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第15部
第六章 激戦の準決勝②
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「ん。いよいよ本番ってやつだな。相棒」
愛機・《レッドブロウⅢ》の操縦の中で、レナは呟く。
グッ、パッと指を動かして、操縦棍を握りしめた。
元々、今回の大会には、サーシャと戦うために参加したのだ。
言わば、この試合こそが本番だった。
「まあ、ここまでは多分問題ねえんだけどな」
言って、胸部装甲の内面に映った外の映像に目をやった。
そこには、純白の鎧機兵の姿があった。
サーシャの愛機・《ホルン》だ。これから戦う相手である。
白い鎧機兵は、長剣の切っ先をこちらに向けていた。
レナは、双眸を細めた。
(サーシャは確かに強えェ。基本に忠実な良い戦士だ)
しかし、レナから見れば、まだまだ発展途上中とも言える。
将来性は、間違いなくあるだろう。
実戦経験を積むほどに、きっと強くなっていく。
そのことは確信しているが、それはあくまで将来での話だった。
今の段階では、まだサーシャは、レナの敵ではない。
操手としての力量も、相棒の性能においても、レナの方が数段優れている。
仮に百回戦えば、九十九回は、確実に勝てる相手だろう。
(問題は、アッシュの方だよな)
奇しくも知ってしまったアッシュの今の実力。
あれは、完全に想定外だった。
力の底が知れない。確実に自分よりも強いと肌で感じた。
(引退して職人しているアッシュが、あそこまで強いなんて思わなかったな)
流石は、自分が惚れた男だと誇らしくは思う。男どもの群れを薙ぎ払っていくアッシュの姿には、戦場でも感じたことのないような高揚感を覚えたものだ。
正直に言って、興行が終わった後も、ずっとキュンキュンしていた。夜になっても、あまりに気持ちがムズムズするので、キャスリンに相談してみたら、
『ええっと、その、自分で解消するとか……』
『……それって、どうやってするんだ?』
『え? レナ? もしかして知らないの? その、やったことないの?』
『いや、キャスの言ってることは分かるんだけど、オレの故郷って、自分でそういうのを覚える前に処女を捨ててるケースが多くて、概ね初めての男から教わるんだよ』
『……君の故郷って何なんだよ……』
そう呟いて、キャスリンは、顔色を青ざめさせていた。
結局、キャスリンには、凄く困った顔で『それなら、今日は我慢しなよ。その、早くアッシュ君に愛されるんだよ?』と言うだけだった。
ムズムズ問題は解決しなかったが、一晩経ったら、気分は落ち着いていた。
とりあえず、今は体調も万全だ。
しかし、それとは別に、やはり悩んでしまう。
なにせ、アッシュとは、将来を賭けて、この大会の後に決闘をする予定なのだ。
そのアッシュが、自分よりも強いとは思ってもいなかったのである。
(あの戦いは、マジでとんでもなかったからな)
さしものレナも眉をひそめた。
あの実力だ。苦戦することは避けられない。
いや、苦戦どころの話ではない。
正直なところ、レナの戦闘経験をもってしても、勝ち筋が見えなかった。
正面から戦えば、恐らく勝機はない。
ただ、それでも負けるつもりだけはなかった。
自分より強い相手と戦うことなど、傭兵ならばよくある話だ。
レナ自身も格上とは戦ったことがある。
苦戦はしたが、その際も勝利をもぎ取ってみせた。
要は、いかにして相手を出し抜くか。それこそが肝要なのだ。
昨夜の夕食時も、仲間たちと対策を練ったものだ。
『……正直、店主殿の実力は、第一位と比べても、遜色、ないぞ』
『……うん。確かにえげつなかったよ』
神妙な声のホークスに、引きつった顔のキャスリン。
重苦しい雰囲気に、酒もあまり進まなかった。
『けど、最強はいても無敵はいねえからな。きっと手はあるさ』
レナが樽を片手に言う。
『アッシュにだって弱点はあるだろうしな。けど』
そこで、レナはキョロキョロと周囲を見渡した。
『ところでダインの奴は? 直接戦ったあいつの意見も聞きてえんだが』
『いや。それはやめてあげて』
と、キャスリンが引きつった顔でツッコミを入れていた。
結局、昨日は、具体的な対策はまとまらなかった。
(アッシュ戦については、今夜もまたキャスたちに相談して、戦術を練るか)
と、前向きに考える。
ともあれ、今は目の前の敵に集中すべきだった。
(油断して足元をすくわれるのは、オレにも言えることだしな)
ここで負けてしまっては意味がない。
百回に一度の敗北が、ここに来る可能性は充分にあり得るのだ。
まずは確実に優勝すること。話はそれからだった。
『青き門より現れるは、四英雄の一人にして救国の聖女の愛娘! 駆る鎧機兵は純白の守護神 《ホルン》! 恒力値は三千五百ジン! だが、それがどうした! 自分より強い者などすべて倒してきた! 我こそは流れ星メェ―――トッ!!』
司会者の口上と、観客の大歓声が耳に届く。
それに呼応するように、白い鎧機兵は竜尾を揺らして、長剣を薙いだ。
勇ましい覇気を、その動作から感じ取る。
「ははっ、やる気は充分みてえだな。サーシャ」
レナは、不敵に笑う。
『そして赤き門より現れるは――』
司会者の口上は続く。
『異国よりの来訪者! 可憐にして苛烈なる戦場の姫君! 駆る鎧機兵は千手の武神 《レッドブロウⅢ》! その恒力値は、驚くべき二万三千ジン! 本大会における堂々の第一位だ! 千の拳で粉砕せよ! 麗しきレナ――――ッッ!』
その口上に合わせて、レナは、愛機の両の拳を胸元で、ガンガンと叩きつけた。
観客たちは、大いに盛り上がった。
「さて。そんじゃあサーシャ」
レナは、不敵な笑みを浮かべたまま告げる。
「オレたちの決闘を始めようじゃねえか」
愛機・《レッドブロウⅢ》の操縦の中で、レナは呟く。
グッ、パッと指を動かして、操縦棍を握りしめた。
元々、今回の大会には、サーシャと戦うために参加したのだ。
言わば、この試合こそが本番だった。
「まあ、ここまでは多分問題ねえんだけどな」
言って、胸部装甲の内面に映った外の映像に目をやった。
そこには、純白の鎧機兵の姿があった。
サーシャの愛機・《ホルン》だ。これから戦う相手である。
白い鎧機兵は、長剣の切っ先をこちらに向けていた。
レナは、双眸を細めた。
(サーシャは確かに強えェ。基本に忠実な良い戦士だ)
しかし、レナから見れば、まだまだ発展途上中とも言える。
将来性は、間違いなくあるだろう。
実戦経験を積むほどに、きっと強くなっていく。
そのことは確信しているが、それはあくまで将来での話だった。
今の段階では、まだサーシャは、レナの敵ではない。
操手としての力量も、相棒の性能においても、レナの方が数段優れている。
仮に百回戦えば、九十九回は、確実に勝てる相手だろう。
(問題は、アッシュの方だよな)
奇しくも知ってしまったアッシュの今の実力。
あれは、完全に想定外だった。
力の底が知れない。確実に自分よりも強いと肌で感じた。
(引退して職人しているアッシュが、あそこまで強いなんて思わなかったな)
流石は、自分が惚れた男だと誇らしくは思う。男どもの群れを薙ぎ払っていくアッシュの姿には、戦場でも感じたことのないような高揚感を覚えたものだ。
正直に言って、興行が終わった後も、ずっとキュンキュンしていた。夜になっても、あまりに気持ちがムズムズするので、キャスリンに相談してみたら、
『ええっと、その、自分で解消するとか……』
『……それって、どうやってするんだ?』
『え? レナ? もしかして知らないの? その、やったことないの?』
『いや、キャスの言ってることは分かるんだけど、オレの故郷って、自分でそういうのを覚える前に処女を捨ててるケースが多くて、概ね初めての男から教わるんだよ』
『……君の故郷って何なんだよ……』
そう呟いて、キャスリンは、顔色を青ざめさせていた。
結局、キャスリンには、凄く困った顔で『それなら、今日は我慢しなよ。その、早くアッシュ君に愛されるんだよ?』と言うだけだった。
ムズムズ問題は解決しなかったが、一晩経ったら、気分は落ち着いていた。
とりあえず、今は体調も万全だ。
しかし、それとは別に、やはり悩んでしまう。
なにせ、アッシュとは、将来を賭けて、この大会の後に決闘をする予定なのだ。
そのアッシュが、自分よりも強いとは思ってもいなかったのである。
(あの戦いは、マジでとんでもなかったからな)
さしものレナも眉をひそめた。
あの実力だ。苦戦することは避けられない。
いや、苦戦どころの話ではない。
正直なところ、レナの戦闘経験をもってしても、勝ち筋が見えなかった。
正面から戦えば、恐らく勝機はない。
ただ、それでも負けるつもりだけはなかった。
自分より強い相手と戦うことなど、傭兵ならばよくある話だ。
レナ自身も格上とは戦ったことがある。
苦戦はしたが、その際も勝利をもぎ取ってみせた。
要は、いかにして相手を出し抜くか。それこそが肝要なのだ。
昨夜の夕食時も、仲間たちと対策を練ったものだ。
『……正直、店主殿の実力は、第一位と比べても、遜色、ないぞ』
『……うん。確かにえげつなかったよ』
神妙な声のホークスに、引きつった顔のキャスリン。
重苦しい雰囲気に、酒もあまり進まなかった。
『けど、最強はいても無敵はいねえからな。きっと手はあるさ』
レナが樽を片手に言う。
『アッシュにだって弱点はあるだろうしな。けど』
そこで、レナはキョロキョロと周囲を見渡した。
『ところでダインの奴は? 直接戦ったあいつの意見も聞きてえんだが』
『いや。それはやめてあげて』
と、キャスリンが引きつった顔でツッコミを入れていた。
結局、昨日は、具体的な対策はまとまらなかった。
(アッシュ戦については、今夜もまたキャスたちに相談して、戦術を練るか)
と、前向きに考える。
ともあれ、今は目の前の敵に集中すべきだった。
(油断して足元をすくわれるのは、オレにも言えることだしな)
ここで負けてしまっては意味がない。
百回に一度の敗北が、ここに来る可能性は充分にあり得るのだ。
まずは確実に優勝すること。話はそれからだった。
『青き門より現れるは、四英雄の一人にして救国の聖女の愛娘! 駆る鎧機兵は純白の守護神 《ホルン》! 恒力値は三千五百ジン! だが、それがどうした! 自分より強い者などすべて倒してきた! 我こそは流れ星メェ―――トッ!!』
司会者の口上と、観客の大歓声が耳に届く。
それに呼応するように、白い鎧機兵は竜尾を揺らして、長剣を薙いだ。
勇ましい覇気を、その動作から感じ取る。
「ははっ、やる気は充分みてえだな。サーシャ」
レナは、不敵に笑う。
『そして赤き門より現れるは――』
司会者の口上は続く。
『異国よりの来訪者! 可憐にして苛烈なる戦場の姫君! 駆る鎧機兵は千手の武神 《レッドブロウⅢ》! その恒力値は、驚くべき二万三千ジン! 本大会における堂々の第一位だ! 千の拳で粉砕せよ! 麗しきレナ――――ッッ!』
その口上に合わせて、レナは、愛機の両の拳を胸元で、ガンガンと叩きつけた。
観客たちは、大いに盛り上がった。
「さて。そんじゃあサーシャ」
レナは、不敵な笑みを浮かべたまま告げる。
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