とがびとびより、ロニーの物語

ヒトヤスミ

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光道真術学院【マラナカン】編

二十八

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 朝から王都は、右へ左への大騒ぎ。
 今日より一ヵ月、女王陛下の外遊(一桁騎士団・ナンバーズを伴い)が始まる。
 城門前の広場には、既に沢山の人だかり。
 我よ我よと押し寄せる人の波が、出陣式に花を添える。
 城門が開かれ、王国の旗を掲げた旗手の登場。その後、精悍な勇猛達が続々と姿を現し、一糸乱れぬ隊列に、民衆の大歓声が自然と沸き起こる。

「アクイース万歳、ナンバーズ万歳、女王陛下万歳」


 ロニーはマラナカンの屋上から、その光景を眺めていた。
 彼の隣には二人の少女、彼女らの目は、その光景にくぎ付けだ。
「そんなに面白いもんかねぇ……」
 聞き捨てならない呟きに、アリスが反論。
「面白いとか面白くないとかじゃないでしょ!この光景に何も思わないの?」
「いや、特に……」
「だから駄目なのよアンタは!」
 果たして何を思えばいいのか、皆目見当もつかないロニーであった。
    もう一人の少女であるミスティも、光景に釘付けになっている。
 仕方が無いので、彼にとっては懐かしき面々が、熱烈な声援を受けている様を、大人しく見ている事と決め込む。
 ちなみに本日の授業は、この催しがある為、時間がずらされている。
 ほぼ全ての生徒達は、現地に足を運び、この熱狂を生み出す歯車の一つとなっているであろう。

「つーか、お前らは行かなくてよかったのかよ?そのために時間がずらされたんだし」
「私は行きたかったんだけどねー。なにせ、ミスティが人混み苦手なのよね」
「あー、なるほど」
「…ごめん…アリスちゃん…私に…付き…合わせて…」

 ミスティの外見は、まごうことなき美少女であり、ついでに言うならば立派な双丘の持ち主なのだ。
 もともとの性格もあろうが、人混みで嫌な思いをしたことが一度や二度ではないのだろう。
 そうでなければ、アリスに強引にでも連れていかれた筈だ。

「それじゃ、しょうがないな」
「アンタ、今エロいこと考えてたでしょ?」
「ばっ、考えてねーわ。考えてねーわ」

   ロニーのテンパリ様に、「あー、コイツ、考えてたな~」と思うアリスと、頬を染めるミスティであった。

 ひと際大きな歓声が上がる。

「…女王…陛下…出て…」
「あー、本当だ!ここからじゃ顔がよく見えないのが悔しいわね」
「…私…持って…きた…アリスちゃん…使って…」

 ミスティは、自身の鞄から双眼鏡を取り出し、アリスに渡す。

「流石、ミスティ。用意良いわね!」

 ミスティから双眼鏡を受け取ると、早速とばかりに双眼鏡を覗く。

「えーと、女王様、女王様っと。あ、居た居たー……うっわー美人、クッソ美人だなこりゃ」
「…アリス…ちゃん…私も…」

 アリスの肩をツンツンと叩き、急かすミスティ。
 彼女が焦る様子を他人に見せるのは珍しい。それほど女王という肩書に求心力があるのか、もしくは、ロニーへの警戒感がほぐれ、自然な仕草を表現できるようになったのか、現時点では不明である。
 双眼鏡を手渡され、すぐさまのぞき込むミスティ。

「…うわ…綺麗…」

 アリスが肘でロニーをつつき、リアクションを求める。

「なんだよ?」
「噂なんだけど、アンタ女王様と仲いいんでしょ?逢わせてよ」

 渋い顔を浮べるロニー。

「無理に決まってんだろ、そんなに会いたいならミリーに……マクシミリアン先生に頼むこったな。あいつらは親友と言えるくらい仲いいから」
「……そう残念ね。まぁ、それは置いて置くとして。何気にアンタの人脈凄くない?壱番隊副隊長にマクシミリアン先生、女王陛下、あと学院長にもフランクに話すし」
「アンドレアは同郷、後は、偶々だよ」
「何そのたまたま。つーか、聞きたかったんだけど。たまたまで同学年に一桁騎士団が五人も輩出する?」

 そうなのだ、同学年に一人でも一桁騎士団に入団できれば稀という状況の中、ロニーの世代は彼を含め五人の一桁騎士団を輩出している。
 それに加え、入団可能であったが辞退したマクシミリアンや、入団資格は無いが、能力的には申し分ないジョルカ・パッロ(現女王)を含めると七人に上る。まさに破格の人数。
 これまでの同世代最高人数は三人。そんな世代が二、三回あったのみであり、いかに、彼の世代が異質で奇跡的であった事か物語る。

「……そんなの俺の知ったこっちゃねえよ」
「でもアンタ、その世代で一番凄かったんでしょ?」
「買いかぶりすぎさ……それに、人には言われたくない事もあるんだぜ」
「良く解らないわね、褒めてるのに……」
「…あ…あの…仲良く…」

 少しばかり熱くなり始めた二人の会話に、心配しながら割って入るミスティ。聞けば、出陣式もあらかた終了したらしい。

「もう終わったのか?」
「…はい…良い所…の…大部分…は…」

「そうか、じゃ戻るかな。まぁ、まだ時間はあるけど、授業には遅れんなよ。今日は昨日できなかった、お前らが楽しみにしている光道力量検査だからな。また後でな」

 そう言い、ロニーは屋上を後にする。

「なによ、良くわかんないわね、あの男は」

「…でも…悪い…人じゃ…ない…あの時…だって…自分…盾にして…アリス…守って…くれた…私は…好き…」

    二人が隠し持つ秘密で、タナシー事件の救災害時、彼を騙したと言う、少しばかりの罪悪感を抱く二人だが、それを抜きにしても、あの時の彼の行動は賞賛に値した。

「え?ミスティ、アンタってあんなのが好みなの、センス悪いわー」

 自分の発言の意味を間違った方向に捉えられたミスティは必死に首を振る。

「…意味…が…違う…」

「本当に違うの?」

 ポカスカとアリスを叩くミスティ、しばらく二人は屋上で戯れあっていたのであった。
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