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ガランドゥ 14話 『復讐に意味はなく……』
14-8
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【15】
二振りのブーメランを構えるダニーは、全身から生える結晶から青色の輝きを放ちながら佇んでいる。対する粳部は全身弱点、隣の谷口は第二形態。戦力比はギリギリ互角と言ったところだ。
「祭具招来、司祭が祭具を使い熟した果ての姿だ」
「こ、こんなの見たことないですよ!」
「ああ、熟練の司祭じゃなきゃ無理だ。これは厄……」
そう谷口が言いかけた時、弧を描いて飛んできたブーメランが彼を弾き飛ばしていく。祭具招来でフルパワーを発揮した今のダニーは彼よりも速い。何も理解できない粳部は一瞬で彼に頭を掴まれ、放り投げられると首が折れた。床をバウンドする彼女へ更にブーメランが直撃する。
「ぐえっ!?」
「ハハハハ!」
彼女を切り裂いたブーメランは谷口に直撃し、何とか腕で弾き飛ばす彼だったが再びブーメランが戻ると背中を切り裂いた。よろける彼にダニーが近付き格闘戦を仕掛け、拳を何とか捌く谷口も次第に対応できなくなっていく。
海坊主が腕を伸ばして背中からダニーを掴もうとするが、飛び回るブーメランがその腕を切断する。飛び出したダニーは海坊主を殴り足を払うと、両腕でその体を引き千切った。
「早すぎる……!」
驚愕する粳部の横をダニーが通り過ぎたかと思うと、一瞬で体が三分割される。彼を追いかける谷口だったがブーメランが激突しその動きを止め、ダニーの動きを読んだ彼は真横に蹴りかかる。
しかし、一瞬で姿を消した彼は谷口の胴にラリアットを叩きつけ、そのまま弾き飛ばすと急降下したブーメランが彼を襲う。衝撃で床を破り駐車場の一階まで落ちていく谷口。
「正義の反対はまた別の正義だ!」
「自分が正義だって思いたいだけでしょ!」
「そうかな?」
再生した粳部の背後に現れるダニー。彼女は咄嗟に振り向くとクロスカウンターを試みるが、間に合わずお互いの拳が頭にぶつかる。そこに飛来したブーメランが彼女の腹にぶつかるとそのまま弾き飛ばした。
谷口が床の穴から這い上がる。
「粳部!」
「お前も死に損ないだな!」
ダニーはブーメランをキャッチして粳部に投げると、一目散に谷口へ駆け寄り拳を打ち込み追い詰める。傷を負いながらも拳を捌く谷口は受け流しきれず、限界が近い彼は最後の手段に出た。
「やむを得ないか……司祭第三形態!」
谷口の体から更に結晶が生えると、緑色の光を放ち加速していく。ダニーと互角の速度まで上昇すると拳を捌ききり、彼の首にチョップを叩き込もうとする。しかし、ブーメランが彼の手を弾きそれを阻止。谷口は怯まずに足払いして彼の姿勢を崩した。
だが、衝撃でのけぞったダニーはブーメランをキャッチし、そのまま谷口に切り掛かる。
「おらあ!」
「谷口さんッ!」
飛び込んできた粳部がブーメランを両手で受け止め、足元の影に発煙弾を作ると周囲を煙で包む。彼女はバックステップで下がると弓を構え、ダニーの居た場所に打ち込んだ。奇襲に対応できない彼の胸を二発の矢が貫通する。
怯みつつもブーメランで煙をかき消す彼だったが、背後に現れた谷口の回し蹴りで床を突き破り落ちていく。
「あ、あいつ手に余ります!」
「ああ、Ω-相当の実力者だ。厄介だぞ」
「どうします?このままじゃ周辺に被害が出ますよ?」
「……使いたくない手だが、粳部は奴の動きを止めろ。俺が決める」
そう言う谷口の表情は粳部には見えず、どういう作戦なのかも彼女には分からなかった。しかし、それでもこの盤面でそう言い切った彼を信じることを選んだのだ。クラスΩは伊達ではなく、同じ部隊の仲間である事実も伊達ではない。
粳部が無言で頷いた途端、床を突き破ってブーメランが現れた。
「いくぞ」
「はいっ!」
粳部はブーメランを作り出すと投擲してそれにぶつけ、谷口も打撃でブーメランを撃ち落とす。それと同時に彼の背後に地面を突き破ってダニーが現れ、彼の脇腹を手刀で切り裂く。谷口も振り向きざまに蹴るが彼はしゃがんでそれを躱し、頭突きをぶつけて彼を弾き飛ばした。
更にブーメランが飛来し谷口の腕を切り裂くが、二振り目はすんでのところで粳部が掴み、力を加え破壊する。
「まず一つ!」
「だから何だ!」
ダニーが粳部の方にもう一振りのブーメランを向かわせる。しかし谷口がブーメランを蹴飛ばして方向を逸らし、激情したダニーに殴り飛ばされた。だが粳部はその隙を見逃さず、海坊主で鎖を作り出すとダニーを縛り上げ柱に叩き着ける。
「やれっ!」
彼女が指示を出すと海坊主が柱の周りを回ってダニーに鎖を巻き付け、粳部も反対側に回ってダニーを巻き付けた。柱に括りつけられた彼は身動きが取れず暴れ回るが、彼女は更に拘束を強める。
粳部が彼に手をかざした。
「五結漆柱!」
それは封印型の法術の究極系、いつかに谷口が手本を見せた法術。見ただけでやり方を習得できる、天才の彼女にしかできない芸当。朱色の柱が生えるとダニーを飲み込みその動きを完全に封じ込め、彼の法力と体力を奪っていく。
「で、できた!谷口さん!」
「異常な天才だな!五結漆柱!呼縛散宣!」
駆け付けた谷口が手をかざし法術を発動、五結漆柱がもう一本生えるとダニーを更に飲み込んでいく。そこに呼縛散宣の鉄の輪が縛り付けるように柱を捕らえ、暴れるダニーを完璧に封印した。
「よしっ!」
「よしじゃないこれからだ」
その刹那、飛来してきたブーメランで五結漆柱にひびが入る。更にひびの中から淡い水色の光が放たれたかと思うと、柱が崩れてダニーが脱出しようと暴れ出す。その水色の結晶に包まれた姿は司祭第五形態だった。
谷口が殴る構えを取るが、跳ね返ったブーメランが彼の仮面に直撃しそれを粉砕する。それでも彼は素顔のまま姿勢を崩さなかった。
「司祭第五形態ッ!」
「そうか」
次の瞬間、谷口の全身から結晶が生え紫色に輝いたかと思うと、顔の結晶が仮面に変化し鎧が形成される。それはかつて藍川が見せた司祭第六形態、司祭が辿り着いた異形の姿。
目にも留まらぬ速度で飛び出した谷口の一撃はダニーの胸を完全に貫いた。衝撃でコンクリートの柱や彼の結晶は吹き飛び、完全に勝敗は着いたのだ。
「司祭第六形態」
「ゴホッ……!」
元の姿に戻った谷口は彼から腕を引き抜き、血を振り払うとダニーが床に倒れた。ようやく周囲が静寂に包まれ全てが解決したかと思われたが、静かになったことで怯えている誰かの声が聞こえるようになった。
「あっ……あっ!」
「み、民間人が!」
車の横に隠れていた民間人が尻もちをついて倒れている。その声を聴いたダニーは目を見開き、地面に落ちていたブーメランを操作すると民間人の心臓を貫く。粳部が呆気に取られる中、ダニーは血を吐くような声で高笑いした。
「ははっ!ハハハハハ!」
「あっ……ひっ!?」
高笑いするダニーの顔を、谷口は力一杯踏みつけて気絶させた。
【16】
町の小さな定食屋。時代を感じさせる古い内装の中、小さなテレビが部屋の角にある棚の上でニュース番組を流し続けている。テーブル席に座る谷口と粳部は向かい合い、彼女は浮かない顔でラーメンを啜っていた。
谷口の表情は仮面で見えない。
「この前の被害者、どうなったんです?」
「うちで治療してとっくに退院だ」
復讐鬼は彼らの手によって止められた。司祭に覚醒し暴れ回ったダニーは逮捕され、蓮向かいの基地深くに封印されている。もう彼が復讐の連鎖を起こすことはなく、一連の事件はようやくひと段落ついたのだ。
「……もう忘れろ。司祭が関わらないなら関係ない」
「あいつ、何がしたかったんですかね……」
「スッキリしたかったんだろ。理屈なんて、本当はどうでも良かったんだ」
俯いた粳部が無言でラーメンを啜る。ダニーを止めて被害者は救われたが、既に死んだ武道も南條も帰ってこない。もう全てが手遅れになった世界で、彼女は普段の業務に戻るしかなかった。
その時、アナウンサーの声が店内に響く。
『今日未明、京王長沼駅前の事務所で火災が発生し、三名が亡くなりました』
粳部がテレビを見上げ画面を見つめると、そこには見覚えのある名前と顔があった。少し前にダニーから助けた女性と赤子の二人が表示されていたのだ。
『南條千代さんと娘の志保さん、身元不明の一名の死亡が確認されています』
「……えっ?」
『放火と見られており、暴力団との関連性が……』
彼女はそこから先を聞いていなかった。谷口は次のニュースに変わるまでテレビ画面を見つめテーブルの方を見る。救ったところで結局殺されたのだ。もしかすると、最初からそういう運命だったのかもしれない。
「助けても死んだわけか」
「……だからって……助けるのを止めはしませんよ」
「だが、虚しいな」
粳部が強く唇を噛んだ。
「殺されたから殺して、繰り返して……復讐って何ですか」
「人間、情動には抗えない。かく言う俺がその一人だ」
「こんな……」
「復讐者は外面の良さで持て囃されるが、実際は違う」
復讐者達によってもたらされたこの惨状。皆が自分の情動に突き動かされた結果、好き勝手暴れ回った結果がこれだ。そこに大義はなく正義もない。正義の反対は正義と言っても結局、相手を本当に正義だと認めることはしないのだ。
「中身はただ仇を討ってスッキリしたい快楽主義者だ」
「谷口さん、それでいいんですか?」
「ああ、俺は快楽主義者であることを認めている」
認めた上で、そうあり続けることを選んだのだ。彼は正義など求めずただ報復し、仇を討つことしか考えていない。そうすることしかできない燃えカスなのだ。彼はもう二度と、普通には生きられない。
「悪である前提で、復讐者は戦うんだ」
「……それ、誰が救われるんです……」
彼はその問いに何も答えなかった。
「これで、誰が救われるって言うんですか!」
永遠に続けよう、このゼロサムゲームを。
二振りのブーメランを構えるダニーは、全身から生える結晶から青色の輝きを放ちながら佇んでいる。対する粳部は全身弱点、隣の谷口は第二形態。戦力比はギリギリ互角と言ったところだ。
「祭具招来、司祭が祭具を使い熟した果ての姿だ」
「こ、こんなの見たことないですよ!」
「ああ、熟練の司祭じゃなきゃ無理だ。これは厄……」
そう谷口が言いかけた時、弧を描いて飛んできたブーメランが彼を弾き飛ばしていく。祭具招来でフルパワーを発揮した今のダニーは彼よりも速い。何も理解できない粳部は一瞬で彼に頭を掴まれ、放り投げられると首が折れた。床をバウンドする彼女へ更にブーメランが直撃する。
「ぐえっ!?」
「ハハハハ!」
彼女を切り裂いたブーメランは谷口に直撃し、何とか腕で弾き飛ばす彼だったが再びブーメランが戻ると背中を切り裂いた。よろける彼にダニーが近付き格闘戦を仕掛け、拳を何とか捌く谷口も次第に対応できなくなっていく。
海坊主が腕を伸ばして背中からダニーを掴もうとするが、飛び回るブーメランがその腕を切断する。飛び出したダニーは海坊主を殴り足を払うと、両腕でその体を引き千切った。
「早すぎる……!」
驚愕する粳部の横をダニーが通り過ぎたかと思うと、一瞬で体が三分割される。彼を追いかける谷口だったがブーメランが激突しその動きを止め、ダニーの動きを読んだ彼は真横に蹴りかかる。
しかし、一瞬で姿を消した彼は谷口の胴にラリアットを叩きつけ、そのまま弾き飛ばすと急降下したブーメランが彼を襲う。衝撃で床を破り駐車場の一階まで落ちていく谷口。
「正義の反対はまた別の正義だ!」
「自分が正義だって思いたいだけでしょ!」
「そうかな?」
再生した粳部の背後に現れるダニー。彼女は咄嗟に振り向くとクロスカウンターを試みるが、間に合わずお互いの拳が頭にぶつかる。そこに飛来したブーメランが彼女の腹にぶつかるとそのまま弾き飛ばした。
谷口が床の穴から這い上がる。
「粳部!」
「お前も死に損ないだな!」
ダニーはブーメランをキャッチして粳部に投げると、一目散に谷口へ駆け寄り拳を打ち込み追い詰める。傷を負いながらも拳を捌く谷口は受け流しきれず、限界が近い彼は最後の手段に出た。
「やむを得ないか……司祭第三形態!」
谷口の体から更に結晶が生えると、緑色の光を放ち加速していく。ダニーと互角の速度まで上昇すると拳を捌ききり、彼の首にチョップを叩き込もうとする。しかし、ブーメランが彼の手を弾きそれを阻止。谷口は怯まずに足払いして彼の姿勢を崩した。
だが、衝撃でのけぞったダニーはブーメランをキャッチし、そのまま谷口に切り掛かる。
「おらあ!」
「谷口さんッ!」
飛び込んできた粳部がブーメランを両手で受け止め、足元の影に発煙弾を作ると周囲を煙で包む。彼女はバックステップで下がると弓を構え、ダニーの居た場所に打ち込んだ。奇襲に対応できない彼の胸を二発の矢が貫通する。
怯みつつもブーメランで煙をかき消す彼だったが、背後に現れた谷口の回し蹴りで床を突き破り落ちていく。
「あ、あいつ手に余ります!」
「ああ、Ω-相当の実力者だ。厄介だぞ」
「どうします?このままじゃ周辺に被害が出ますよ?」
「……使いたくない手だが、粳部は奴の動きを止めろ。俺が決める」
そう言う谷口の表情は粳部には見えず、どういう作戦なのかも彼女には分からなかった。しかし、それでもこの盤面でそう言い切った彼を信じることを選んだのだ。クラスΩは伊達ではなく、同じ部隊の仲間である事実も伊達ではない。
粳部が無言で頷いた途端、床を突き破ってブーメランが現れた。
「いくぞ」
「はいっ!」
粳部はブーメランを作り出すと投擲してそれにぶつけ、谷口も打撃でブーメランを撃ち落とす。それと同時に彼の背後に地面を突き破ってダニーが現れ、彼の脇腹を手刀で切り裂く。谷口も振り向きざまに蹴るが彼はしゃがんでそれを躱し、頭突きをぶつけて彼を弾き飛ばした。
更にブーメランが飛来し谷口の腕を切り裂くが、二振り目はすんでのところで粳部が掴み、力を加え破壊する。
「まず一つ!」
「だから何だ!」
ダニーが粳部の方にもう一振りのブーメランを向かわせる。しかし谷口がブーメランを蹴飛ばして方向を逸らし、激情したダニーに殴り飛ばされた。だが粳部はその隙を見逃さず、海坊主で鎖を作り出すとダニーを縛り上げ柱に叩き着ける。
「やれっ!」
彼女が指示を出すと海坊主が柱の周りを回ってダニーに鎖を巻き付け、粳部も反対側に回ってダニーを巻き付けた。柱に括りつけられた彼は身動きが取れず暴れ回るが、彼女は更に拘束を強める。
粳部が彼に手をかざした。
「五結漆柱!」
それは封印型の法術の究極系、いつかに谷口が手本を見せた法術。見ただけでやり方を習得できる、天才の彼女にしかできない芸当。朱色の柱が生えるとダニーを飲み込みその動きを完全に封じ込め、彼の法力と体力を奪っていく。
「で、できた!谷口さん!」
「異常な天才だな!五結漆柱!呼縛散宣!」
駆け付けた谷口が手をかざし法術を発動、五結漆柱がもう一本生えるとダニーを更に飲み込んでいく。そこに呼縛散宣の鉄の輪が縛り付けるように柱を捕らえ、暴れるダニーを完璧に封印した。
「よしっ!」
「よしじゃないこれからだ」
その刹那、飛来してきたブーメランで五結漆柱にひびが入る。更にひびの中から淡い水色の光が放たれたかと思うと、柱が崩れてダニーが脱出しようと暴れ出す。その水色の結晶に包まれた姿は司祭第五形態だった。
谷口が殴る構えを取るが、跳ね返ったブーメランが彼の仮面に直撃しそれを粉砕する。それでも彼は素顔のまま姿勢を崩さなかった。
「司祭第五形態ッ!」
「そうか」
次の瞬間、谷口の全身から結晶が生え紫色に輝いたかと思うと、顔の結晶が仮面に変化し鎧が形成される。それはかつて藍川が見せた司祭第六形態、司祭が辿り着いた異形の姿。
目にも留まらぬ速度で飛び出した谷口の一撃はダニーの胸を完全に貫いた。衝撃でコンクリートの柱や彼の結晶は吹き飛び、完全に勝敗は着いたのだ。
「司祭第六形態」
「ゴホッ……!」
元の姿に戻った谷口は彼から腕を引き抜き、血を振り払うとダニーが床に倒れた。ようやく周囲が静寂に包まれ全てが解決したかと思われたが、静かになったことで怯えている誰かの声が聞こえるようになった。
「あっ……あっ!」
「み、民間人が!」
車の横に隠れていた民間人が尻もちをついて倒れている。その声を聴いたダニーは目を見開き、地面に落ちていたブーメランを操作すると民間人の心臓を貫く。粳部が呆気に取られる中、ダニーは血を吐くような声で高笑いした。
「ははっ!ハハハハハ!」
「あっ……ひっ!?」
高笑いするダニーの顔を、谷口は力一杯踏みつけて気絶させた。
【16】
町の小さな定食屋。時代を感じさせる古い内装の中、小さなテレビが部屋の角にある棚の上でニュース番組を流し続けている。テーブル席に座る谷口と粳部は向かい合い、彼女は浮かない顔でラーメンを啜っていた。
谷口の表情は仮面で見えない。
「この前の被害者、どうなったんです?」
「うちで治療してとっくに退院だ」
復讐鬼は彼らの手によって止められた。司祭に覚醒し暴れ回ったダニーは逮捕され、蓮向かいの基地深くに封印されている。もう彼が復讐の連鎖を起こすことはなく、一連の事件はようやくひと段落ついたのだ。
「……もう忘れろ。司祭が関わらないなら関係ない」
「あいつ、何がしたかったんですかね……」
「スッキリしたかったんだろ。理屈なんて、本当はどうでも良かったんだ」
俯いた粳部が無言でラーメンを啜る。ダニーを止めて被害者は救われたが、既に死んだ武道も南條も帰ってこない。もう全てが手遅れになった世界で、彼女は普段の業務に戻るしかなかった。
その時、アナウンサーの声が店内に響く。
『今日未明、京王長沼駅前の事務所で火災が発生し、三名が亡くなりました』
粳部がテレビを見上げ画面を見つめると、そこには見覚えのある名前と顔があった。少し前にダニーから助けた女性と赤子の二人が表示されていたのだ。
『南條千代さんと娘の志保さん、身元不明の一名の死亡が確認されています』
「……えっ?」
『放火と見られており、暴力団との関連性が……』
彼女はそこから先を聞いていなかった。谷口は次のニュースに変わるまでテレビ画面を見つめテーブルの方を見る。救ったところで結局殺されたのだ。もしかすると、最初からそういう運命だったのかもしれない。
「助けても死んだわけか」
「……だからって……助けるのを止めはしませんよ」
「だが、虚しいな」
粳部が強く唇を噛んだ。
「殺されたから殺して、繰り返して……復讐って何ですか」
「人間、情動には抗えない。かく言う俺がその一人だ」
「こんな……」
「復讐者は外面の良さで持て囃されるが、実際は違う」
復讐者達によってもたらされたこの惨状。皆が自分の情動に突き動かされた結果、好き勝手暴れ回った結果がこれだ。そこに大義はなく正義もない。正義の反対は正義と言っても結局、相手を本当に正義だと認めることはしないのだ。
「中身はただ仇を討ってスッキリしたい快楽主義者だ」
「谷口さん、それでいいんですか?」
「ああ、俺は快楽主義者であることを認めている」
認めた上で、そうあり続けることを選んだのだ。彼は正義など求めずただ報復し、仇を討つことしか考えていない。そうすることしかできない燃えカスなのだ。彼はもう二度と、普通には生きられない。
「悪である前提で、復讐者は戦うんだ」
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