クライン工房へようこそ!【第15部まで公開】

雨宮ソウスケ

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第14部

第五章 宣戦布告②

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「どうやら二人ほど、先客がいますね」

 裸体をタオルで隠して、ジェシカが言う。

「そうなんだ」

 そう言って続くのは、同じくタオルで裸体を隠したサクヤだ。
 サクヤは、視線を大浴場の湯船に向けた。
 湯船には二人の先客がいた。
 一人は二十代前半。長い薄紅色の髪が印象的な女性だ。
 もう一人は少女だった。
 年の頃は十四、五歳ぐらいだろうか。
 緋色の眼差しと、ところどころ外に飛び出すアイボリーの髪が目に映る。

 彼女たちは、こちらをじいっと見つめていた。

(……あれ?)

 サクヤは、ふと眉根を寄せた。
 どうしてか、奇妙な既視感を覚える。
 特にアイボリーの髪の少女。彼女はどこかで見たような……。

「……? あなた、どこかで……?」

「――お、お前!」

 すると、その少女はバシャアッと湯船から立ち上がり、目を剥いた。

「サクか! サクヤなのか!」

「え」

 小柄な少女とは思えない見事な果実に、思わず目を奪われたサクヤだったが、突然名前を呼ばれてキョトンとする。
 隣に立つジェシカが、そっと尋ねる。

「サクヤさま? お知合いの方ですか?」

「え、えっと、あれ?」

 サクヤは、すぐには答えられなかった。
 そうこうしている内に、湯をかき分けて少女がサクヤに近づいてきた。

「ちょ、レナ! 知り合いかい?」

 相手側の連れであるらしい薄紅色の髪の女性が、声を上げた。
 サクヤは眉根を寄せる。

(……レナ?)

 どこか聞き覚えのある名前だ。
 記憶を探ろうとするが、その前にレナと呼ばれた少女がサクヤの前に立った。
 そしてニカっと笑う。

(……あ)

 その笑顔に、サクヤは思い出す。

「――レ、レナ!?」

 思わず、その場にタオルを落として目を剥いた。

「昔、トウヤの家で世話になっていた?」

「おう! そのレナだ! 久しぶりだな! サク!」

「え、ええええェ!?」

 サクヤは狼狽した。レナを生まれたままの姿を上から下まで確認して。

「なっ、なんでっ!? 全然見た目が変わってないよ!?」

「おう! アッシュにも言われたぞ。けど、それはサクだって同じじゃねえか」

 今度は、レナがサクヤの姿に、まじまじと目をやった。

「サクって確かアッシュより年上だったよな? 全然変わってなくて驚いたぞ」

「え、えっと、私には一応理由があるんだけど、えええェ……」

 サクヤは、ただただ茫然としていた。
 すると、

「あの、サクヤさま」

 ジェシカが尋ねてくる。

「やはりお知り合いの方だったのですか?」

「あ、うん。そうだけど……」

 サクヤは困惑した様子で返す。と、

「う~ん、それはぼくも聞きたいな」

 いつしか、薄紅色の髪の女性まで目の前に立っていた。
 彼女もまた、サクヤをまじまじと見つめた。

(……これはまた、とんでもないレベルだね……)

 内心で唸る。
 美貌、肌の艶、プロポーション。どれをとっても格が違う。
 キャスリンは、コホンと喉を鳴らした。 

「……十代にしか見えないんだけど、君がサクヤさんなのかい?」

「え、あ、はい。あなたは……?」

 サクヤがそう尋ねると、キャスリンは苦笑を浮かべて名乗った。

「レナの仲間さ。名前はキャスリン。家名は……まあ、今はないよ」

 それからジェシカの方にも視線を向けて。

「とりあえず、まずは互いの自己紹介と行こうじゃないか」



 そうして五分後。
 四人は軽く互いの自己紹介をした後、揃って湯船に浸かっていた。

「……そう」

 サクヤは嘆息した。

「トウ……アッシュとは、もう再会してるんだ」

「おう! 運命を感じたぜ!」

 レナは親指を立てて、そう答える。
 サクヤとしては、頬を強張らせるだけだ。
 レナの存在は記憶にはあった。
 ある意味、サクヤが最初に危機感を覚えた少女である。
 しかし、クライン村が無くなってしまった今、まさか、こうして再び出会う機会が来るとは想像もしていなかったのだ。

(トウヤ……あなたの引力ってどうなっているの?)

 呆れ半分、諦め半分の気分で、そう思ってしまう。
 一方、レナはレナで落ち着かなかった。
 それは、サクヤに対してではなく、ジェシカに対してだった。

「な、なあ、ジェシカ」

 レナは、ジェシカに尋ねた。

「……? 何でしょうか?」

 ジェシカが、訝しげに眉根を寄せる。と、

「あのさ、ジェシカは……アッシュのハーレムメンバーじゃねえよな?」

「……………は?」

 ジェシカは、目を瞬かせた。レナはしどろもどろに補足する。

「いや、だってジェシカも綺麗だし、胸も大きいし。サクとも親しそうだから」

「……いえ。私は……」

 レナの問いかけに、ジェシカが何とも言えない顔をすると、

「いえ。それはないわ」

 サクヤが、パタパタと手を振ってフォローを入れてくれた。
 ジェシカは、少しホッとするが、

「だって、ジェシカはコウちゃんのハーレムメンバーだし」

「――サクヤさま!?」

「へ? そうなのか?」レナはキョトンした。「コウちゃんって、アッシュの弟のコウタのことだろ? あのちびっこい」

 サクヤは苦笑を浮かべた。

「あれから八年も経っているのよ。コウちゃんも成長しているわ。もう十六歳なのよ」

「そっかあ……そうだよな」

 レナは昔を懐かしむように、あごに手をやった。

「オレの妹もデッカくなってたしな。コウタもデカくなるか」

「……いや、今の話だと、アッシュ君の弟君もハーレムを築いているのかい?」

 と、ツッコミを入れたのは、キャスリンである。
 視線はジェシカに向いている。

「い、いえ、その、我が君……いえ、コウタさんは……」

 ジェシカは、何も答えられなかった。
 それだけで状況を知るには充分だった。

「ははっ! コウタもモテるようになったんだな!」

 一方、レナは平常運転である。

「一度会ってみてえな。けど、安心したぜ」

 レナは、ニカっと笑った。

「サーシャとか、オトハとか、すげえレベルばっか見てたからな。ジェシカまで加わってたら、またヘコむところだったぜ」

「……いえ。あのね。レナ」

 サクヤは、ジト目で自分を指差した。

「私のことを忘れてないかな? トウヤの婚約者である私のことを」

「あ、そっか」レナはポンっと手を打った。「そんじゃあ、サクも、ハーレムメンバーの一人なのか?」

 一瞬の沈黙。

「――なんでそうなるのっ!」

 サクヤは、バシャンッと湯面を叩き、湯船から立ち上がった。
 その様子に、キャスリンは失言だと思った。

「レナ。流石にそれは失礼だよ。そもそも、アッシュ君がハーレムを築いているってのもただの噂で……」

「私は『正妻』なの! メンバーの一人みたいな言い方はしないで!」

「……ああ、怒ってる点はそこなのかぁ」

 キャスリンは、額に手を当てた。
 サクヤは鼻息も荒く、再び湯船に浸かった。
 しかし、脱力するキャスリンとは対照的に、レナは気軽に尋ねてくる。

「それよりサク。結局、アッシュのハーレムメンバーって、どんなのがいるんだ?」

「……むむ」

 見た目も性格も昔と全然変わらないレナに、サクヤはやや不満げだったが、

「私を含めて八人――」

「あ、オレも含めてもいいぞ」

「……九人よ」

 サクヤは嘆息した。

「レナの直感通り、サーシャちゃんとオトハさんもそのメンバーよ。あと、クライン工房ではユーリィちゃんとも会ったのよね?」

「おう。アッシュの養女だよな」

 レナは頷く。

「あの子もそうなの」

「えっ、そうなのかい?」

 キャスリンが目を剥いた。レナの方も眉根を寄せて呟く。

「そうだったのか。まあ、確かにあの子もすげえ綺麗だったしな。けどよ」

 レナは「う~ん」と腕を組んで唸った。

「まあ、オレの故郷だと、十二、三歳ぐらいの娼婦ってのもいたけどさ。あんなちっこい体だと、アッシュの夜の相手なんてまだキツくねえか? クタクタになるまで念入りに愛撫しても、入れてる最中で泣き出したりしねえか?」

「そんな生々しい話はしないで!?」

 サクヤは思わず叫び声を上げた。顔も羞恥で赤くなる。
 キャスリンも「……レナ。君、本当に処女なのかい?」と眉をしかめ、まだ経験のないジェシカは、無言のまま耳だけ赤くしていた。

 ともあれ、サクヤは小さく嘆息して。

「……流石にユーリィちゃんはまだそこまでは行ってないよ。トウヤはあの子のことを本当に大切にしているし、そういうことは、あの子はみんなの中でもきっと最後だよ。まだまだ先のことかな?」

 と、告げてから、コホンと喉を鳴らした。

「そ、その、一応言っとくけど、今のところ、トウヤとエッチをしたことがあるのは、私と……オトハさんだけだからね」

「そうなのか?」

 レナは、まじまじとサクヤを見つめた。
 サクヤは恥ずかしそうに言う。

「う、うん。ハーレムって言っても、トウヤに自分の女宣言されているのは、私とオトハさんだけだし。もう一人だけ特例っぽい人もいるけど、他の人たちは、まだキスもしてないはずだよ。これから頑張るって感じかな」

「……ふ~ん」

 レナは、あごに手をやって考え込んだ。
 サクヤとオトハの容姿を、脳裏に思い描く。
 そして、

「なあ、サク。二つ聞いてもいいか?」

「な、なに?」

 色々な意味で流石に熱くなってきたのか、サクヤは頬を手で扇いでいた。

「残りのメンバーでおっぱいが大きいのはいんのか?」

「なんか凄い質問が来たわね……」

「いいから答えてくれよ」

 レナの顔は真剣だ。サクヤは仕方がなく答えることにした。

「……そうね。私やオトハさんとほとんど同じぐらいの人が一人。さっき言った特例の人だよ。あと、今の段階でも結構大きいけど、将来的には、私やサーシャちゃん並みになりそうな子が一人かな」

「……そっか。強敵だな」

 レナは少し視線を落とした。
 が、すぐにサクヤを再び見つめて。

「もう一つ教えてくれ」

 ガッ、とサクヤの両肩を掴む。

「な、なにかな?」

 レナの気迫のようなものにサクヤは圧された。
 そして、レナは問いかけた。

「アッシュは、大きなおっぱいが好きなのか?」

 ………………………。
 ………………。
 …………。
 長い沈黙。
 サクヤも、キャスリンも、ジェシカも。
 レナ以外の女性が全員、遠い目をした。
 気まずい沈黙。
 しかし、それさえもレナは気にしなかった。

「なあ、答えてくれよ。重要なことなんだ」

 ブンブンとサクヤの頭を揺らす。

「ちょ、ちょっと止めて。確かに重要だと思うけど……」

 とりあえず、レナの両手を掴んでサクヤは言う。
 レナの手が止まった。
 再び沈黙。
 全員がサクヤに注目した。
 サクヤは頬を染めつつ、視線を逸らして告げた。

「多分、大好きです」

「おっしゃああああああああああああ―――ッッ!」

 レナは立ち上がって、勝利の声を上げた。
 それから、唖然とするサクヤに満面の笑みを向けて。

「ありがとな! サク! 値千金の情報だ!」

「そ、そうなの?」

「おう! おかげで方針が決まったぜ! キャスもありがとな!」

「え、ぼ、ぼく?」

 キャスリンもまた唖然としていた。
 しかし、レナはやっぱり気にしたりしない。

「待っていろよ! アッシュ!」

 たゆんっ、と大きなおっぱいを揺らしつつ。

「勝つのは――このオレだかんな!」

 天に拳をかざして、そう宣言するレナであった。
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