ステルスセンス 

竜の字

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ファーストステージ

山場

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【怒り方で人は人に惹かれる】

「怒り方にもコツが在ってな、それさえ守ってリゃ怒るのは人をひき付ける絶好のチャンスだぞ。
 
 怒る時のコツは『保身』を見せない事だ。まず怒る時は上司のいないところで徹底的に怒れ、そいつの将来を心配して思い切り怒るんだ。

 そして上司には『私の不注意でした』と自分の責任だと報告し一緒に頭を下げる。最後に優しさを見せるんだ。注意するべき事があるなら解決した後伝えれば言い。その順番が大事だ。

 間違っても「オレにも責任が及ぶだろう」とか「自分で責任をとれ」なんて怒り方は一番やっちゃなんねぇ、これまでの信頼も一発ですっ飛んじまう。普段から面倒見てる後輩のミスは自分の責任だって意識を持っておく事も大事だな」

「なんとか法則通りに行ったな・・・今晩の部長との食事は1つの山場だよな・・・」
そう頭の中でつぶやくともう一度法則の予習を始めた。

【愚痴は上司から言わせろ】

「愚痴を言うにも優位な立場てのが在るんだ。自分の立場をコントロールできる側だ。野球で言えば後攻だな。最初に相手に愚痴を言わせた方が優位なんだ。本音を聞き出す事も出来るし、その時の判断で同調も批判も出来る。

 ただし同僚の愚痴に無闇に同調すんなよ、思い掛けない所で『あいつも同じ意見です』と巻き込む奴がいるからな。相手に先に愚痴らせるにはな、まず質問を先にする事だ、そしてその答えの中の小さな愚痴を見つけてそれに同調する。その作業を繰り返すと相手は愚痴を止められなくなるはずだ。酒が入ってりゃ絶対だ。

【上司は酒の場で慕え】
「仕事の場では慕って来るが、プライベートで寄り付かない人間と。仕事では甘えを見せないがプライベートで慕ってくる人間、どっちに好感を持つと思う、後者だよ。人はな結局自分の人間性を認めてくれる人間の方が好きなんだ。それを表現する場が酒の場だろうな。

 酒の場での無礼講、それは表面的にでの話だ、気をつけろ。それを鵜呑みにしてよ、何人かで飲むような状況で上司に本音でぶつかり男気を見せる奴や、上司に何かと突っ込み笑いをとって親し気にしたりする奴がいるが、どっちも博打だな。当たるか外れるかのどっちかだ。

 当たりを引きゃあ良いがリスクが高けえわな。そんな博打うつ事ぁねえんだ、普通誰だって酒は上機嫌で飲みたいもんだ、機嫌良くさせる方がハズレがねぇわな。

 あと上司とサシで飲む時の理想の展開はな、持ち上げる、愚痴を聞く、同調する、弱音をはく、慕う。この展開だ。分かりやすく言うとだな。

まずは持ち上げるんだ、小さな事から感謝して行く「あの時こう言ってくださって嬉しかったです」位から始めて、最後は仕事を持ち上げる「あの部長の判断は他の誰も思いつきませんよ」とかな。

 すると得意げに苦労話も話出すさ「あれは大変だったんだぞ」ってな。そこから愚痴を聞き出し、それに同調して行く。相手に自分をシンクロさせるんだ。

 そして弱音「自分はどうしたら良いのでしょうか」と相手にゆだねるように弱音をはく。上司とお気に入りの部下を見てみろ、大体の上司は自分に似た自分より弱い奴を好んでる。

「まぁうまくやれ。ここを越えられるかでこの先大きく変わるぞ」

 羽津宮は法則がしっかり頭に入っている事を確認すると大きく息をはいた。

「ふぅうう・・・・・プレッシャーかけてくれるよ・・・・」

 そして陣の事が頭を過る

「陣君はきっとこういう事、天性の感覚でやっちゃってるんだろうな・・・」

陣の事を思い出したおかげで気持ちが落ち着いた。

「よし、残りの仕事終わらすかな」

 定時までいつもと変わらず仕事を終えると、羽津宮は大きく心のスイッチを入れた。 

 少し人見知りをする羽津宮にとって大きな仕事を任されるより、上司と二人で飲みに行く事の方が覚悟がいる。

 仕事の話であれば普通に話せるのだが、これから飲みに行くとなると話は別だ。

 法則の事がなければ、頭の中で幾つもの会話のパターンをシュミレーションしていたに違いない。

 羽津宮が入れたスイッチはそんな自分と陣のようにプライベートで気さくに話せるキャラを入れ替えるスイッチだった。

「青梅部長、仕事終わりました」

「おおそうか、よし・・・ちょっと・・・待ってくれ・・・・」

 青梅部長は何枚かの書類にサインをしクリアファイルに挟み込むとボックスに投げ入れ片付け始めた。

「毎日毎日、サインしてハンコか・・・つまらんもんだな部長ってのは、はっは・・よしっと。じゃあ行くか」

「はい」

 会社を出て飲屋街を歩く。
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