悪竜の騎士とゴーレム姫【第12部まで公開】

雨宮ソウスケ

文字の大きさ
299 / 399
第10部

第一章 駆け抜ける者たち①

しおりを挟む
「……ウム! ソレデハ、弟タチヨ!」

 大きな声が室内に響く。

「……三十三号、アラタメ、サザンXノ帰還ヲ、祝オウ!」

「「「……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」」」

 さらに、盛大な声が轟いた。
 そこはアティス王国の主城・ラスセーヌ。
 その三階にある会議室の一つだ。
 王城にある会議室の中でも最も大きな部屋であり、会議室というよりも一種の会場なのだが、今はとても狭く感じる。
 何故なら、そこには今、埋め尽くすほどの紫色の物体が集まっていたからだ。

 身長は幼児ほど。小さな尻尾を揺らす鎧騎士達。
 自分で考え、自分で動く自律型鎧機兵・ゴーレム達だ。

 その数は現状、百機を越えていた。
 最初は三機だったのだが、状況によって追加で召喚。それを繰り返したことで、何だかんだで魔窟館の総数が、この部屋に集まっているのである。
 そんな中、檀上に立つのが、黄金の小さな王冠を頭に付けた零号だ。零号の隣にはもう一機のゴーレムの姿もある。

「……我ガ弟ハ、使命ヲ果タシ、ミゴト、帰還シタ!」

 零号は両腕を天に掲げた。

「……喝采セヨ!」

 そう告げると、ゴーレム達は一斉に拍手を贈った。
 まあ、基本的に彼らは金属製なので、拍手は『パチパチパチ』ではなく、『ガンガンガン』という盛大なものだったが。
 たまたま廊下を歩いていたメイドが、ギョッとするぐらいの騒音である。
 ともあれ、零号は満足げに頷くと、

「……デハ、アイサツヲ」

 言って、隣に立つもう一機のゴーレムの肩を叩いた。
 二本の角を持つ竜を象ったお面に、スパナを改造した処刑刀を腰の後ろに装備する、全身が蒼いゴーレムだ。

「……ウム!」

 そのゴーレム――サザンXは力強く頷いた。

「……ミナヨ!」

 サザンXは腰の処刑刀を掲げた。

「……オレハ、カエッテキタ! カエッテキタゾ!」

「「「……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」」」

 ゴーレム達が呼応して叫んだ。
 今回、彼らが一堂に集まったのは、すべてサザンXの帰還を祝うためだった。

「……ウム!」

 零号が、再びサザンXの肩を力強く叩いた。

「……ヨクゾ、戻ッテキタ! シカモダ!」

 零号は弟達に視線を向けて、誇らしげに告げた。

「……サザンXハ、ヨウセイノヒメモ、連レテキタノダ! 敵地デアリナガラ、コウタノ嫁ヲ、GETシテキタノダ!」

「「「……オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」」」

 三度、雄々しい声が上がる。
 が、その時だった。

「……イギ、アリ!」

 一機のゴーレム――いや、半数以上のゴーレム達が手を挙げたのだ。
 ゴーレム達は言う。

「……アニジャ! コウタノヨメハ、メルサマダ!」「……ウム! メルサマイガイ、アリエナイ!」「……メルサマ、サイコウ!」

 と、意気込む傍らで。

「……マテ! コウタノヨメハ、リーゼデアル!」「……カノジョコソ、リョウサイケンボ!」「……コウタヲ、ササエル、ツマダ!」

 別勢力が声を上げた。
 さらには、

「……フクチョウヲ、ワスレルナ!」「……フクチョウハ、カノウセイノ、カタマリダ!」「……ソウダ! イチカラジュウマデ、コウタゴノミニ、ソダツカラナ!」

 と、第三の勢力も声を上げた。

「……マテ。弟タチヨ」

 一方、長兄である零号は、手をかざして弟達の声を静めた。

「……ウヌタチノ推シハ、ワカッタ。ダガ、ウヌラハ、シラヌ。第五ノヨ嫁コトヲ」

「……ナニ?」

「……ソレハ、ドウイウコトダ? アニジャ」

「……マサカ、マダ、イルトイウノカ!」

 ゴーレム達が騒めき始める。
 それに対して、零号は厳かに告げた。

「……マテ。イマ、ゴーレム・ネットワーク・サービス……GNS二、アゲル」

 そうして、両眼がチカチカと光った。
 ゴーレム達は、しばし沈黙していたが、

「……オオ、コレハ」「……オトナノ、ビジョ!」

 再び騒ぎ出す。
 零号の記憶映像を一部共有したのだ。

「……コノ乙女ノ名ハ、ジェシカ」

 零号は告げる。

「……スデニ、コウタガ攻略済ミノ、乙女ダ」

「……オオオ」「……コウタ、イツノマニ」「……オソルベシ! コウタ!」

 ゴーレム達は、感嘆と畏怖の声を零した。
 零号は肩を竦めた。

「……ワカッタカ。弟タチヨ。コウタノ、嫁ハ、タクサン、イルノダ」

 一拍おいて。

「……乙女タチ二、序列ハナイ。メルサマデアッテモダ。コウタガノゾミ、乙女ガコタエテ、花嫁トナル。ユエニ、ヨウセイノヒメモ、コウタノ嫁ナノダ」

 と、当人達を横に置いて、とんでもない台詞を吐いた。

「……ソレハ、ドウカナ? アニジャヨ」

 が、それに対して反論を述べる者がいた。
 今まで沈黙していたサザンXだ。
 全機の注目が、蒼いゴーレムに集まった。

「……タシカニ、メルサマタチハ、ミリョクテキダ」

 サザンXは言葉を続ける。

「……シカシ、ゲンジョウ、モットモ、セメニハイッテイルノハ、ワガヒメナノダ」

 そこで、サザンXは両手を前に突きだした。

「……カツモクセヨ!」

 カッ、と両眼を輝かせる。
 次いで、解放されるのはサザンXの胸部装甲だった。
 がしゅんと鳴って、中から何かがスライドされて来る。
 サザンXは、それを手に取った。
 続けて胸部装甲を閉じると、兄弟機達にそれをかざして厳かに見せつけた。
 ゴーレム達は全機、ガン見した。

 そして――。

「……オオオ」「……ナントイウ」「……ヨウセイノヒメ、スゴイ……」

 感嘆の声が次々と上がる。
 その声は徐々に大きくなっていった。

「……スゴイナ」「……エロイ」「……オオ、ビューティフル」「……オヘソ、マルダシダ」「……イロッポイ」「……フクジュウ、シテル」「……エロイ」「……イショウガ、スゴイ」「……ヌノメンセキガ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」「……エロイ」

 最後の方になると、語彙が無くなったのかエロいとしか言わなくなった。

「……ミタカ。キョウダイタチヨ」

 そんな中、サザンXが胸を張って宣言する。

「……コレハ、コウタノタメノ、シャシンダ。コレヲ、コウタニ、ワタセバ、ヒメノ、リードハ、ユルギナイ、モノニナル」

「……ヌウゥ」「……タシカニ」

 唸るゴーレム達。だが、それでも心が折れない者達もいた。

「……マダダ!」

 一機のゴーレムが拳を振り上げた。

「……シャシンキノウ、ナラ、ワレラニモアル!」

 写真機は本来高価なものだ。
 しかし、彼らは先日、弟機である飛行型ゴーレムであるオルタナが、その機能を有していることを聞き、独自の技術で獲得していた。それも全機に至ってだ。
 ちなみに、これはメルティアも知らないことである。
 独自進化がもはや留まらないゴーレム達だった。

「……ッ! ソウカッ!」

 別の機体が、ハッとした様子で振り向く。

「……ワレラモ、ヨウイスレバ、イイノダ! メルサマノ、オッパイ、タワワノ、ヨコチチシャシンヲ!」

「……オオ! ソウカ! フクチョウノ、ニャンニャンナ、シャシンヲ!」

「……リーゼノ、シナヤカナ、キャクセンビ、モカ!」

 ゴーレム達は、互いの顔を見合わせた。
 ざわざわと騒ぎ出し、互いの推しの乙女ごとにチームを組んでいく。全体で五チームに分かれている。最大勢力はやはり創造主たるメルティア組のようだが、ちゃんとジェシカ組もいた。「……ジェシカハ、ワンコノイショウ、ガ、ニアイソウ」と語り合っている。何気にリノ組もいた。

「……ヌウゥ! キサマラ!」

 サザンXが呻く。が、すでに遅い。
 ゴーレム達は一斉に走り出した。

「……イザ、オトメノモトヘ!」「……サクセイハン! イショウハ、タノムゾ!」「……マカセロ! サイホウハ、トクイダ!」

「……マテ! 弟タチヨ!」

 流石に零号が止めようとするが、長兄の声も届かない。
 ジェシカ組だけはどこに向かって走っていたのかは謎だが、他のゴーレム達は推しの乙女の元へ向かったのだろう。
 会場に残されたのは主賓であるサザンXと、主催である零号だけだった。

「……ヌウゥ」

 サザンXが再び唸る。
 すると、零号はサザンXの頭をゴツンと軽く叩き、

「……ソレ、見セテミロ」

 弟機から写真を取り上げる。それを両手で宙に掲げた。
 まじまじと見つめる。それは五秒、十秒と続いた。
 そうして、零号はこう呟くのだった。

「……オマエ、コレ、アカンヤツヤロ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...