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光道真術学院【マラナカン】編
十
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「……と思いきや、まだ続くんだなーこれが」
「???何言ってんだよ」
突如意味の分からない台詞を口にしたロニーに対して、アンドレアの首が傾く。
「いや、なんとなく……言わなければ駄目な(?)気がしたんだよね」
「???はぁ、なんだそれ。今日一日、大変すぎて頭おかしくなったんじゃないのか?」
二人が居るのは酒家豪腕。
逢う日(定期報告日)ではなかったのだが、本日の一件を聞きつけたアンドレアが、一刻も早く話を聞きたくて、ロニーを呼び出した。
「明日も早いんだよ、勘弁してくれ、マジで…」
溜息交じりのロニーが、アンドレアを非難する。
「まぁ、そう言うなって。色々と、こっちにも伝わってるんだよ今日の事は」
ワクワクという擬音が聞こえてきそうなほど、興味を前面に押し出すアンドレアを見、ロニーはさらに深いため息、しかし、ロニーも敢えて誘いを断らなかった理由がある。
「なら、話は早い。そっち(一桁騎士団)経由で、なんか情報は?」
これが、面倒くさい状況で呼び出しに応じた理由の一つであり、現状、一番手っ取り早く済む、と思われる手段だったが……
「え?無いよ」
即・答。
「あちゃー、無いかー……つーか軽く言うなよ!」
ロニーは片手でおでこをポンッと叩き、おどけた仕草でその答えを受け入れてから、反論の言葉を返す。ようはノリ突っ込みだ。
「おまえねぇ……だったら呼び出すなよ、マジで」
がっくりと肩を落とし、恨めしそうな顔つきで、アンドレアを睨んだ。
「まぁいいじゃないの。それより詳しく聞かせろよ」
ロニーの事情を、考慮する気はさらさらないようだ。
「どうせ、学院経由で話がいってんだろ?」
「まぁね……全く来てないわけじゃないんだけど、貴族絡みだから、上も慎重になってるのか……」
事の顛末に対して、期待感を隠そうともしないアンドレアは、自身の知る限りは話した――今度はそっちの番だぜというサムズアップ!
雰囲気に根負けしたロニーは、知る限り顛末を話し始める。
長い話の途中、空になった麦酒をピートに注文したりしながら、全ての説明を終えた。
「なるほどねぇ、思ったよりキナ臭い状況だな……」
ロニーは頷く。
「一応聞くけど、心当たりは?」
「無いと、言えると思うか?」
言った側も言われた側も、その言葉に俯き、暗くなった表情で「ですよねー」と一言。
「しかしな……もし、一桁騎士団時代の事なら、一番最近でも三年も前の事になるだろ。粘着質だなぁ」
「やめろよ。そんなこと考えるだけでも気が滅入る」
情報の少ない中、現段階で心当たりがあるとすれば、朝の日課時に感じる視線であろう――が、今の時点では誰にも伝える気はない。
ここら辺が、マクシミリアンに格好つけていると言われる所以なのだが……自覚はやはり薄い。
「お前の方で何か分かったら情報くれよ――じゃ、俺は今日はもう帰る」
席を立ち、帰り支度を始めるロニー。勘定はお前持ちだからなとアンドレアに一言。
アンドレアは分かったよと仕草で応える。その際、彼は何か思い出したのか、帰りかけのロニーを呼び止めた。
「おい!そういえば手紙は来たのか?」
席から数歩進んでいたロニーは振り向き、首を傾げる。
「手紙?」
「来てないのか?」
「誰からだよ、俺に手紙を出す知り合いなんて居ないし……昔からの知り合いで、今の住処を知ってんのお前くらいだろ」
確かにそれは正論である。しかしそれは、アンドレアが誰にも住所を教えていない前提、その時点で話しが食い違っている。アンドレアは途中で、その食い違いには気付いたのだが、教えない方が面白いと考え、黙る道を選ぶ。
「……来ていないなら、いいんだ。俺の勘違いだよ」
「変なこと言うなよ気持ち悪い、じゃあな」
出口に向き直り歩き出す、その背中にアンドレアの声が刺さる。
「がんばれよ、奉仕活動」
今度は振り返ることもなく片手を挙げて出口に向かい、途中でピートに「御馳走様」と声をかけ店から出ていった。
「がんばれよ、相棒」
にやにやと笑い顔を抑えられないアンドレアは、少しだけ残っていた麦酒を空にした。
「(……しかし、住所教えてやったのに、アイツ手紙出してねーのかよ。まぁ、いいか。いずれわかる事なんだし)」
その後ピートに勘定を頼むとアンドレアも店を後にする。
【ロニーの】長いような短いような一日が、これにて本当に終わりを迎えた。
「???何言ってんだよ」
突如意味の分からない台詞を口にしたロニーに対して、アンドレアの首が傾く。
「いや、なんとなく……言わなければ駄目な(?)気がしたんだよね」
「???はぁ、なんだそれ。今日一日、大変すぎて頭おかしくなったんじゃないのか?」
二人が居るのは酒家豪腕。
逢う日(定期報告日)ではなかったのだが、本日の一件を聞きつけたアンドレアが、一刻も早く話を聞きたくて、ロニーを呼び出した。
「明日も早いんだよ、勘弁してくれ、マジで…」
溜息交じりのロニーが、アンドレアを非難する。
「まぁ、そう言うなって。色々と、こっちにも伝わってるんだよ今日の事は」
ワクワクという擬音が聞こえてきそうなほど、興味を前面に押し出すアンドレアを見、ロニーはさらに深いため息、しかし、ロニーも敢えて誘いを断らなかった理由がある。
「なら、話は早い。そっち(一桁騎士団)経由で、なんか情報は?」
これが、面倒くさい状況で呼び出しに応じた理由の一つであり、現状、一番手っ取り早く済む、と思われる手段だったが……
「え?無いよ」
即・答。
「あちゃー、無いかー……つーか軽く言うなよ!」
ロニーは片手でおでこをポンッと叩き、おどけた仕草でその答えを受け入れてから、反論の言葉を返す。ようはノリ突っ込みだ。
「おまえねぇ……だったら呼び出すなよ、マジで」
がっくりと肩を落とし、恨めしそうな顔つきで、アンドレアを睨んだ。
「まぁいいじゃないの。それより詳しく聞かせろよ」
ロニーの事情を、考慮する気はさらさらないようだ。
「どうせ、学院経由で話がいってんだろ?」
「まぁね……全く来てないわけじゃないんだけど、貴族絡みだから、上も慎重になってるのか……」
事の顛末に対して、期待感を隠そうともしないアンドレアは、自身の知る限りは話した――今度はそっちの番だぜというサムズアップ!
雰囲気に根負けしたロニーは、知る限り顛末を話し始める。
長い話の途中、空になった麦酒をピートに注文したりしながら、全ての説明を終えた。
「なるほどねぇ、思ったよりキナ臭い状況だな……」
ロニーは頷く。
「一応聞くけど、心当たりは?」
「無いと、言えると思うか?」
言った側も言われた側も、その言葉に俯き、暗くなった表情で「ですよねー」と一言。
「しかしな……もし、一桁騎士団時代の事なら、一番最近でも三年も前の事になるだろ。粘着質だなぁ」
「やめろよ。そんなこと考えるだけでも気が滅入る」
情報の少ない中、現段階で心当たりがあるとすれば、朝の日課時に感じる視線であろう――が、今の時点では誰にも伝える気はない。
ここら辺が、マクシミリアンに格好つけていると言われる所以なのだが……自覚はやはり薄い。
「お前の方で何か分かったら情報くれよ――じゃ、俺は今日はもう帰る」
席を立ち、帰り支度を始めるロニー。勘定はお前持ちだからなとアンドレアに一言。
アンドレアは分かったよと仕草で応える。その際、彼は何か思い出したのか、帰りかけのロニーを呼び止めた。
「おい!そういえば手紙は来たのか?」
席から数歩進んでいたロニーは振り向き、首を傾げる。
「手紙?」
「来てないのか?」
「誰からだよ、俺に手紙を出す知り合いなんて居ないし……昔からの知り合いで、今の住処を知ってんのお前くらいだろ」
確かにそれは正論である。しかしそれは、アンドレアが誰にも住所を教えていない前提、その時点で話しが食い違っている。アンドレアは途中で、その食い違いには気付いたのだが、教えない方が面白いと考え、黙る道を選ぶ。
「……来ていないなら、いいんだ。俺の勘違いだよ」
「変なこと言うなよ気持ち悪い、じゃあな」
出口に向き直り歩き出す、その背中にアンドレアの声が刺さる。
「がんばれよ、奉仕活動」
今度は振り返ることもなく片手を挙げて出口に向かい、途中でピートに「御馳走様」と声をかけ店から出ていった。
「がんばれよ、相棒」
にやにやと笑い顔を抑えられないアンドレアは、少しだけ残っていた麦酒を空にした。
「(……しかし、住所教えてやったのに、アイツ手紙出してねーのかよ。まぁ、いいか。いずれわかる事なんだし)」
その後ピートに勘定を頼むとアンドレアも店を後にする。
【ロニーの】長いような短いような一日が、これにて本当に終わりを迎えた。
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