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光道真術学院【マラナカン】編
二十六
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「甘ったれるんじゃないよ、私は絶対にそんなこと許可しませんからね!」
朝一から学院長はご立腹だった……だが対面の男は怯まない。
「俺一人ならいい、だけど事が生徒にも及んでるんだぞ、学院の体裁なんてどうでもいいだろうが!」
「体裁?なめるんじゃないよガキが!学院を、そしてこの私を見くびらないでもらいたいね」
「見くびるも何も実際に二回もやられてんだろうが、このままじゃ次は死人だぞ!」
「……」
突然の沈黙……学院長が浮べた般若のような表情にロニーはゴクリと唾をのみ込む。
「三度はないわよ、その為に私が戻ってきたんだから……」
そうなのだ、学院長は急遽同行することになった中・高等部の合宿途中に、これまた急遽予定を変更し1日で学院に戻ってきたのである。
初日のドルマンナ・バスカマルの一件時には女王ジョルカ・パッロに呼び出され不在、二日目のタナシー・サラーヴァントの一件時には合宿に同行して不在、つまり学院長が不在時に狙われたのは明らかであった。
それもそのはず、もし彼女が学院に在中していれば事は起きていなかったであろう、彼女の能力はそれほど絶大であった……
そう言われてしまうとロニーには返す言葉が見つからない、彼女の能力に関して疑いの余地はないのだから。
「他に用がないんだったら、さっさとマクシミリアンの所に行きな、今日の打合せはまだなんでしょう」
ロニーは仕方なく学院長室を退出していった。
「(私が学院に居ない情報を掴んでいた?……ならば昨日に関してはマクシミリアンや他の先生だけじゃなく、アンドレアも来校するというのは分かっていた筈……一日目も二日目も雑な仕事なのよね……攻撃ではなく何かを試した?……標的はあの馬鹿、で何を試すというのかしら……三年前のクオリティジャッジ、まだ私の知らない何かがあるというの?……んー考えても仕方ないか、私がここにいる以上は次はないのだから……あとでゲルトちゃんを問い詰めれば済むことだし……」
学院長は考えるのを辞め、机の上のお茶をひとすすりするのであった。
⦅⦆⦅⦆⦅⦆
「ミリー、おい、ミリー。おーい」
机に肘をつき、両手に顎をのせた状態のマクシミリアンはここではないどこかに意識を飛ばしていた、つまり上の空というやつだ。
先ほどから何度もマクシミリアンの目の前でロニーは手を上下させているが、一向に気づく気配がない。
仕方がないので肉体的接触を試みる。
拳をその頭頂部にコツンと軽くあてる――次の瞬間ロニーの頬は赤く腫れることになった。
ボーっとしていた筈なのに拳が触れると同時にカウンターで平手打ちが飛んできたのだ、あまりに想定外の攻撃に避けるすべもなく喰らう。
「なんだよ、気づいてたならなんか言えよ!」
「え?なにがよ……」
「無意識かよ、より最悪だな!」
「……そう」
そう言ながらため息をつき、また一人別の世界に行ってしまおうとする彼女にロニーは待ったをかける。
「どうしたんだよ、お前らしくもない……」
基本、活動的な部類に入るマクシミリアンがこれほど元気がないのは珍しい。
少しだけ心配したロニーが彼女に尋ねる。
聞けば昨日の帰宅後、急遽合宿より帰宅した学院長(この場合で言えばマクシミリアンの祖母ともいえるが)に散々お説教されたという。
学院長は自身が留守の間、孫でもあり実力的にも申し分のないマクシミリアンを代役として立てた。
一昨日に問題が起きたばかりの学院を任せるのは心許なかったが、マクシミリアンの成長も願い、苦渋の決断ではあるが代役を任せたのだ……しかし結果、問題は起きてしまった。
だが彼女の言うお説教の争点はそこではないとのことだった。
百歩譲って問題が起きてしまったことは仕方ない、アンドレアのおかげでもあるが、その後の対応もつつがなくこなした、これは良い。
説明を求められたマクシミリアンは反省しつつも誠実な対応で切り抜けたと伝えた……そう、ここが問題だった。
光道真術学院【マラナカン】は学校なのだ、確かに騎士団【キングダムアーミー】の下部組織という面も持たないとはいえないが、まだ未成熟な若者が集い切磋琢磨する学び舎という事を学院長は大事にしていた。
彼女はそれを失念し伝え忘れた。
開口一番伝えなければならなかった出来事を飛ばす、それが学院長の逆鱗に触れた。
あとはこのざまで、相当こってりと絞られたのであろう、ご愁傷様である。
……マクシミリアンはその日一日元気がなかったが、本日の学院は何の問題も起きず、つつがなく下校の時間を迎えたのであった。
朝一から学院長はご立腹だった……だが対面の男は怯まない。
「俺一人ならいい、だけど事が生徒にも及んでるんだぞ、学院の体裁なんてどうでもいいだろうが!」
「体裁?なめるんじゃないよガキが!学院を、そしてこの私を見くびらないでもらいたいね」
「見くびるも何も実際に二回もやられてんだろうが、このままじゃ次は死人だぞ!」
「……」
突然の沈黙……学院長が浮べた般若のような表情にロニーはゴクリと唾をのみ込む。
「三度はないわよ、その為に私が戻ってきたんだから……」
そうなのだ、学院長は急遽同行することになった中・高等部の合宿途中に、これまた急遽予定を変更し1日で学院に戻ってきたのである。
初日のドルマンナ・バスカマルの一件時には女王ジョルカ・パッロに呼び出され不在、二日目のタナシー・サラーヴァントの一件時には合宿に同行して不在、つまり学院長が不在時に狙われたのは明らかであった。
それもそのはず、もし彼女が学院に在中していれば事は起きていなかったであろう、彼女の能力はそれほど絶大であった……
そう言われてしまうとロニーには返す言葉が見つからない、彼女の能力に関して疑いの余地はないのだから。
「他に用がないんだったら、さっさとマクシミリアンの所に行きな、今日の打合せはまだなんでしょう」
ロニーは仕方なく学院長室を退出していった。
「(私が学院に居ない情報を掴んでいた?……ならば昨日に関してはマクシミリアンや他の先生だけじゃなく、アンドレアも来校するというのは分かっていた筈……一日目も二日目も雑な仕事なのよね……攻撃ではなく何かを試した?……標的はあの馬鹿、で何を試すというのかしら……三年前のクオリティジャッジ、まだ私の知らない何かがあるというの?……んー考えても仕方ないか、私がここにいる以上は次はないのだから……あとでゲルトちゃんを問い詰めれば済むことだし……」
学院長は考えるのを辞め、机の上のお茶をひとすすりするのであった。
⦅⦆⦅⦆⦅⦆
「ミリー、おい、ミリー。おーい」
机に肘をつき、両手に顎をのせた状態のマクシミリアンはここではないどこかに意識を飛ばしていた、つまり上の空というやつだ。
先ほどから何度もマクシミリアンの目の前でロニーは手を上下させているが、一向に気づく気配がない。
仕方がないので肉体的接触を試みる。
拳をその頭頂部にコツンと軽くあてる――次の瞬間ロニーの頬は赤く腫れることになった。
ボーっとしていた筈なのに拳が触れると同時にカウンターで平手打ちが飛んできたのだ、あまりに想定外の攻撃に避けるすべもなく喰らう。
「なんだよ、気づいてたならなんか言えよ!」
「え?なにがよ……」
「無意識かよ、より最悪だな!」
「……そう」
そう言ながらため息をつき、また一人別の世界に行ってしまおうとする彼女にロニーは待ったをかける。
「どうしたんだよ、お前らしくもない……」
基本、活動的な部類に入るマクシミリアンがこれほど元気がないのは珍しい。
少しだけ心配したロニーが彼女に尋ねる。
聞けば昨日の帰宅後、急遽合宿より帰宅した学院長(この場合で言えばマクシミリアンの祖母ともいえるが)に散々お説教されたという。
学院長は自身が留守の間、孫でもあり実力的にも申し分のないマクシミリアンを代役として立てた。
一昨日に問題が起きたばかりの学院を任せるのは心許なかったが、マクシミリアンの成長も願い、苦渋の決断ではあるが代役を任せたのだ……しかし結果、問題は起きてしまった。
だが彼女の言うお説教の争点はそこではないとのことだった。
百歩譲って問題が起きてしまったことは仕方ない、アンドレアのおかげでもあるが、その後の対応もつつがなくこなした、これは良い。
説明を求められたマクシミリアンは反省しつつも誠実な対応で切り抜けたと伝えた……そう、ここが問題だった。
光道真術学院【マラナカン】は学校なのだ、確かに騎士団【キングダムアーミー】の下部組織という面も持たないとはいえないが、まだ未成熟な若者が集い切磋琢磨する学び舎という事を学院長は大事にしていた。
彼女はそれを失念し伝え忘れた。
開口一番伝えなければならなかった出来事を飛ばす、それが学院長の逆鱗に触れた。
あとはこのざまで、相当こってりと絞られたのであろう、ご愁傷様である。
……マクシミリアンはその日一日元気がなかったが、本日の学院は何の問題も起きず、つつがなく下校の時間を迎えたのであった。
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