ポテト魔王〜転生したらポテトで無双する最強の存在になりました〜

みなかな

文字の大きさ
3 / 4

第3話 最強のガキの弟子になりました。

しおりを挟む
「誰が魔物じゃ!」

僕は今、地面につきそうなほど長い青い髪をしたガキに怒鳴られている。

先ほどまで結界に張り付いていたその姿を見て、てっきり魔物だと思ったけど、どうやらエルフだったらしい。

ガキ(エルフ)の話によると、この辺りで魔物が大量発生していて、その討伐をしていたらしい。特に逃げ足の速いベアウルフを追いかけていたが、僕の張った結界に突っ込んで気絶したとのこと。

しかも、その結界が辺境にあるにもかかわらず見事な出来だったらしい。だから何者が張ったのか知りたくて、僕に話を聞こうと結界に近づいたら、自分もぶつかってしまったそうだ。

「自業自得じゃない?」

僕が冷たく返すと、ガキは顔を真っ赤にしてさらに怒鳴り始めた。

「自業自得じゃないわい!ちゃんと人間以外も通れるようにしておけ!」

「この街には人間しかいないんだから、そんなこと想定してないよ。それに、畑に勝手に入ろうとした時点で、だめでしょ。」

なんならこの街の人間は、そんなことしないと決めて人間は通れるようにしてる僕は優しいだろ。

ガキは不満そうに肩をすくめ、結界を睨みつけた。しばらく結界を眺めていたが、やがて再び僕に向き直り、真剣な顔つきで尋ねてきた。

「で、この結界を張ったのはお主か?」

「そうだよ。何でそんなに何回も聞くのさ?」

さっきから同じ質問を繰り返しているガキは、僕の答えを聞くたびに神妙な顔で「そうか」と呟いている。そして今度もまた、真剣な表情で考え込んでいた。

「お主、この結界の効果は外敵の防御、撃退、そして気温と湿度の調整か?」

「そうだよ。それに、空気の浄化や日光の調整もできる。」

「ほほう…」

またしても神妙な顔。えっ…なにこの空気。早く帰りたいんだけど。

「最後の質問じゃ。お主に結界魔法を教えたのは誰じゃ?」

やっと終わるかとホッとした僕は、何気なく答えた。だが僕はこの回答をしたことにすぐ後悔することになる。

「独学だよ。」

その瞬間、ガキの目が輝いた。

「独学…だと?」

嫌な予感がした。しかし、もう遅かった。次の瞬間、ガキは勢いよく僕に詰め寄ってきた。

「お主、わしの弟子になれ!」

「絶対に嫌です。」

その後2時間が経過した。その間ガキは興奮して、身振り手振りを交えて僕に「凄さ」を伝え続けた。挙げ句の果てに「弟子になれ」としつこく言い続けている。

「なぜじゃ!こんなに凄い魔法を扱えているのに、なぜ魔法に消極的なんじゃ!?」

「新魔法っていうか、ただ単にこれまで誰も試してなかっただけだろ?」

「そんなはずあるか!魔法は常に進化し続けている!その分野は多岐にわたるが、この効果を成功させた者はおらんのじゃ!」

「…そうですか。じゃあ、僕はこれで。」

僕はそっと立ち去ろうとしたが、ガキがすかさず僕の腕を掴んできた。

「逃がさんぞ!お主、弟子にならんか!」

「離せ!僕は畑が整えばそれでいいんだ。ガキに教えられて学ぶことなんてないだろ!」

「ガキじゃないわい!」

ガキは突然姿勢を正し、威厳ある声で言い放った。

「わしはこの世界で最も大人で! 偉大で! 最強の魔術師!魔導王ルミネア・グレイスじゃ!」

その瞬間、ガキは大げさに手を広げて自信満々な笑顔を浮かべた。そして鳥のさえずりや風の音も止まったかのように、周囲の空気は一瞬シーンと静まり返った。

「…あっ、そう。」

「もしかして、わしのことを知らんのか!?魔導王じゃぞ!」

ガキは胸を張って叫んでいるが、僕にとってはどうでもいい話だ。早く帰ってくれないかな…。

ふと、陽がすっかり昇っているのを見て、昼時だということに気づいた。これは使える。

「そろそろお昼ご飯だから、僕は帰るよ。じゃ」

そう言って、話を終わらせようと僕は一歩引いてその場を離れた。

「おい!待て!」ガキが叫んできたが、僕は無視して歩き続けた。

やっと家の前に着いた。これで一安心、と思った瞬間…

「なんでついてきてるの?」

何故かガキがぴったり後ろについてきていた。

「わしもお腹が減ったのじゃ。」

「…」

僕はじっとガキを見つめた。すると、ガキは慌てて袋に手を入れ、金貨を見せびらかしてきた。

「もちろん金は払うぞ!どうじゃ?」

僕は呆れながらそのやり取りを見ていると、タイミングよく扉が開き、母が出てきた。

「エルトちゃん、おかえりなさい!今日のお昼ご飯はキャベツとお肉の…」

母の言葉が急に途切れた。目はガキに釘付けになっていた。

「あなたは…まさか、ルミネア様ですか?」

「そうじゃ。」

その瞬間、母は驚きのあまり、腰が抜けてしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「美味しいのう、この野菜!わしが今まで食べたもので一番かもしれん!」

ルミネアが口にしたキャベツを賞賛すると、母はさらに驚いた表情を浮かべた。

「まぁ!それを嬉しいですわ!このお野菜は、息子のエルトちゃんが育てたんですよ!」

「ほほう、すごいのお主…エルト。」

今、食卓には母の横でガキが飯を食べているどうしてこうなった・・・

発端は母が意識を取り戻した後、このガキが誰なのかを熱弁し始めたことにある。

「エルトちゃん、この方は世界を救った伝説の勇者パーティの一員、魔導王ルミネア・グレイス様よ!まさか会えるなんて! お母さん感動しちゃった!」

母の目は尊敬の色に染まっている。

「本当にあの子供が?」

すると、父が口を開き、真剣な表情で僕に向き直った。

「こらエルト。この方を子供呼ばわりするんじゃない。本当に偉大な方なんだぞ。」

「そうなの?」

父の鋭い目が僕に向けられた後、彼はゆっくりと話し始めた。

「私も戦場で何度かルミネア様を目にしたことがある。その時の彼女の魔法は…まさに桁外れだった。数えきれない魔物を瞬時に焼き尽くし、無数の兵士たちを救ったんだ。」

父の声には、当時の戦場の恐怖と尊敬が混ざり合っていた。彼は目を伏せ、一瞬その記憶に浸っていたようだった。

このやり取りの後、ルミネアのご飯が食べたいという願いに母が快く受け入れてこの状況になっている。

ルミネアは食事を進めながら、終始ご機嫌な様子だった。母も笑顔を浮かべ、家族団らんのひとときが続いた。

やがて食事が終わり、テーブルの片付けが始まる頃、母はルミネアに尋ねたいことを思い出したように、少し緊張した表情を浮かべて口を開いた。

「それで、先ほどおっしゃっていたことですが…エルトちゃんを弟子に取るというのは本当ですか?」

母の声には、期待と不安が入り混じっていた。彼女は両手を軽く握りしめながら、ルミネアの答えを待っていた。

ルミネアは少し間を置き、しっかりと母の目を見据えて答えた。

「もちろんじゃ。わしはお主の息子、エルトには素晴らしい才能があると思っておる。この結界を見て、それは確信した。」

その言葉に、母の表情は一瞬にして明るくなり、父も静かに頷いていた。彼らは二人とも、僕を見つめる目に期待と喜びを浮かべている。

「いや…僕は弟子にはなりたく…」

そう言おうとした瞬間、ルミネアが急に腰に携えていた袋を取り出した。

「そうじゃエルト、もしワシの弟子になってくれたら、これをやろう。」

彼女が取り出したのは、小さな種だった。僕は一瞬、意味が分からなかった。種?でも、彼女が続けた言葉がその答えを明らかにした。

「これは東方の地方で育てられている『自然薯』という野菜の種じゃ。お主の畑にはどうじゃ?」

その瞬間、僕の目が輝いた。手は勝手に動いて、種を掴んでいた。

「それを先に言ってくれよ。」

こうして、僕は魔道王ルミネア・グレイスの弟子になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...