私と離婚してください。

koyumi

文字の大きさ
68 / 89

帰るなと言われても

しおりを挟む
 元旦那、諭の相手であったはずのいずみさん。
 一度は子供を残して出ていったのに、最近になって、また姿を現し、こっそり修也君を連れていってしまったという。
 いずみさんのご両親の庇護のもと、地方の何処かで暮らしているのだとか。
 一体諭に何が起きているのか、私には想像もつかないけれど、病院で出会した時の姿を思えば、チクリと胸が痛む。
(因果応報とは言ったもの。)
 これまでに諭がしてきた数々の裏切りを考えれば、私は無視していいと思うが、幼い頃から手を差し伸べてくれた姿を思い出せば、何も聞かなかったことにはできない。

 暫くの間、ぼんやりと過ごしていた。
 気持ちは正に日本に飛んでいて、これ以上の言語を覚える気にはなれない。
 きっと純君も私の変化に気づいているが、敢えて触れないようにしていることがわかるのが切ない。

「来週から1週間、日本に行くんだけどどうする?」

 そんな時、唐突に言われた出張の予定。

「依子ちゃんと一緒に行けたらいいかなと思うけど、実は大事な宅配物がその間に届くから留守にはしたくないんだ。だから、依子ちゃんがよければここに残ってほしいんだけど。」

「宅配物が?」

「うん。クライアントの予定で、どうしてもその時にしか送付できないみたいでさ。不在が続くと返される可能性もあるし、僕はオフィスを空けることも多いから、宛名は依子ちゃんにしているんだ。」

「それなら仕方ないよ。あまり早くに日本に戻ったら、こっち来た時ホームシックになるかもしれないし。大丈夫。留守を守るわ。」

 私が承諾すると、純君は安堵した息を吐き、ニコッと笑った。

 この笑顔が、私は大好きで、絶対に離したくないし離れて欲しくない。

 そう思うと、急に1週間純君と離れなきゃいけない現実が胸にきて、寂しさがこみ上げてきた。
 諭のことを心配すること以上に、私は今繋がれている手を離さないことに必死で、純君に抱きしめて欲しくて仕方がなかった。
 日本に帰るなと言われても、帰る理由もキッカケもない。

「心配だな……本当は片時も離れたくないんだよ。わかってる?」

 その思いは私も同じなのに、純君は私を試すようにじっと見つめる。

「……私も辛いんだよ?」

 やっと出た言葉に、我ながら色気も何もないなと思うけど、

「そうなんだ?なんか、めちゃくちゃ嬉しいな。」

 純君はそう言って、私を腕の中に閉じ込めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

離した手の温もり

橘 凛子
恋愛
3年前、未来を誓った君を置いて、私は夢を追いかけた。キャリアを優先した私に、君と会う資格なんてないのかもしれない。それでも、あの日の選択をずっと後悔している。そして今、私はあの場所へ帰ってきた。もう一度、君に会いたい。ただ、ごめんなさいと伝えたい。それだけでいい。それ以上の願いは、もう抱けないから。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...