リフレイン

神束 月夜

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1,これが日常

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そこから見えるのは下へとどこまでも続く螺旋階段とそれぞれの階に並ぶ無数の本棚がしまわれた本棚の壁。


一見僅かに大きいが、なんら一般家庭の住む一軒家と変わらない外見のこの家。しかし一階の大広間の扉を開けさえすれば図書館として利用しているこのスペースに繋がるのだ。
この大きさや本の種類に関しては大陸一の大都市、聖都の大図書なんざ比ではない。

「そう考たらこんなに本があるワイズさんのお家は凄いのね」
「凄いのはお家だけじゃないよ、だってワイズちゃんはここにある本とその場所、中身だって全部覚えてるんだからっ」


まるで自分のことかのように誇らしげな笑みを浮かべこちらを振り返る少女に対し黙って頷く。




さて。
好奇心旺盛な子供達を横目に本を置き、予め用意していたティーポットの中身を二人分カップへ注ぐ。
ん、美味い。



「はよ、ワイズ。何飲んでんだ?」
紅茶を嗜むワイズのもとにまた一人、幼い少女が声を掛けながら傍へと寄る。
少女もまた異質な容姿をしていた。


アシンメトリーな前髪に、陶器のような白い肌。そして一番に目を引くのが琥珀と翠のオッドアイ。
左目に関しては人間のものではないことが見て取れる。
極めつけは彼女の纏う服。袴、と呼ばれるものを着用しているがこの世界では浸透していないものだ。

だが少女もワイズ同様整った顔立ちのためか最初の頃は目立ちはしたが、人柄の良さもあり今ではすっかり村の者と打ち解けているようだ。

「おはよう、リア」
本名はレリアナであるが、愛称のリアと呼ばれる少女。
少女は「相変わらず表情筋が死んでんのな」と口にしながらもどこか大人びた無邪気なその瞳でワイズに対し微笑んだ。

人形のような可愛らしい見た目からは想像できない口調ではあるものの、そこが子供からすれば親しみやすいのだとか。


「ミルクティー、リアのもある」
レリアナは同じ柄のティーカップを受け取りほどよい甘さのミルクティーを口にした。
「ふぅ、やっぱ起きたらこれがねーとなぁ。よっ、」
ミルクティーを零すことなんて視野にないのか勢いよくワイズの横へ腰掛ける。
見れば一滴もカップから零れることもなく、ワイズに関してもなんら慌てる様子はない。

きっとこれが彼女らの日常なのである。

「あー!!ねぼすけのレリアナだっ!!!」
「あー?誰にそんな口の利き方してんだ?ここが誰の家か分かってんのか追い出すぞクソガキ」
「うわ~、レリアナやること汚い~!」
「汚いレリアナだっ~!!」
「というか、レリアナも子供じゃんっ」

「だーれが子供で汚いだ~?とっくに成人してるっつてんだろうがっ!」


露骨に顔を歪ませるレリアナ。
子供達を追いかけ、喜怒哀楽をこんなにも上手く顔に出せるレリアナに時々羨ましいと思うことがある。


「……」
そっと片手で頬を抓る。
私の方が表情筋は備わってるはずでは??何故機能しない??そのような疑問がワイズの頭の中で飛び交うのであった。






「マリア?時間よー?」
「あ、お母さん!」
そんな中、中央の扉が開き一人の女性が顔を覗かせる。その女性に気づくや否やレリアナに追いかけられていた少女は傍へ駆け寄った。
「あらあら、図書館では静かにしなければいけないわよ?」
「ふふ、ナーサさんいいんですよ。子供は元気が1番ですから」
「まぁ、レリアナちゃん……。ほらマリア、貴女と変わらない年頃のレリアナちゃんだってこんなにしっかりしてるのよ?」
"変わらない年頃"というワードに若干引きつっているレリアナを傍観しながらワイズは紅茶を嗜む。

「えーっ、もう少しここに居たいーっ!」
「マリアったら……、でもそうねぇ私も本を借りて行こうと思っていたところだし……」
「そういう事であれば、本を探す間私がお嬢さんをお預かりしていますよ。ワイズ、手伝ってあげてね」
「ん」
「まぁ、助かるわぁ!」

気遣いのできるしっかりした女の子、きっとそう町の住人から思われているであろうレリアナ。彼女は世渡り上手なのだ。


「それではナーサさん、どんな本をお探しですか?以前も借りてらした料理本など?」
「それもいいのだけれど……、なんかこう、刺激?のあるものが読みたいと思っていて!いい本はあるかしら?」
「ふむ、……」
顎に手を添え考え込む。


だがそれもほんの一瞬。
その次にはパチンッ、と指を鳴らしていた。


それを合図にそれぞれの階から数冊の本が"宙を浮き"ワイズの元へと集まる。
ナーサと呼ばれた女性はその光景に目を見開くのであった。
慣れた手つきでその中から1冊の本を取り出し差し出す。その本の表紙には「聖女と百年戦争」とタイトルが綴られている。


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