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剣幕
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店に入ると、すぐに机に伏した弥生子と、その隣で弥生子を見ている楠本をみつけた宗一郎。
店員の「いらっしゃいませ」などそっちのけで、2人のいる方へ大股で近づいた。
「楠本っ!どういうつもりだ!こんなに飲ませてっ!」
弥生子が酔いつぶれたのはいかにも楠本が原因だと難癖をつける宗一郎。
楠本とて、相手は常務という遥か上位の立場の人間だとはわかっているが、自分のせいにされるのはたまったもんじゃない。
「やめてくださいよ、常務。僕が飲ませたみたいに言わないでくださいよ。そんなに心配ならこんなになるまで弥生子ちゃんを傷つけないでくださいよ。」
「弥生子ちゃん?諏訪さんと呼べっ!」
「すみません、でも、今はそんな呼び方がどうこうよりも、早く連れて帰って仲直りするほうが先ですよっ。愚痴ってましたから。」
楠本が弥生子を“ちゃん”付けするなど許せない宗一郎。我関せずの顔でぐっすり眠っている弥生子は、やはり自分との関係をアテにお酒を飲んだようだ。
「愚痴?お前に?弥生子が?何でだ?」
とにかくこの状況に耐えられない宗一郎は、相手を追い詰めることしか考えられないでいる。
「たまたま、ですよ。たまたま僕が近くにいたから受け皿になっただけですから。それに、さっきまで森坂さんもいたんですからねっ!あまり責めないで下さいよっ!」
楠本からしたら、帰宅した森坂が恨めしく思えてくる。あの時、一気にお開きにしていればよかったが、少しだけ弥生子と2人きりで飲んでみたい気持ちも無きにしも非ずだった。根っからのプレイボーイは、ストライクの領域が広い上、変化球も大好きだ。だが、今はそんな不埒な考えを、目の前の怒り心頭の男に悟られてはいけない。
「森坂もいたのか?いつまで?」
「えーと、常務に電話する少し前までですよっ。確認してもらってもいいですよ。」
そう言ったら、本当にこの常務は森坂に電話をかけた。二言三言話し、確認すると、「ふうっ」と肩で息をして、おもむろに弥生子を抱き上げた。
だが、弥生子は膝丈のスカート姿だし、お姫様抱っこもおんぶも下着が見えてしまう可能性がある。まして、男狼の楠本が目の前にいて、宗一郎のすることを見守っているのだ。
仕方なく、宗一郎は、弥生子の腕を自分の肩に回し、立ち上がらせ、ふらつく足で帰宅を促すことにした。
「おいっ、弥生子!起きろっ!」
「んーーーぁ」
と、そんなやり取りをしながらも、弥生子は目を開けずに宗一郎に全体重をかけている。引こずるように店の出口まで行き、エレベーターに乗せると額に汗が湧いてきた。それが雫となって、眉あたりまで流れている。拭たいが片手は弥生子、片手は弥生子の荷物という状況に、苛立ちはますますつのる。
エレベーターから降りて、ビルを出、ようやく助手席に乗せたが、まだ目覚めようとしない弥生子に、思わず宗一郎は笑ってしまった。
「酒、弱かったんだな。」
なんて、呟きながらも、やはりこんなに酔っ払う姿を自分以外の男が見ていたという事実は許せない。
「お前が悪いんだからなっ。」
宗一郎はそう言うと、汗を拭い、弥生子の唇を塞いだ。
ねっとりと、執拗に、じっくりと。
「ーーん、ん、ん~!!!」
そのうち弥生子は苦しくなり、ようやく目を開けた。
そこに宗一郎がいて、自分に接吻していることが見て取れ、心臓がひっくり返るかと思った。
「ようやく起きたか、この酔っ払いがっ!」
と、言いながら、弥生子にデコピンをする宗一郎。ほんとはもっと派手に怒ってみせようと思っていたが、自分のキスで目覚めたことに、少しだけ自尊心が満たされたので、忽ちデコピンで許した。
店員の「いらっしゃいませ」などそっちのけで、2人のいる方へ大股で近づいた。
「楠本っ!どういうつもりだ!こんなに飲ませてっ!」
弥生子が酔いつぶれたのはいかにも楠本が原因だと難癖をつける宗一郎。
楠本とて、相手は常務という遥か上位の立場の人間だとはわかっているが、自分のせいにされるのはたまったもんじゃない。
「やめてくださいよ、常務。僕が飲ませたみたいに言わないでくださいよ。そんなに心配ならこんなになるまで弥生子ちゃんを傷つけないでくださいよ。」
「弥生子ちゃん?諏訪さんと呼べっ!」
「すみません、でも、今はそんな呼び方がどうこうよりも、早く連れて帰って仲直りするほうが先ですよっ。愚痴ってましたから。」
楠本が弥生子を“ちゃん”付けするなど許せない宗一郎。我関せずの顔でぐっすり眠っている弥生子は、やはり自分との関係をアテにお酒を飲んだようだ。
「愚痴?お前に?弥生子が?何でだ?」
とにかくこの状況に耐えられない宗一郎は、相手を追い詰めることしか考えられないでいる。
「たまたま、ですよ。たまたま僕が近くにいたから受け皿になっただけですから。それに、さっきまで森坂さんもいたんですからねっ!あまり責めないで下さいよっ!」
楠本からしたら、帰宅した森坂が恨めしく思えてくる。あの時、一気にお開きにしていればよかったが、少しだけ弥生子と2人きりで飲んでみたい気持ちも無きにしも非ずだった。根っからのプレイボーイは、ストライクの領域が広い上、変化球も大好きだ。だが、今はそんな不埒な考えを、目の前の怒り心頭の男に悟られてはいけない。
「森坂もいたのか?いつまで?」
「えーと、常務に電話する少し前までですよっ。確認してもらってもいいですよ。」
そう言ったら、本当にこの常務は森坂に電話をかけた。二言三言話し、確認すると、「ふうっ」と肩で息をして、おもむろに弥生子を抱き上げた。
だが、弥生子は膝丈のスカート姿だし、お姫様抱っこもおんぶも下着が見えてしまう可能性がある。まして、男狼の楠本が目の前にいて、宗一郎のすることを見守っているのだ。
仕方なく、宗一郎は、弥生子の腕を自分の肩に回し、立ち上がらせ、ふらつく足で帰宅を促すことにした。
「おいっ、弥生子!起きろっ!」
「んーーーぁ」
と、そんなやり取りをしながらも、弥生子は目を開けずに宗一郎に全体重をかけている。引こずるように店の出口まで行き、エレベーターに乗せると額に汗が湧いてきた。それが雫となって、眉あたりまで流れている。拭たいが片手は弥生子、片手は弥生子の荷物という状況に、苛立ちはますますつのる。
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なんて、呟きながらも、やはりこんなに酔っ払う姿を自分以外の男が見ていたという事実は許せない。
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「ーーん、ん、ん~!!!」
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「ようやく起きたか、この酔っ払いがっ!」
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