ウロボロス《神殿の中心で罪を裁く》【完結】

春の小径

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国の繁栄は我らへの信仰にも比例する

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『神の叛逆者』たちは神前裁判で封じられて、国を守護するに最適な場所に深く沈められた。
彼らに事前の説明はなく、家族たちに向かって一列に並ばされた24人は一瞬で透明な空間に封じられた。
私たちからは慌てる声も姿も見ることができたが、彼らの方は不透明で何も見えていないのだろう。
さらに四方を叩いて回る彼らの動きから、内部の広さは両手を広げると指先が当たるくらい狭いこともわかった。

「彼らはこれよりとして国のどこかに沈められる。神の叛逆者となった愚かな彼らの姿を努努ゆめゆめ忘れるな。それが神のお言葉にございます」

姉の言葉に皇帝陛下が立ち上がり、皇后陛下が跪く。
天の神に皇帝陛下が、大地の神に皇后陛下が「「御意」」と声を揃えてこうべを下げる。
その言葉と共にフッと24体の封印箱がその場から消えた。
すぐに神殿の底深くから魔力が国全体に広がったのを感じた。
顔をあげると姉と神官長と視線が交わった。

(カシモフ・タタン様?)
『すでに地下にはコシモドの妾を封じている。上手く起動したようだ』
(そのことはこの場で話しても大丈夫でしょうか?)
『コシモドを封じるまで待っていた方が良いだろう』
(はい、わかりました)

カシモフ・タタン様に頷いて姉と神官長に視線を送る。
二人も同意されるように頷いた。

「彼らは無事に安置されました。以上をもちまして神前裁判は終了となります。本日より五日後、午前10時に皆様お集まりください。皇帝陛下、皇后陛下。宜しいでしょうか?」
「もちろん神のご意向に従わせていただく」
「畏まりました。皇帝陛下ならび皇后陛下、ご退席にございます」

姉の言葉に全員が起立して頭を下げる。
ここは神殿のため、最高位は神である。
そのため最敬礼は神に捧げられるのだ。

両陛下は祭壇に向かい、神の像に臣下の礼を捧げて皇城へと帰っていった。

貴族も両陛下に倣い、祭壇に臣下の礼を捧げて神殿を後にしていった。
年齢からいって、封じられた子息子女の中には婚約していた人もいるだろう。
婚約の白紙撤回などを申し出なくてはならない貴族は真っ先に帰っていったようだ。

「ソフィー、お疲れさま。大変だったわね」
「お姉さまこそお疲れではありませんか?」
「私なら大丈夫。明日から学園も大変だわ。これから色々と対策をたてなくちゃ」
「じゃあ、明日はおやすみ?」
「そうね。でもソフィー、あなたには宿題を出します」
「ええー!」
「マレンダは片付いたけど、兄のリルンがまだ残っているわ。あのバカ、あなたに言い寄ってるでしょう?」

そうなのです。
リルンは私に言い寄っているのは婿という甘い汁を自分のものにしようとしているのです。
それも私は数時間前まで聖女でした。
称号を剥奪されても前聖女という立場は残るし、神の保護は残ります。
私の肩書きは、彼にとって呼吸をするように『愛のない囁き』を繰り返してでも手に入れたいもののようです。

「ここ最近、私の部屋にまで押しかけてくるのよ。もちろんカシモフ・タタン様にお守りいただいているので部屋には入ってこないけど」
『あのバカは今までもソフィーを無理矢理襲って既成事実を作ろうとした。そんなことを我ら神が許すとでも思っているのか』
「カシモフ・タタン様をはじめ神々みなさまには、私もソフィーもお守りくださり深く感謝しています」
『礼には及ばん。我々はそなたたち二人や家族を愛しく思っておる。人助けに見返りを求めず、孤児院の慰問に寄付。街道の補修に職を失った者たちをあてがい、衣食住を与え、見あった賃金を支払う。そなたたちはそれを当たり前と思いすすんで行ってきた。そのようなもの、本来国家がすべきことだ。国の繁栄は我らへの信仰にも比例する』
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