悪竜の騎士とゴーレム姫【第12部まで公開】

雨宮ソウスケ

文字の大きさ
207 / 399
第7部

第三章 動く者達②

しおりを挟む
 ラスティアン宮殿七階。団長室。
 多くの来客を迎えて、ソフィアは微笑んでいた。


「そうですか。コウタ君は皇国出身なのですか」

「はい。エリーズとの国境近くにあった村が出身です」


 と、コウタが答える。
 皇国騎士団の団長との面会は和やかに進んでいた。
 終始、笑顔が絶えずに会話をしている。


(だけど、勇猛果敢で知られる皇国騎士団の団長が、まさかこんなに若くて綺麗な人だとは思わなかったなあ……)


 コウタがそんな率直な感想を抱ていると、


「あの、ところでソフィアさま」


 リーゼが不意に会話を切り出してきた。


「一つお聞きしたのですが、オトハ=タチバナさまはやはり皇都にはいらっしゃれないのですか?」

「オトハちゃんですか?」


 ソフィアは小首を傾げた。


「残念ながら今は皇都にはいませんね。そもそも彼女は傭兵ですし、皇都にはいないことの方が多いんです」

「……そうなのですか」


 と、リーゼがしゅんとした表情を見せた。
 こんなにもがっかりした様子を見せる彼女は珍しい。


「お嬢。そのタチバナって人は知り合いなのか?」


 ジェイクがそう尋ねると、リーゼは「いえ」とかぶりを振った。


「オトハ=タチバナさまはわたくしの憧れの方ですの。ミランシャさま、ソフィアさまと同じく《七星》のお一人ですわ。二つ名は《天架麗人》。操手としても剣士としても超一流であり、騎士以上に凜々しいお方だと聞いております。そのお姿はわたくしも写真でしか拝見したことはありませんが、とてもお美しい方でもありますのよ」

「「へえ~」」


 と、ジェイクだけでなく、コウタも相槌を打った。


「お嬢さまは、昔からタチバナさまに憧れておられましたから。今回の来訪でお会いできたらと考えられておられたのです」

「あ、そうだったんだ。ごめん」


 と、頭に手を当て謝罪したのはアルフレッドだった。


「オトハさんは今、皇都どころかセラ大陸にもいないんだ。ここよりずっと南の方にある小さな島国に行っているんだ」

『……小さな島国? 傭兵が大陸から離れてどうしてそんな場所に?』


 と、全身を鎧で固めたメルティアが尋ねる。
 するとアルフレッドは少し姉を気にしながら答えた。


「元々は副団長の依頼だったらしいんだけど、完全にミイラ取りがミイラになったって言うか、そのまましばらく居座るようになっちゃって」

「ふふ、それは仕方がありませんよ。オトハちゃんも何だかんだで乙女ですから」


 と、どこか余裕さえ持って語るのはソフィアだ。
 とても一時間前まで子供のように泣き出していた人物とは思えない貫禄だ。


「まあ、そうですよね」アルフレッドは苦笑した。「オトハさんって、とても凜々しいイメージがあるし、事実、勇ましくてカッコいいんだけど、何気に女子力も群を抜いているからなぁ……。家事全般も人並み以上に出来るらしいし」

「え? そうなのですか?」


 憧れの人物の意外な側面にリーゼが瞳を瞬かせた。
 アルフレッドは「うん」と頷く。


「そんな家庭的な面もあって騎士団内で絶大な人気を持っているんだけど、だからこそ彼女が兄の最有力嫁候補だろうとも言われてて――」

 そこでアルフレッドは自分の発言にハッとして顔色を変えた。
 そして慌てて同行者達に目をやった。
 コウタとジェイクはあまり表情を変わらない。
 ただ、「次から次へと本当によく出てくるな」と若干呆れている程度だ。
 リーゼとアイリは少し驚いている。
 リーゼの方は憧れの人の恋愛模様に困惑した色が強いが、アイリの方は「……先生のライバル。二人目」と興味の方が強いようだ。
 メルティアとゴーレム達はそもそも表情が読めない。ただ、ゴーレム達は両腕を上にかざして「「「……コイバナ! コイバナ!」」」と唱和しているし、メルティアの巨体は少しそわそわしているようなので興味はあるのだろう。

 ――が、ここで問題なのは残りの二人。姉とシャルロットだ。
 姉の方は……まぁいい。これは周知の事実だ。今さら動揺もしないだろう。

 だが、シャルロットの方は違う。
 彼女にとって、この話は完全に初耳のはずだった。


「す、すみません。シャルロットさん」


 アルフレッドはとりあえず謝罪した。


「事前に言っておくべきでした」


 が、それに対し、シャルロットは、


「いえ、お気遣いなく」平然と言う。「それぐらいは想定内ですので」


 どうやら自分に恋敵が多いことなど百も承知のようだった。
 女性は強い。特に自分の兄貴分の周辺にいる女性達は。
 改めてそう思うアルフレッドであった。
 ――と、


「あらあら」


 その時、ソフィアが驚いたような顔を見せた。


「ミランシャちゃんは知っていますが、シャルロットさんまでそうなのですか?」

「まあ、シャルロットさんは、兄やベッグさんの知り合いらしくて……」


 と、アルフレッドが補足する。
 ソフィアは「あらら」と笑みを深めた。


「またしてもライバル登場ですか。しかも、彼女もまた群を抜いた容姿ですね。これはミランシャちゃんも頑張らないといけませんよ」

「――は、はい! そうですねっ! アタシも頑張ります!」


 ソフィアの声に直立不動の構えで答えるミランシャ。
 普段にはない反応に、ソフィアが目を丸くする。


「……どうかしたんですか? ミランシャちゃん?」

「え、えっと、アタシ、いま団長のことをもの凄く尊敬してるかも。そっか、あんな手段もあったんだ。君も結構堅物だし、あれって効きそうよね。うん。今度、アタシも勇気を出してやってみよう……」


 と、ソフィアをちらちらと横目で見ながら呟いている。
 コウタ達は首を傾げるだけだった。


「まあ、いずれにしても」


 ソフィアが言葉を締める。


「残念ながらオトハちゃんは不在ですが、皇都にいる間は何かあれば気軽に言ってくださいね。可能な限り対応させて頂きますから。今回の両国の公爵家同士の交友は皇家、騎士団ともに素晴らしいことだと歓迎しております。ですから――」


 と、話している途中だった。
 不意に団長室のドアがノックされたのである。
 ソフィアを始め、全員がドアに視線を向けた。


「あら。どうやら来客のようですね」ソフィアはコウタ達に目をやった。「対応しても宜しいでしょうか?」

「あ、はい。構いません」コウタが代表して答えた。「ボクらはすぐに退室しますから。お忙しい中、お時間を頂き、ありがとうございました」

「いえ。私も楽しかったですから。では」


 ソフィアはドアに向かって告げた。


「入っても良いですよ。開いてますから」

「おう! 入るぜ団長!」


 と、やけに元気そうな声と共に、ガチャリとドアが開けられる。
 全員の視線がその人物に注目した。
 そこにいたのは、茶色い髪を持つ一人の男性。
 色々と軽そうな騎士――ブライ=サントスだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

処理中です...