、仕事はお前が一番出来るんや。それは先輩も皆知ってる事や心配すんなって」

「うん、実は今は気分が良いんだ。すっごくやる気もあるし。やってやるぞって思ってる」

「そっか、よかった、ちょっと心配しちゃった」

「うん、ごめん。もう全然平気だから。心配しないで各々頑張ろうよ」

 羽津宮は帰るギリギリまでモモさんのことを二人に話そうか悩んだが、あまりにも不思議な出会い過ぎて上手く伝えられる自信もなく、誤解されて「相談に行くな」と言われても困るなと思い話すのを止めた。ひとしきり話し終わったところで今日は花見の疲れもあるので早めに帰ることにして三人は店を出た。

「今日はありがとうな、しんどい時にお祝とか言ってくれて」

「あっほんとに大丈夫だから。全然落ち込んでなんか居ないから気を使わないでよ」

「そうか、わかった。俺も頑張るから、頑張ろうや」

「そうそう、頑張るんだから。じゃあまた明後日ね」

「うん、また」

二人と別れて少し離れた駅から家に向かう電車に乗り込んだ。

「モモさん何してるのかな・・・」
 羽津宮はモモさんと話がしたくてたまらないのを必死で堪えながら、どうやったら会いに行きやすいかを考えていた。

 モモさんの居るその公園は羽津宮の家からそう遠くなく、会社からの帰りに寄れなくもない場所にある。

いつもは山手線の二つ先の駅まで行って、別の路線に乗り換えて家の最寄り駅まで行くのだが。

「そうだよな・・・この駅まで自転車で来れば帰りに公園に寄って帰れなくもないよな・・運動にもなるし自転車買おうかな・・・」

 そう思うとそれを確かめたくなってついその駅でおりてしまった。
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