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帰るなと言われても
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元旦那、諭の相手であったはずのいずみさん。
一度は子供を残して出ていったのに、最近になって、また姿を現し、こっそり修也君を連れていってしまったという。
いずみさんのご両親の庇護のもと、地方の何処かで暮らしているのだとか。
一体諭に何が起きているのか、私には想像もつかないけれど、病院で出会した時の姿を思えば、チクリと胸が痛む。
(因果応報とは言ったもの。)
これまでに諭がしてきた数々の裏切りを考えれば、私は無視していいと思うが、幼い頃から手を差し伸べてくれた姿を思い出せば、何も聞かなかったことにはできない。
暫くの間、ぼんやりと過ごしていた。
気持ちは正に日本に飛んでいて、これ以上の言語を覚える気にはなれない。
きっと純君も私の変化に気づいているが、敢えて触れないようにしていることがわかるのが切ない。
「来週から1週間、日本に行くんだけどどうする?」
そんな時、唐突に言われた出張の予定。
「依子ちゃんと一緒に行けたらいいかなと思うけど、実は大事な宅配物がその間に届くから留守にはしたくないんだ。だから、依子ちゃんがよければここに残ってほしいんだけど。」
「宅配物が?」
「うん。クライアントの予定で、どうしてもその時にしか送付できないみたいでさ。不在が続くと返される可能性もあるし、僕はオフィスを空けることも多いから、宛名は依子ちゃんにしているんだ。」
「それなら仕方ないよ。あまり早くに日本に戻ったら、こっち来た時ホームシックになるかもしれないし。大丈夫。留守を守るわ。」
私が承諾すると、純君は安堵した息を吐き、ニコッと笑った。
この笑顔が、私は大好きで、絶対に離したくないし離れて欲しくない。
そう思うと、急に1週間純君と離れなきゃいけない現実が胸にきて、寂しさがこみ上げてきた。
諭のことを心配すること以上に、私は今繋がれている手を離さないことに必死で、純君に抱きしめて欲しくて仕方がなかった。
日本に帰るなと言われても、帰る理由もキッカケもない。
「心配だな……本当は片時も離れたくないんだよ。わかってる?」
その思いは私も同じなのに、純君は私を試すようにじっと見つめる。
「……私も辛いんだよ?」
やっと出た言葉に、我ながら色気も何もないなと思うけど、
「そうなんだ?なんか、めちゃくちゃ嬉しいな。」
純君はそう言って、私を腕の中に閉じ込めた。
一度は子供を残して出ていったのに、最近になって、また姿を現し、こっそり修也君を連れていってしまったという。
いずみさんのご両親の庇護のもと、地方の何処かで暮らしているのだとか。
一体諭に何が起きているのか、私には想像もつかないけれど、病院で出会した時の姿を思えば、チクリと胸が痛む。
(因果応報とは言ったもの。)
これまでに諭がしてきた数々の裏切りを考えれば、私は無視していいと思うが、幼い頃から手を差し伸べてくれた姿を思い出せば、何も聞かなかったことにはできない。
暫くの間、ぼんやりと過ごしていた。
気持ちは正に日本に飛んでいて、これ以上の言語を覚える気にはなれない。
きっと純君も私の変化に気づいているが、敢えて触れないようにしていることがわかるのが切ない。
「来週から1週間、日本に行くんだけどどうする?」
そんな時、唐突に言われた出張の予定。
「依子ちゃんと一緒に行けたらいいかなと思うけど、実は大事な宅配物がその間に届くから留守にはしたくないんだ。だから、依子ちゃんがよければここに残ってほしいんだけど。」
「宅配物が?」
「うん。クライアントの予定で、どうしてもその時にしか送付できないみたいでさ。不在が続くと返される可能性もあるし、僕はオフィスを空けることも多いから、宛名は依子ちゃんにしているんだ。」
「それなら仕方ないよ。あまり早くに日本に戻ったら、こっち来た時ホームシックになるかもしれないし。大丈夫。留守を守るわ。」
私が承諾すると、純君は安堵した息を吐き、ニコッと笑った。
この笑顔が、私は大好きで、絶対に離したくないし離れて欲しくない。
そう思うと、急に1週間純君と離れなきゃいけない現実が胸にきて、寂しさがこみ上げてきた。
諭のことを心配すること以上に、私は今繋がれている手を離さないことに必死で、純君に抱きしめて欲しくて仕方がなかった。
日本に帰るなと言われても、帰る理由もキッカケもない。
「心配だな……本当は片時も離れたくないんだよ。わかってる?」
その思いは私も同じなのに、純君は私を試すようにじっと見つめる。
「……私も辛いんだよ?」
やっと出た言葉に、我ながら色気も何もないなと思うけど、
「そうなんだ?なんか、めちゃくちゃ嬉しいな。」
純君はそう言って、私を腕の中に閉じ込めた。
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