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各部のあらすじ

各部のあらすじ

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【第1部】

 幼き日に故郷を失った少年コウタはエリーズ国の公爵家であるアシュレイ家の当主に拾われ、人が乗る巨人――鎧機兵を操る騎士見習いとして平穏に生きていた。
 しかし、そのアシュレイ家には、少し変わったお嬢様がいた。庭園の一角にある館、通称魔窟館に引きこもる公爵令嬢。コウタの幼馴染でもある少女だ。
 外出を嫌い、ひたすら魔窟館に引きこもる幼馴染に対し、コウタは常々思っていた。次期当主がこのままではいけないと。
 そして内心では彼女をどうにか更生させようと思いつつ、今日も魔窟館に通うのだが……。

「ででーん」
 メルティアは大きな双丘をたゆんっと揺らして石板を天にかざした。
「作品ナンバー458。その名も《コウタ探索機》です」
「……あはは、あのねメル」
 笑顔のまま青筋を立てたコウタが、メルティアの両頬を摘んだ。
「一体どこにそんな発信機を仕掛けたのかな? 一応ボクにだってプライバシーはあるんだよ。さあ、今すぐ取り外すんだ」
 言って、むにゅうっと頬を伸ばされるが、メルディアは目尻に涙を溜めて告げるのだった。
「ことわるでふ」




【第2部】

 騎士学校の夏季休暇が半ばを過ぎた頃。コウタ達は友人達だけの合宿を企画していた。
 合宿先は級友であるリーゼの別荘。湖畔にある優雅な場所だ。
 そして和気あいあいと別荘に向かうコウタ達。
 しかし、そこに待ち構えていたのは和やかな休暇だけではなかった――。

「……ふふっ、覚悟しなさいメルティア」
 リーゼは、やや慎ましい胸を反らして不敵に笑った。
「いつまでも幼馴染の立場を過信しないことです。今こそ、あなたに女子力の差を見せつけてあげますわ!」





【第3部】

 その日。一人の少女が王都パドロに訪れた。
 生まれながら魔性を持つ少女。傾国の雛鳥とも呼ぶべき美しき少女だ。
 彼女はこの異国の地にて三人の運命の人間に出会う。
 一人は黒髪の女性。少しばかりお節介な人間だ。
 一人は紫銀色の髪の少女。どうにも気にくわない相手だった。
 そして最後の一人は、彼女にとって大切な――。

「今日はとても楽しかった。わらわの人生でもこれほど楽しかった日はない」
 少女は嘘偽りのなき本音を呟く。
「ふふ、責任は取ってもらうぞ。コウタよ」
 そして少女は妖艶に笑った。
「わらわの望みのために強くなれ。《七つの極星》よりも。《九つの妖星》よりも。そしてあの《黒き太陽》よりもな。出なくば、わらわの望みは到底叶わんのでな」
 いつか自分の願いが叶う事を信じて、彼女はそう告げるのであった。






【第4部】

 深い森の中にある寂れた礼拝堂。
 今そこに一人の少年がいた。炎のごとき赤い髪を持つ少年だ。
 騎士である彼には任務があったが、わずかに対応が遅れ、大きな損失をしたばかりだった。
 だが、それでも少年の赤い瞳には諦めの色は宿っていなかった。
 彼は森の奥を見据える。その先にある『森の国』を――。
 
「エリーズ国か。面倒なことになりそうだね。だけどさ……」
 赤い髪の少年は拳を強く固めて宣言するのだった。
「絶対に逃がしたりはしない」







【第5部】

 魔窟館の主人。メルティア=アシュレイ。
 彼女は今、とても困っていた。こんな事態は初めてだった。
 一体、どうすればいいのか。果たしてこれはどうにか出来るものなのか。
 不安に胸を押し潰されるメルティアは、当然のように幼馴染に頼った。

「こ、こうたぁ……」
 メルティアがおろおろと手を伸ばしてきた。
「もしかして、私はもうずっとこのままなのでしょうか? 私から技術力を取り除くと一体何が残るのですか?」
「だ、大丈夫だから! メル!」
 ――超絶的な可愛さが残るよ。
 反射的にそう答えそうになるのをグッと堪えるコウタであった。 







【第6部】

 時節は『三の月』。
 コウタ達はグレシア皇国・ハウル公爵家の跡取りであるアルフレッドから皇国へ招待を受けた。
 友人の誘い、そしてコウタにとっては久々の帰国。唯一渋っていた幼馴染も説得し、コウタ達は喜んで受け入れた。
 そして彼らは旅立つ。運命が待つグレイシア皇国へと――。

 そこは果てなき水面の世界。
 炎の柱が天を衝く場所に彼女はいた。
「あの子を。私の義弟おとうとを」
 そして《ディノ=バロウス教団》の盟主は歌うように宣言する。
「――《悪竜の御子》を、私達の教団へと迎え入れるために」






【第7部】

 グレイシア皇国。近隣最大の大国。
 その皇都ディノスに、コウタ達は滞在していた。
 ハウル公爵家、騎士団とも親交を深めるコウタ達。穏やかな日々が続く。
 だが、この国で待っていたのはそれだけではない。
 二つの再会が待っていたのだ。

「この戦いは試練よ。あの子が自分自身の憎悪と向き合うための」
 彼女は言う。
「憎悪に呑み込まれてしまうのか。それとも飼い慣らすのか。あの子にとって辛い邂逅になるでしょうね。だけど……」
 彼女は微笑んで告げた。
「私の義弟おとうと――コウちゃんは乗り越えられる。私はそう信じているから」
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