暁の魔術師

久浄 要

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混迷の霧

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本庁捜査一課の背広の一団が乗った車が、目黒警察署の前に次々に到着した時、報道局のテレビカメラが一斉にそちらの方を向いた。民放のテレビを見ると、ちょうどその生中継の様子がリアルタイムで報道されている。

世間にとっては重大事件とはいえ、CMを挟む度に、同じことを繰り返し伝えるアナウンサーの様子が、まるで針が壊れた時計のようだと早瀬は思った。針が進むことなく、ひたすらカタカタと足踏みを繰り返している様は、時計が狂ったと表現したりする。

俺が置かれている状況も似たようなものか。

早瀬はブラインドを降ろしてテレビを消すと、重い溜め息を一つついた。皮肉なことに今日は雲一つない快晴だった。

昨夕から真夜中にかけて、突如として関東一円を襲った暴風雨が収まったのは、明け方近くの事だった。

四国地方から太平洋上に、大きく進路を変えた大型の台風13号が残した爪痕は、思いのほか小さく、終わってみればたった一夜の悪夢にしか過ぎなかったのである。

しかし、人間が起こす事件は、そもそも日時や場所、気象も人も選ばない。そんなものは関係ないとばかりに突如として起きるものだ。

白々と明けていく空の真下、地上を覆い尽くしていた夜陰と霧が徐々に晴れ渡っていくにつれ、白日の下に晒された事件の様相は、とんでもない波紋を広げている。

6月27日午前8時27分。

事件発生の第一報がここ、所轄の目黒署に齎されたのは昨日の19時22分。あれから既に18時間以上が経過していた。

昨日の夕方過ぎに起きた凶事の顛末が『目黒区聖真学園連続殺人事件』という名前に変わり、昨夜から今朝にかけて続々と捜査員が目黒署に増援される中、改めて昨日付で捜査本部長に抜擢された早瀬一郎警視の周辺は完全に忙殺の一語に尽きた。

皮肉にも雲一つない晴れ渡った快晴の空が、これほどまで鬱陶しいと感じた日はない。現場で捜査にあたっている、所轄の目黒署の刑事達や警官や鑑識班の多くの人間達と同様に、早瀬も昨夜は眠っていない。急遽きゅうきょ本庁から増援された刑事達にしても同様だろう。

早瀬は普段、警視という身分や職分には不満を持つことなどないのだが、その日ばかりは今年に入って拝命したばかりの、この仰々しい肩書きが嫌で厭で仕方がなかった。ただでさえ状況は立て込んでいる。

発端の飛び降り自殺から始まり、傷害事件。そして極めつけが、今回の連続殺人事件である。

同じ管内、同じ学園の周辺でこれだけ短期間のうちに事件が集中する場所というのはめずらしいだろう。しかも、背後には売買春や薬物まで深く関わっている。

現場の雰囲気や捜査員の顔ぶれにも慣れた頃、聞き込みや捜査範囲や担当捜査員の割り当ても決まり、捜査が軌道に乗り始めたという矢先に、またしてもこのタイミングの悪さは、あまりに悪魔的としか言いようのない間の悪さだった。

昨日、またも聖真学園で三人の人間が死んだ。

一人は聖真学園の校長である村岡義郎。そして、成瀬勇樹や最初に死んだ川島由紀子のクラスメートである沢木奈美という女生徒。

そして最後に自殺した一人が目下のところ、捜査員達の間で一番最有力の容疑者とされている現役高校生タレントの一条明日香だ。

二件の他殺と一件の自殺。

一夜にして立て続けに起きた、これら三件の事件は昨夜のうちに一応の捜査の見通しこそ立ったものの、到底受け入れ難い顛末てんまつが齎した混乱はいよいよ混迷の度合いを深め、阿鼻叫喚の様相を呈し始めた。

マスコミや生徒達の保護者、噂を聞きつけた生徒達や野次馬、一条明日香のファンといった有象無象まで現れ、学園は一時、警察関係者ですら容易には入れないという異常な事態に陥ってしまったのだった。徹底した現場保存をする上で、こんな非常識な事件はない。

容疑者に至っては、多くの衆人監視の目の前で墜落死しているのだ。まさか、それが夜にテレビのニュース速報のテロップで流れた有名タレントであるなどとは、誰も予想できなかったに違いない。

そして被疑者の女生徒は死んでしまった。真相はまさに、彼女の命と共に闇の渦中に堕ちてしまった。

売春していた少女達の事情聴取は早速平行して進めているが、全体の確認作業だけでも捜査には相当な時間がかかると思われた。

管理官の早瀬や古井を始め、本庁からの増援組である磯貝警部に花屋敷に石原、そして多くの捜査員達は、この非常識極まりない事件に翻弄され、今後は被害者の家族やマスコミには連日のように叩かれ、足を棒にして奔走しなければならないのだ。

眼鏡を外して血走った目頭を押さえ、早瀬は昨日から何杯めかの苦々しいコーヒーをブラックのまま啜った。

現場の捜査員達が真夜中に足を棒にしてかき集めてくれた情報を下に、大急ぎで作成されたと思われる報告書の詳細を頭に刻みつけるだけでも、早瀬は冗談ごとではなく胃に穴が空くような思いを味わっていた。

所轄の目黒署は、朝から狂った祭りのごとき大騒ぎを呈している。

既に外には大勢の報道カメラマンやマスコミの記者たちが門前市を成していた。

警視庁記者クラブの記者会見は十時から行われる予定だったが、早瀬はこれを早々に辞退し、所轄目黒署の署長と古井らに任せることにしていた。

本庁からの確認の電話は昨日から鳴りっぱなしだ。刑事部屋や署内にしても同様だろう。聞けば外部からは早くも警察の職務怠慢を訴える内容やイタズラ電話、誹謗中傷の類まで届いているという。

事件と関係のない報告まで聞く度に早瀬は何度、この忌々しい電話機を真新しい壁に叩きつけるか、ジャックごと引きちぎってやろうと思ったか解らない。

ネットの書き込みなど今やどこも同じだ。専用のブログやサイトも既に立ち上がったことだろう。あちこちで火災が類焼したかのごとく炎上している文字の羅列など、気分が悪くなるだけで見たくもなかった。

しかし、なんとまあ世の中というものは退屈と事件に飢えていたのだろうかと早瀬は感心する。世の中からこの種の犯罪がなくなることはないのだろうが、噂やゴシップ、胡散臭い話の一切がなくなってしまえば、きっと退屈で死んでしまいたくなる人間もいるに違いない。

早瀬のデスクには、鑑識から届いた殺害現場と容疑者の死体が写った写真が何枚も広げられている。

どれもこれも、無残というよりなかった。容疑者の一条明日香に至っては、川島由紀子の時とは状況が明らかに違っている。

時計塔の頂上から地上まで、およそ五十メートルはあろうかという位置から落ちた女生徒の死体なのである。

写真を見た瞬間、早瀬の胃の収縮は最高潮に達した。

現場に行けなかったのは、却って不幸中の幸いだったかもしれない。

恐らく墜落した体勢が悪かったのだろう。潰れたトマトのようにグシャグシャになった有名タレントの顔面は、もはや人の形を成してはいなかった。川島由紀子の血を吸ったアスファルトは、僅かな時を経て再び鮮血を啜ったのだ。

これで、しばらくはまともに食事さえできそうもない。胃の腑のむかつきが再び喉までせり上がるのを覚えた時、ちょうど部屋のドアがノックされた。

入ってきたのは、捜査班主任で本庁の磯貝警部だった。口髭を生やした警部は、どこか膿み疲れた様子で、本庁からやって来た増援組と改めて捜査会議を始める旨を告げにきた。二人は揃って会議室に向かった。

方々から聞こえる電話の音とひっきりなしに出入りする人と喧騒で、署内は相変わらず騒然とした気配に満ちていた。

少し前を歩く磯貝警部をすり抜け、パタパタと廊下を駆け抜けていく制服姿の女性警官とぶつかりそうになり、早瀬は露骨に顔をしかめた。

「最悪ですな」

「ええ、最低ですね」

磯貝警部は歩みを少しだけ緩めて言った。

「失礼ですが、その様子では一睡もできなかったのではありませんか?」

「現場の報告を聞くのが煩わしいと感じるようになったら、私は今すぐに警察手帳を返納しなきゃいけませんよ。何か不手際でも?」

「いえ、警視の手際の良さは見事なものですよ。若いのにやり手の警視とは聞いていましたが、こう采配のバランスが良くては文句のつけようもありません。
ウチの石原のように、最近では殺害現場に出向く女性もめずらしくないというのに、頼もしいですよ。
あまりの多忙さと陰険な事件の多さに、一ヶ月も経たずに胃潰瘍で入院したキャリアを私は知っていますのでな」

「意外でしたか?」

「申し訳ないことですが、始めは少し心配しておりました。本庁から所轄へ出向くのさえ嫌がる人間もいるご時世ですから…」

「まあ、今は本庁だの所轄だのと言っている場合ではありませんからね。
磯貝警部こそ大丈夫ですか?随分とお疲れのようですが…」

「ははは、なあに、心配には及びませんよ。
まぁ白状するなら、三日も家には帰っておりません。別れた女房はともかく、一人娘は、最近では電話にさえ出てくれなくなりましたからな。うれうべき人間がいなくなれば、広い家での警官の一人暮らしも却って気が楽なものですよ」

「では、さっさとこんな事件は片付けてしまわなくてはなりませんね。医者の不養生などと言いますが、警官が人間らしく生きれずに人間不信に陥ったのでは、本末転倒ですからね」

「違いありませんな」

会議室には既に何人ものスーツ姿の刑事達が、それぞれに情報交換をしていた。

二人が席につくとパイプ椅子がガタガタと鳴り、いきなり座が静かになるのを見て、早瀬は学生時代に担任教師が教室に入ってきた時のことを思い出した。

磯貝警部がよく通る声で口火を切った。

「それでは捜査会議を始める。改めて昨夜の現場からわかった報告を一課の方から」

はい、という甲高い声と共に昨夜からの増援組と思われる初老の刑事が立ち上がった。

「ええ…容疑者の個人情報に就きましては、昨日提供されたもの以外に判明した、いわゆる新事実はありませんので割愛します。
…あ、早瀬警視には、お渡しした資料の方にも詳しく記載されていますので、そちらの方をご覧ください。
ええと、一応犯行当日の容疑者の行動に限って申し上げますと、容疑者と昼過ぎまでに行動を共にしていた生徒会の生徒達の証言は概ね裏がとれました。
臨時の職員会議の影響で昨日の授業は午前中までで、昼には大半の生徒たちは放校となっています。ただ生徒会役員の生徒たちに関しては少なくとも昼の二時頃までには残っていたようです。
この生徒会の生徒たちの詳細については、お配りした捜査資料をご覧下さい。
容疑者は学園内に留まらず、世間的にも有名なタレントですから、どこにいても結構目立ちます。人がいなくなった学園でも部活動などで残っていた生徒達から、学園の要所要所で目撃されています」

「犯行の際には、わざわざ変装してた訳か?」

「フードのついた真っ赤なマントまで着用していますからね。相当に目立っています。それも大量に血の付着したマントです。
報道規制されているので、顔写真については現在、被害者の二名だけにとどまっています。容疑者はアイドルとはいえ、まだ未成年ですから、今のところ顔は出ちゃいません。まぁ記者会見もありますので、時間の問題ではありますが…。
今まで昼のワイドショー番組などで紹介された時は、概ね制服姿などで報道されていたようです」

今度は隣にいた若い刑事が立ち上がった。

「今、お話に出ましたように容疑者は犯行当時、制服の上に赤いマントを羽織っていたようでして、これはどうも宗教上の祭祀用に使われるローブと呼ばれる着衣のようでして、別件で摘発した例の売春少女達の黒いマントとも符合します。
…真意は測りかねますが、おそらく人目を忍んだ儀式めいた売春行為が、今までも学園内だけで数回はあったのだろうと思われます」

「なるほど。容疑者の当日の行動については?」

はい、と所轄の年配の刑事が立ち上がった。

「一条明日香は犯行当日はいつも通りに7時半頃に成城の自宅から黒塗りの自家用車で登校しています。家族や運転手に確かめた感触では、とくにいつもと変わった様子はなかったそうです。
午前中は学園で授業。昼以降の行動については、先ほど出ました生徒会の役員達と共に生徒会の仕事…これは主に生徒会での部活予算の報告資料を作成していたそうです。
犯行時刻である18時半頃に学園から通報してきた教職員達の供述では、職員会議が行われたのが14時頃という事ですので、凶器や時計塔の鍵を彼女が入手するチャンスは、人が少なくなったこの時間帯までと推定されます。
この時計塔の鍵の件に関しては、別件で摘発した例の売春少女達にも確認してみる必要があるでしょう」

「なるほど、検死の結果については?」

磯貝警部が促した。

はい、と今度は所轄の若い刑事が緊張した学生のような声で、手を挙げて立ち上がった。

「ええと、山瀬医師の方から司法解剖の結果が届いています。これは映像資料の現場写真をご覧下さい」

室内が暗転し、凄惨な現場写真が次々と暗闇の会議室に映し出された。

「聖真学園校長、村岡義朗の死体には、背中及び腹部に複数の擦過傷と打撲痕が見受けられました。
これは鞭や蹴りなどで少女達から暴行されたものだと推定されています。
注目してほしいのは被害者は、このように頸部を鋭利なダガーナイフのようなもので切り裂かれ、損傷している事です。現場中がこの通り血まみれです。
ですが直接的な死因は、心臓を太いアルミ製のボウガンの矢で貫かれたことによるショック死…となっています。要は刺殺です」

若い刑事は首を傾けた。

「しかし…よくよく考えてみると、そりゃ仏さん素っ裸でロクに抵抗もしなかったということになりますよね。そうすると…」

「しなかったんじゃなくて出来なかったんでしょう。
裸で仰向けに倒れているところを、こういきなり矢が正面からブスッと…」

大柄な柏崎刑事が、身ぶり手振りを添えて説明が不得手な後輩刑事の後を受けた。

「被害者はそもそも意識が朦朧としていた訳で、せいぜいがビクビクと動くぐらいでしょう。
ナイフを使って頸動脈を切り裂いたのは、完全に校長の息の根を止める為だったと考えられます」

「なぜそう断言できる?」

「その切断面ですが、解剖の結果、生活反応が明らかに認められたそうです。生きているうちに切られたのは間違いありません。壁にまで飛び散った大量の出血もその為です。
この凶器ですが、日本語でいうところの洋弓銃で別名をライトクロスボウ…まぁ早い話がボウガンです。
インドア・アーチェリー競技の初心者用に、洋弓部の部室に保管されていたもののようです。
このボウガンは容疑者が墜落死した現場で、容疑者の倒れていた場所から押収されています。何か固いものに散々ぶつけたらしい跡と、落下の衝撃で先端の矢はほとんど壊れておりました。
この矢は長さにして27.5インチ。中庭のベンチに一本とガイシャの二人の体に刺さっていた矢を含め、合計5本が確認されています。
このボウガンは学園の中庭で死んでいた生徒、沢木奈美を殺害する際にも使用されたようです。
沢木奈美の死因については出血多量による失血死です。中庭の現場の出血量その他の状況から、校長より前に撃たれていたという事になるでしょう」

「ボウガンか…」

と磯貝警部が言った。

「はい、スチール製のライトボウガンです。この写真を見て頂ければわかりますが、これは比較的軽く、矢を射出するのも拳銃のようにトリガーを引く操作だけでいいので、初心者でも扱いやすい仕様になっています。
この通り、握りの部分がライフルや拳銃に近い構造をしています。大きさ的にはその中間ぐらいで、重量は約3.7kg。女子供でも十分扱える代物といえます。
正規の弓と違い、引き絞る動作も力もいりませんのでエイミング…狙う動作も非常に楽です。
ただし鑑識の見解では矢を固定する為に、手元のリールを一射ごとに巻き上げなければならない旧式なので、連続発射には向いていないとのことです。
洋弓部員によれば、スポーツや狩猟用に使用されているものと同型で、あくまで入門用に置いているものだそうです。
指紋については被害者である沢木奈美と容疑者、一条明日香の指紋の二つが検出されています。
この凶器の入手経路についてですが、聖真学園にはアーチェリー部…いわゆる洋弓部があり、その部室から盗み出されたのも、ほぼ間違いないようです。
凶器は他のボウガンと同様に部室の隅にある鍵のついた強化ガラスのケースに入れてあったそうで、この鍵は例の職員室の鍵保管箱にあった部室の鍵とセットになっていたようです。
この凶器ですが、大量の雨水の他に僅かながら銅の成分を含んでおりまして、これは彼女が飛び降りた地点にあった時計塔の鐘であると目されています」

「詳しく成分分析でもしたというのか?」

「いや、その銅の破片ですけどね、細かく粉末状に散っていたそうで。後は特有の金臭さですよ。財布や小銭入れに十円玉が入ってない人間なんてそうそういないでしょう?」

「まぁ、そうだな」

「ですから鐘を打ち鳴らす際にぶつけたか擦ったかして付着したものだろうというのが鑑識の見解です。
それに現場の時計塔からは、容疑者の濡れた足跡が大量に発見されています。塔の上からやって来た容疑者が被害者を殺し、逃げ惑う同士達を次々と眠らせた際に残したものと考えられます。
死んだ容疑者の胸ポケットにはクロロフォルムを染み込ませた布と血のついた例のダガーナイフ以外の遺留品はなく、被害者は最初から校長と沢木奈美以外の人間を殺害する意志はなかったのだろうと、そう考えられる訳です。凶器についての詳細は以上です」

「なるほど。では、次だ。
やはりこれか…。これが最も厄介だな…。
墜落現場で発見された例の覚醒剤と被害者に使用された薬物について、本庁一課の方からわかったことを報告してくれ」

はい、と本庁から増援された太った中年の刑事が立ち上がった。

「昨夜から問題になっている覚醒剤ですが、銀色のケースに入った注射器とアンプルが屋上の鐘のそばから発見されました。
つまり、一条明日香が乱心して鐘を鳴らしたり笑っていたという例の不可解な行動の直接の原因は、この覚醒剤による譫妄や幻覚症状だと考えられます。
死後の病理検査の結果はまだ届いていませんが、マトリの専門家によれば、常習歴もない初めての人間が使用すれば、そうした不可解な症状が表れる可能性は充分にあり得るとのことです」

マトリとは、警察用語の隠語で麻薬取締班のことだ。

本庁の刑事は続けた。

「二人もの人間を殺害したショックで自分で自分に隠し持っていた覚醒剤を打った、という可能性はかなり濃厚です」

刑事はそう言った。

磯貝警部の隣で黙って報告を聞いていた早瀬は、ここで初めて違和感を持った。

では例の少女達が校長を暴行していた最中に聞いたという例の奇怪な笑い声はどう説明すればいい?

少なくとも、その時はまだ校長は生きていたのだ。それは覚醒剤を打つ前だったという事になりはしないのか。沢木奈美はその時はどこにいた?

例の赤マントの怪人がいきなり現れて校長や少女達を襲った時というのは、まさにその後のことなのだ。

鈴木貴子がいなくなったのもその後だ。

死体が発見されるまでのこの空白の数分間は一体、何を意味しているのか?

早瀬がそう考えた時、磯貝警部が尋ねた。

「売春に使用されたらしいという、その…ダチュラという薬物か?それについては?」

「そちらについては現在、引き続き外に出ている班と鑑識による分析の報告待ちです。
鑑識では、かなり強力な催淫作用のあるラブドラッグだろうとのことです」

「校長と沢木奈美の死亡推定時刻は…?」

再び所轄の柏崎が立ち上がった。

「18時20分から19時までの間。どちらも胃の内容物からの判断です。昼の食事の時間と出血量が特定出来ましたから。これは検死の結果とほぼ一致しています。より絞り込まれています。
現場の状況についての報告は以上です。後は例によって目撃証言が多量に採れてるとか…そうだったよな、河井?」

柏崎の後を受けて、また若い刑事が発言した。

「はい。今朝までに目撃証言が都合33件寄せられています。大量ですよ。
その内訳ですが、赤マントを着た女が時計塔の鐘を打ち鳴らしていたというものが16件。赤マントの女が笑いながらクルクルと塔の上で踊っていたというものが17件。
いずれも聖真学園近郊に在住の…まあ当たり前ですが、住民や学園の生徒達から寄せられたものです。
皆、いきなりその怪人物が飛び降りたというので、慌てふためいて家の電話や携帯電話でそのまま通報してきたようです。
川島由紀子の件もありましたし、野次馬目的なのか自殺を止める気だったのか…。
ともかく即座に学園に来た者が大半だったようで、我々が到着していた時には既にあの騒ぎだったようです」

現場に行ったと思われる刑事達の何人かが、忌々しそうに顔をしかめたのが早瀬にはわかった。

「この被害者なんだが…。沢木奈美の行動が、今一つはっきりしないようだが?」

磯貝警部が質問した。

「ええ。現場の状況を見る限りでは殺害が起きている最中のガイシャの行動はかなり不可解ですが、よくよく考えてみるとそうでもない事がわかるんです」

「ほぉ…興味深いな。
何か気づいた事があれば、どんな些細な事でもいいから誰でも発言してくれ。それで?」

「凶器から沢木奈美の指紋が出ている事からもわかるように、沢木奈美が凶器の調達役、もしくは少女達の供述どおり鈴木貴子という女生徒を誘い出す役目だったのは、ほぼ間違いないと思われます。
つまり予め役割分担がなされ、一条明日香による殺人という最後の予期せぬ事態を除けば、全て彼女達の予定通りにはなっているんです」

「予定通り…とは?」

「つまり沢木奈美は単独で鈴木貴子を時計塔に閉じ込める、スパイのような役割を負っていたという事じゃないでしょうか。
阿部優奈、五十嵐恭子、杉本真奈美の三人は校長を目の前でリンチして見せ、鈴木貴子を脅して仲間に引き入れる役割を負った。
ボウガンやナイフは一条明日香によって、あくまで最終的な脅迫の道具として使われる予定だった。
凶器のボウガンがまさかリーダーによって殺人の道具に使われるというのは、彼女達にとっても予定外の行動だったのではないでしょうか?
脅迫に使用する予定のボーガンを渡す際に沢木奈美を誤って撃ってしまった。
覚醒剤を使用したのはその直後である。そう考えると状況的にはスッキリします」

「ふむ、なるほどな…。鑑識からの詳しい報告は?」

「昨夜は暗かった上にあの大雨ですから、血痕を辿った鑑識の方でも沢木奈美の足取りを追うのに相当に難儀したようです。
沢木奈美の移動経路は、屋上から中庭へと、こう…」

河井と呼ばれた若い刑事が、ホワイトボードに貼られた学園内の地図にマグネットを置いて示した。

「ふらふらと容疑者から逃げるようにして、屋上へ続く階段の踊場から被害者はこう…。この西側の階段を通って一階にある、この通路側の扉から中庭へとこう…ふらふらと。
一度中庭から戻っている足跡があったのが奇妙といえば奇妙ですが…」

早瀬はここにも違和感を覚えた。

撃たれた沢木奈美は、踊場へと戻っている…?それは何故だ?

若い刑事は続けた。

「この時に沢木奈美を目撃したと思われる体育教師が言っていた幽霊話と目撃証言の時間的経過も、ほぼ徒歩で移動した速度と合致しています。
見慣れないセーラー服を着た幽霊云々という話や、突き当たりの鏡がどうしたとかいう突拍子もない話はともかくとして、その証言の時間的な信頼性は高い訳です。
噴水脇についているスイッチで明かりを点灯させたと思われる血の跡も発見されました。これは出血した沢木奈美からの最期のSOSの発信だったと考えられます」

「被害者も容疑者も…人の少ない、しかも大雨の降っている最中に学園の中と外で誰かに見られていた、という訳か。随分と都合のいい話もあったものだな」

「当ッたり前ですよ。だってそんなの、イカレたライブイベントみたいなものですからね。しかも歌って踊っているのはアーティストさながらの有名人ですから。片や胡散臭い幽霊でしょう?嫌でも目につきます」

見るよなあ…とあちこちで声が上がった。

早瀬に気を遣った磯貝が力なく睨みつけた。

柏崎が品のない発言をした後輩刑事を肘で小突くと、困ったようにガリガリと頭を掻いた。

目新しい報告など、特にめぼしいものは他にはなかった。あらゆる情報が錯綜していた。

その後は今後の捜査方針と役割が振られ、刑事達はそれぞれに会議室から現場へ出て行った。

パイプ椅子が雑然と並んだ室内には、所轄の刑事達数名と磯貝警部に早瀬が残る形になっていた。

やや崩した面持ちで柏崎が発言した。

「決め手となるのはやはり動機でしょうかね。…おい河合、一条明日香の動機について、こっちは何もわからなかったのか?」

河合と呼ばれた刑事は肩をすくめた。

「さあ…目撃証言や指紋がある以上、一条明日香は容疑者で、沢木奈美が凶器の調達役だった事はほぼ間違いないのでしょうが、それ以外は皆目見当がつきません…。
沢木奈美については仲間割れをしたという線で済みますが、校長を殺した動機となると、これはさっぱりわかりませんね。
有名人がイカレてしまったとしか言いようがありません。…ザキさん、これはやっぱり別件の自白から引き出すしかないですよ」

それこそ自白に期待しても無駄だよ、と柏崎が溜め息混じりに言った。これには磯貝警部が眉をひそめた。

「なぜ、そう思う?」

「あいつらはただの駒ですよ。
覚醒剤の出所にした所で本当の事など何一つ知らないようでしたからね」

「偽証している可能性はないというのか?」

「ありませんね。これは俺の刑事生命を賭けてもいいぐらいです。あいつらの証言だけは首尾一貫していますよ。その女生徒…鈴木貴子ですか?
そのコを校長を使って脅しただけで、まさか殺しが起こるなんて思っていなかった。
使ったダチュラとかいうヤクは売春の際にリーダーからケースごと渡される支給品のようなもので、覚醒剤なんか私達は何も知らない。見た事も聞いたこともない、とね。
ガキの悪さにしちゃ度を越した犯罪までやらかしておいて、いざ捕まったとなれば泣きべそかいてりゃ済むと思ってやがる…。
まぁ少年法を盾にしないだけマシですが、あれが演技だとしたら、俺は首を括ってやりますよ」

夜通し少女達の事情聴取を行っていた柏崎は、人が少なくなったのを契機に、いつになく過激な論調でそう言った。

「親からして娘達の事などまるで無関心だったようですからね…。あれじゃ誰だってグレますよ」

保護者とも面会したのであろう柏崎は、さも忌々しそうに眉間に皺を寄せた。磯貝警部もこれに感染したように口元を歪ませた。

「女子高生が売春に薬物に果ては殺人か…。
今さらだが、あのぐらいの若い連中は、汚くて退屈な社会や家庭の日常に目をやるよりも、自分達の思い描くささやかで綺麗な、そして美しい夢の中に浸って生きていたいと、そう願っている世代なのかもしれないな」

「売春に薬物が美しい行為だとでも?悪魔じみた、あの幼稚な行為が動機そのものだとでも磯貝警部は仰るつもりですか?」

「いや、そういう考えもあり得るというだけだ。戯れ言だと思って聞き逃してくれていい。…なに、誰だっていきなり道を踏み外す訳じゃない。自分達の世界に土足で踏み込んでくるような連中を許せないと感じたら、それだけでも動機になるだろう?
その時は、どんな冷酷な殺人方法でもやってのける…そんな生徒がいたとしてもおかしくはないさ。学生だからとか女だからというのは、それこそ関係ない」

知られたから殺す。秘密が漏れるから消す。

それは確かに殺害動機の常套句だが、早瀬はこのホワイダニットと呼ばれるもの。

いわゆる『なぜ?』と動機を問いかける人の心理が明確には理解できない。

犯罪者の動機を探っていき、自分達や社会を納得させる結果を招き入れるだけの行為は、結局は不毛で不当な差別と何ら変わらないと感じるのだ。最終的には犯罪者の日常は何が何でも、自分達の日常とは関係ないぞと駄々をこねているように感じるのである。

無論、警官の早瀬には、社会正義そのものを疑うような発言はできない。

捕まった犯罪者の言い訳であれ何であれ、明確な動機をもって線引きをして真相を究明するのが警察の存在意義でもあるからだ。

その場は一旦解散となり、磯貝も目黒署の刑事達もそれぞれの持ち場に散っていった。

刑事部屋に戻ると監察医の山瀬拓三が一人、黒いファイルを片手に早瀬を待っていた。

早瀬は老医師に目配せすると、人のいない自分の部屋へと彼を誘った。

この件だけは、まだ捜査会議でも発表できなかったからだ。老医師の行動は予想以上に早かった。

「早瀬警視、お待たせしてすみませんでしたな」

「いえ。いずれ鑑識からの報告でもわかることですが、なにぶん素人の思いつきとしか思えませんので人払いをさせてもらいました。
…厄介をかけたようで申し訳ありません。で、結果の方はどうでしたか?」

「これをご覧下さい」

老人から渡された資料は、事件関係者全員の血液型の詳細なデータだ。もう一つは現場の血液鑑定の結果だった。

早瀬の予想は的中していた。

こそが早瀬が知りたかった決定的な物証である。混乱させるだけなので、他の刑事達にはまだ言える段階ではなかった。

「驚きましたよ。早瀬警視、その、つまり…この結果は…」

「ええ、困ったことに犯人はということになってしまいますね」

むぅ、と老医師は犬のように唸ってから、あまり困った様子に見えない早瀬に問いかけた。

「それにしても…警視はいつからこれを見抜いておられたのです?」

「なに、たいしたことではありませんよ。
とある筋から有力なタレコミがありまして。
『木の葉を隠すなら森に隠せ。森がないなら森を作ればいい。下着泥棒の常習犯が、もしバーゲンセールのワゴンに盗品を紛れ込ませて捨てたとしたら、被害者の女性達にとっちゃ悲劇だが、退屈な結婚をした世の中年男性の何割かは救われる喜劇になるだろう?』
…と、余計なことまでそいつは言いましてね。口の減らない奴もいたものです」

早瀬の言葉とは思えぬ不謹慎な発言に、老人は女性のような声でほほほ、と甲高い声で笑った。

そういえば、と老医師は今度は何やら意味ありげに微笑んで、ゆっくりと上目づかいに早瀬を見ながら言った。

「昨日の夜、ここの留置場の辺りが随分と騒がしかったようですなぁ…。
交通課や生安課の若い婦警さんや、堅物で知られる刑事課の女刑事さんまでが、何やら大勢集まって騒いでいて上司に叱られておったとか…。
早瀬警視は何かご存知ありませんか?」

早瀬は暫くの間、不気味に微笑んだ老医師と目を合わせていたが、やがてニヤリと微笑んだ。

「さぁ…あいにくと忙しかったもので、私は何も知りませんね。大方、どこぞの俳優か誰かが、盛り場で大酒を飲んだ上に悪さでも働いたのでしょう。
女性にモテるとは羨ましい囚人もいたものですが、トラ箱に入れられても抜けないくらいの大酒なら、私も飲んでみたいものです」

「ほほほ…違いありませんな。その面白いお方に、ぜひ宜しくお伝え下さい」

では失礼致します、と馬鹿丁寧なほどの低姿勢で監察医の山瀬拓三は黒いファイルを片手に部屋を出ていった。

誰もいなくなった部屋のデスクでゆっくりと微笑みながら、早瀬は椅子にもたれ掛かった。

山瀬医師にはどうも見抜かれているようだ。さすがに老獪というよりない。

真剣な眼差しで早瀬は手元の資料を捲った。この結果は予想以上の収穫だ。

鈴木貴子という女生徒の失踪やうるさいマスコミへの対策など、状況は相変わらず芳しくはないが、少なくとも最悪の方向に向かいつつあるとは思えなかった。

早瀬は思い出す。

『最悪のアクシデントが起こった時にこそ、最大のチャンスもまた眠っている。それだけは忘れるなよ』

昨日、早瀬が聞いたあの男の言葉だ。あとは、ここにいない花屋敷達の首尾を待つだけだった。早瀬は疲労と消耗こそしていたが、けして悲観などしていない。する必要もないからだ。

どうやら我々が本当に憎むべきこの犯人は、この物的証拠以外に、ある致命的なミスを冒した事に気づいていない。

警察の結束力を甘く見た上に眠っていた獰猛な獣を、こともあろうに、この小賢しくも不遜な犯人は最悪な形で叩き起こしてしまったようだ。そうした意味では僥倖ぎょうこうだった。

早瀬の思惑が正しければ、この事件の犯人は触れてはならない、あの男の逆鱗に触れた事になる。

決して犯罪などあってはならない神聖な学園で、冒涜的なタブーを起こすような愚挙も警察に挑戦状を叩きつけたも同然だ。もはや許してはおけなかった。

あのいわく付きの時計塔で、またも許し難い事件は起きてしまった。それは取りも直さず、あの忌まわしくも仰々しい『塔』の背景に深く関わっている、あの男にまで喧嘩を売った事を意味している。

『正義』を覆した許し難きこの事件の犯人。

『魔術師』とやらは、何もわかっていない。

現在置かれている束の間の安寧と引き換えに、自分が『死神』という名の最悪のジョーカーを呼び寄せてしまったことを。都会の闇に静かに眠る獰猛なる獣を、この犯人はわざわざ檻から出してしまったということだ。

こうなると、もう早瀬には、あるべき結末が用意された『世界』の姿を予測できない。

いかなる『審判』が下されるのかも。

利害は今や完全に一致していた。最凶の切り札が、よもや犯人によって、それも早瀬の手に渡るチャンスが巡ってきたとは返す返すも皮肉な話だ。あの男が出てくれば、この犯人とて絶対にただでは済むまい。

早瀬は巧緻にして残虐な仕掛けを企てたこの犯人へ向け、最大級の侮蔑を込めて心中で呟いた。

俺の今の静かな憤りがわかるか?これがお前が犯した罪の重さだ。司法警察に関わる全ての人間達の怒りだ。

人の命と正義を地べたに覆したお前を、俺達は絶対に許さない。

馬鹿騒ぎに翻弄される俺達を、今は嘲笑いながら遠くで眺めているがいい。

もう間もなくこの事件は終わる。長い悪夢を終わらせる、水面下の最後の戦いはもう始まっている。

そう、この犯罪は犯人からの不遜なる挑戦状だ。

村岡義郎は、密室に仕立て上げられた時計塔のあの現場で、なぜ残酷にも殺害された上に首まで切り裂かれて死ななければならなかったのか?

搭の屋根から飛び降りて死んだ一条明日香の果たした本当の役割は何だったのか?なぜ少女達は殺されなかったのか?

鈴木貴子と沢木奈美の果たした役割は何なのか?

なぜ両者のうち沢木奈美は死に、片や鈴木貴子は現場から忽然と姿を消してしまっているのか?

いるとすれば鈴木貴子は今、どこにいるのか?

十二年前の殺人事件の真相は何だったのか?

そして、全ての始まりのきっかけである川島由紀子は、なぜ死んだのか?

“笑う死者”とは果たして何を意味しているのか?

これらはすべて底深い憎しみによって繋がっている。あの男はそう言った。

時は来た。これら全ての不可解な謎に決着をつけなければならない。

早瀬は決意も新たに刮目した。

…さあ、待たせたな。お互い色々あったが、存分に暴れるがいい。

『新宿の解体屋』と呼ばれるお前の手並み。今こそ、この目でとくと見せてもらおうか。

頼んだぞ、と晴れ渡った空に向けて一人祈るようにして呟くと、早瀬は深い溜め息と共に愛用の白いコートを羽織った。

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