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番外編 清 暮 ―Holy night―
中編(※)
しおりを挟む――マンションの寝室。
ダブルベッドの毛布の中で、武井と秀一が寄り添っていた。
既に二度恋人の欲望を受け入れた秀一の裸身は、気怠さを纏って重ねた枕に凭れ込んでいる。その横で頬杖を突き彼を見詰める武井が、枕に散っている栗色の髪に指を入れた。絹のような細糸を弄び、指に絡んだその束に軽い口付けを落とす。
「……ちょっと急ぎ過ぎちまったか」
多少疲労の色を載せた秀一の顔を見ながら言う。気遣う言葉に、秀一はゆるゆると首を横に振った。
「……大丈夫。アルコールを摂ってすぐだったから、少し体がだるいだけだ……。それより、お前の方こそ平気なのか? あんなに甘い酒、飲んだことなかったんだろう…?」
フッと笑う武井。
「言ったろ? お前とだったら何でもいけるってな。……それに――」
艶めく秀一の双眸がこちらを見詰める。その頬を撫でて上体を起こすと、傍らのナイトテーブルに手を伸ばした。そこに置かれた二つのグラスの片方を取る。その中には、甘口のスパークリングワインがまだ少し残っていた。
「――俺にとっちゃ、お前以上に甘くて酔えるもんなんてねぇだろ……」
それを聴いた彼の白面が羞恥の彩に染まる。
「今夜は、とことんお前を味わいてぇ……」
武井はグラスを傾けて、未だ細かい気泡を立ち昇らせている淡黄色の液体を口に含んだ。そのまま秀一の顔に己の面を近付ける。優しく包み込むように合わせた唇から、彼の口内へと甘い蜜を流し込んだ。
「…んっ…」
口移しの清流。その全ては受け止めきれず、溢れた麗酒が秀一の口端から零れ落ちる。筋肉の流れに沿って、喉、鎖骨、そして毛布に覆われた胸と腹まで、筋を残して伝い落ちた。
口内のワインを嚥下した秀一の唇から離れ、武井の熱いそれが流れの跡を辿る。毛布を捲り、次第に下方へと移動しながら舐め上げていく舌の感触に、再び息を乱し始めた秀一が身悶えた。
「っ…、雅…也……」
涙ぐみ、細波が立ちそうなほどに潤みを増したセピアの瞳が、恋しい男の姿を捉えて切なげに揺れる。
疲れていることも充分わかっている。それでも可愛い秀一を存分に愛してやりたい武井は、ワインクーラーに立てたままのボトルに残る僅かな酒を眼前の白い肌に垂らした。
「……っっ」
微かに跳ねる秀一の身体。
キンと冷えた透明の神酒が、彼の臍周りの窪みに溜まっていた。
「…冷てぇか…?」
小さく首を縦に振る秀一。
武井は窪みに唇を押し当て、啜るように吸い上げた。泡の微かな刺激が口腔に広がる。肌に残る水滴を舐め取ると、濡れた舌先を窄めて恋人の臍に挿し入れた。
「…っあ…、ん…っっ」
秀一の裸身が仰け反る。
敏感な器官に近接しているからなのか、取るに足りない臍への舌戯で、まるでダイレクトに中心を刺激したかのような反応が返ってくる。皮下組織の薄いその内部。腹壁を震わせるほどの激成は考え物だが、優しい愛撫は更なる感覚を呼び起こすのだろう。
一度そこから離した舌でじっくりと周囲を巡る。
再び近付けて、探るようにより深く挿し込み弄ると、その下肢がビクビクと震えた。
悩ましげに寄せられた眉、止めようも無く零れ出す熱い吐息。
熱を持ち疼く自身に翻弄される彼の姿態に、武井は凄艶な笑みを浮かべる。
ボトルの底に残っていた最後の数滴は、驚くほど甘みが凝縮された芳醇な味だった。
秀一の身体に見付けた新たな官能の泉。そこで味わった濃密で甘美な湿が、どんな美酒よりも武井を酔わせた。
顔を上げ、己の唇を舐める。
「――楽になりてぇか? 秀一……」
名残の甘露を味わいながら、武井は恋人の内を駆け巡る熱を解放する為、コクリと頷く彼の中心に熱い指を絡ませた――。
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