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狭間の村の新年節
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今回は、ルカーシュ視点です
✳︎✳︎✳︎
竈門の上に、パンと葡萄酒を並べ、マレクが小さな声で祈りを捧げている。今日は新年節。竈門を休め、日頃の糧に感謝を捧げる風習が、彼の故郷にはある。僕は暖炉の前で弓の手入れをしながら、その様子を見ている。
彼はこの狭間の村で暮らし始めてから、随分穏やかになった。というより、元がこういう性質なのだろう。脚を悪くした彼は、日々黙々と畑を耕し、家畜の世話をしている。そして毎日せっせと巣を整え、パンを焼き、スープをこしらえて、僕の帰りを待っている。
「…美味いか」
僕が黙って食事をする様を、彼はテーブルを挟んでじっと観察している。「美味しいよ」と返すと、満足そうに鼻を鳴らす。何でもなさそうな顔をして、頬がちょっと赤くなる。でも「恥ずかしいの?」と聞いてはいけない。ものすごく怒られる。
人間の「恥ずかしい」という反応について、僕はようやく理解した。「恥ずかしい」は、彼らが本当の姿や本当の気持ちを隠しておきたい時に起こる。裸は、恥ずかしい。交尾は、恥ずかしい。そして、彼が僕に食餌を用意して喜ばせようとすることも、恥ずかしい。
何でだろう。裸は裸だし、交尾は交尾だ。そして彼は僕に甲斐甲斐しく給餌する。全て明らかなことだ。隠しておきたいから「恥ずかしい」というのは理解出来るようになったが、それらをどうして隠しておきたいのかは、僕にはまだ分からない。
「あ…はぁっ…」
今夜も二人でベッドに入り、素肌で求め合う。ちょっと寒いけど、どうせ服を脱いで交尾するんだから、湯浴みの後は部屋着を着なくてもいいと思うんだけど、マレクは「恥ずかしい」からって怒る。そのくせ、前は散々「いやらしいな」とか「恥ずかしいな」って言ってたのに、僕が声を殺すと「我慢するな」って怒る。訳が分からない。そして、僕がため息や上擦った声を漏らすと、彼はとても興奮する。
「ルカーシュ…ルカーシュ…」
身体を繋げたまま、掠れた声で、僕を何度も呼ぶ。オスの姿の僕を望んだのは彼なのに、毎晩こうして一生懸命求愛して、僕と交尾しようとする。とても可愛い。可愛いって言ったら、きっとまた怒られる。だけどマレクは、僕の魂の半分。可愛い僕の愛し子。
「マレク…」
僕に覆い被さり、繰り返し穿つマレク。汗で額に張り付いた前髪を指で払うと、彼の唇がゆっくりと降りて来る。両腕で掻き抱いて深く迎え入れながら、僕らは何度もキスを繰り返す。愛しいマレク。ああ、そうか。
「愛してるよ」
「!」
そう言った途端、彼のペニスは大きく膨れ上がり、あっという間に射精した。
「…おま…そういうこと言うんじゃねェよ!」
なぜかマレクは、首まで真っ赤になって怒っている。「恥ずかしい」んだろうか。でも、愛してるんだもの。
「だってマレクは、僕の愛し子だから」
「…その、愛し子ってのがよ…」
彼は何やらもにょもにょ言っていたけど、再び唇を重ねると、また僕の中をゆるゆると出入りし始めた。
村での生活は、きっとあっという間だ。人間の身体は、すぐに老いて朽ちてしまう。マレクが肉体を脱ぎ捨てたら、二人で小さな粒になって旅に出よう。時には蝶々になって、時には魚になって。これからは、ずっと一緒だ。だって彼は僕の愛し子、僕らは番だもの。
だけど、彼が人間の身体を持っている間に、僕らは出会えて良かった。僕はずっと、生き物の営みを観察してきた。そしてどんな生き物も、交尾や産卵をして繁殖して行くのは知ってる。
でも、こうして身体を重ねて、胎内にマレクを受け入れて。きつく抱き締め合いながら、体温を分け合って、体液を交換して。強く強く抱かれて、求められて、結ばれて。
「あっ、あっ、マレクっ、…あぁッ…!!」
精を吐き出し合って、見つめ合って、また蕩け合って。肉体を介してしか分からない、もどかしくて狂おしい交合。汗にまみれながら、ぴったりと身体を寄せ合って、二つが一つに戻る。
マレクとこうして愛し合うことで、生まれて来た本当の意味を、僕はやっと理解した。
「だから、どうして求愛するのが「恥ずかしい」の?」
ある日。マレクがまた、烈火の如く怒っている。僕は、彼がいつも巣を整え、食事を用意し、僕に求愛するのを喜んでいるだけなのに。
「ばっ、違ェよ!俺は普通に家の事をだな!」
「だって巣作りに給餌って求愛でしょ?毎晩交尾だってするし」
「だから交尾って言うな!」
「何が「恥ずかしい」のか、僕にはよく分からないよ」
「くそッ、何で俺ばっか求愛とか…」
彼は顔を真っ赤にしたまま、何やらぶつくさ言っている。
「求愛なら僕だって、毎日狩りに行って、獲物を狩って来るよ。これって「恥ずかしい」の?」
「ばっ、おまっ、求っ」
マレクは一層真っ赤になって、あわあわしている。
「だって愛してるもの」
「だからッ!!!」
相変わらず、マレクは「恥ずかしい」だらけだ。何が恥ずかしくて何が恥ずかしくないのか、僕にはまだよく分からない。
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竈門の上に、パンと葡萄酒を並べ、マレクが小さな声で祈りを捧げている。今日は新年節。竈門を休め、日頃の糧に感謝を捧げる風習が、彼の故郷にはある。僕は暖炉の前で弓の手入れをしながら、その様子を見ている。
彼はこの狭間の村で暮らし始めてから、随分穏やかになった。というより、元がこういう性質なのだろう。脚を悪くした彼は、日々黙々と畑を耕し、家畜の世話をしている。そして毎日せっせと巣を整え、パンを焼き、スープをこしらえて、僕の帰りを待っている。
「…美味いか」
僕が黙って食事をする様を、彼はテーブルを挟んでじっと観察している。「美味しいよ」と返すと、満足そうに鼻を鳴らす。何でもなさそうな顔をして、頬がちょっと赤くなる。でも「恥ずかしいの?」と聞いてはいけない。ものすごく怒られる。
人間の「恥ずかしい」という反応について、僕はようやく理解した。「恥ずかしい」は、彼らが本当の姿や本当の気持ちを隠しておきたい時に起こる。裸は、恥ずかしい。交尾は、恥ずかしい。そして、彼が僕に食餌を用意して喜ばせようとすることも、恥ずかしい。
何でだろう。裸は裸だし、交尾は交尾だ。そして彼は僕に甲斐甲斐しく給餌する。全て明らかなことだ。隠しておきたいから「恥ずかしい」というのは理解出来るようになったが、それらをどうして隠しておきたいのかは、僕にはまだ分からない。
「あ…はぁっ…」
今夜も二人でベッドに入り、素肌で求め合う。ちょっと寒いけど、どうせ服を脱いで交尾するんだから、湯浴みの後は部屋着を着なくてもいいと思うんだけど、マレクは「恥ずかしい」からって怒る。そのくせ、前は散々「いやらしいな」とか「恥ずかしいな」って言ってたのに、僕が声を殺すと「我慢するな」って怒る。訳が分からない。そして、僕がため息や上擦った声を漏らすと、彼はとても興奮する。
「ルカーシュ…ルカーシュ…」
身体を繋げたまま、掠れた声で、僕を何度も呼ぶ。オスの姿の僕を望んだのは彼なのに、毎晩こうして一生懸命求愛して、僕と交尾しようとする。とても可愛い。可愛いって言ったら、きっとまた怒られる。だけどマレクは、僕の魂の半分。可愛い僕の愛し子。
「マレク…」
僕に覆い被さり、繰り返し穿つマレク。汗で額に張り付いた前髪を指で払うと、彼の唇がゆっくりと降りて来る。両腕で掻き抱いて深く迎え入れながら、僕らは何度もキスを繰り返す。愛しいマレク。ああ、そうか。
「愛してるよ」
「!」
そう言った途端、彼のペニスは大きく膨れ上がり、あっという間に射精した。
「…おま…そういうこと言うんじゃねェよ!」
なぜかマレクは、首まで真っ赤になって怒っている。「恥ずかしい」んだろうか。でも、愛してるんだもの。
「だってマレクは、僕の愛し子だから」
「…その、愛し子ってのがよ…」
彼は何やらもにょもにょ言っていたけど、再び唇を重ねると、また僕の中をゆるゆると出入りし始めた。
村での生活は、きっとあっという間だ。人間の身体は、すぐに老いて朽ちてしまう。マレクが肉体を脱ぎ捨てたら、二人で小さな粒になって旅に出よう。時には蝶々になって、時には魚になって。これからは、ずっと一緒だ。だって彼は僕の愛し子、僕らは番だもの。
だけど、彼が人間の身体を持っている間に、僕らは出会えて良かった。僕はずっと、生き物の営みを観察してきた。そしてどんな生き物も、交尾や産卵をして繁殖して行くのは知ってる。
でも、こうして身体を重ねて、胎内にマレクを受け入れて。きつく抱き締め合いながら、体温を分け合って、体液を交換して。強く強く抱かれて、求められて、結ばれて。
「あっ、あっ、マレクっ、…あぁッ…!!」
精を吐き出し合って、見つめ合って、また蕩け合って。肉体を介してしか分からない、もどかしくて狂おしい交合。汗にまみれながら、ぴったりと身体を寄せ合って、二つが一つに戻る。
マレクとこうして愛し合うことで、生まれて来た本当の意味を、僕はやっと理解した。
「だから、どうして求愛するのが「恥ずかしい」の?」
ある日。マレクがまた、烈火の如く怒っている。僕は、彼がいつも巣を整え、食事を用意し、僕に求愛するのを喜んでいるだけなのに。
「ばっ、違ェよ!俺は普通に家の事をだな!」
「だって巣作りに給餌って求愛でしょ?毎晩交尾だってするし」
「だから交尾って言うな!」
「何が「恥ずかしい」のか、僕にはよく分からないよ」
「くそッ、何で俺ばっか求愛とか…」
彼は顔を真っ赤にしたまま、何やらぶつくさ言っている。
「求愛なら僕だって、毎日狩りに行って、獲物を狩って来るよ。これって「恥ずかしい」の?」
「ばっ、おまっ、求っ」
マレクは一層真っ赤になって、あわあわしている。
「だって愛してるもの」
「だからッ!!!」
相変わらず、マレクは「恥ずかしい」だらけだ。何が恥ずかしくて何が恥ずかしくないのか、僕にはまだよく分からない。
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