終末世界と黄昏の庭園

ありすてぃあ

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第一章

『少女と少年』

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 死臭がする腐った大地を踏みしめる。倒壊した建物、そこに住んでいたであろう人間の死体。昔では異常であったその全てに慣れてしまいつつある。
 E-187、通称『カイブリアン』によって汚染した中でも私、イディアは母のお陰で恐らく17歳くらいまで生き伸びることが出来ている。文明の崩壊により誕生日など数えることもできない。母は私や旅の仲間を守るため、カイブリアンの前に立ちそのまま死んだ。
 カイブリアンはあまり人を襲わないものの、大地を汚染する毒性、繁殖期に人間を食べる習性があり、運悪く繁殖期に遭遇した為、母は自ら犠牲になった。私はショックのあまりその瞬間をあまり覚えていない。ただ恋人のエラスティスに手を引かれ呆然としながらその場を去った記憶しかないのだ。
 親不孝な娘かもしれない。それでも皆が生きていくためにと私たちを遺してくれた母に感謝している。
 旅の仲間は途中の集落で皆暮らすことにしたが、私はどうしても噂に聞く『黄昏の楽園』に行くことを諦めることができなかった。母がよく「黄昏の楽園に行けば、少しは飢えのない平穏な暮らしができるかもしれない」と口にし、旅の終着は黄昏の楽園にしようと親子で決めていたからである。
 一人旅は無理があるため皆に反対されたが、恋人であるエラスティスだけ優しい顔で承諾し一緒に行くと言ってくれた。
 エラスティスはよく能天気と言われるくらい、この黄昏の世界で優しく柔らかな表情を浮かべていることが多い。彼の人柄を表す、とても柔和な顔をしている。彼のその優しげな瞳は海のように深く、綿毛のようにふわふわとしたグレーの髪を持っている。頑固な性格の私も、彼のへにゃっとした笑顔を見るといつも絆されてしまう。それはいつも私の心の助けになっていた。
 ほとんど不毛になってしまった大地では、風景の変わり映えもなく、噂とコンパスを頼りに進むしかない。それが正解かもわからぬまま、一歩ずつ進んでいくしかないのだ。以前の仲間にもらった食料も限りある。
 この世界で食料と水は貴重なものである。ほとんどは崩壊前の世界でつくられたもののあまりである。腐敗していなければ食べれるものと判断する。水はわずかにしか汚染されていない場所の水辺からくんで大事に飲んでいく。
 日の出ているうちは歩き、夜は野営をする。そうした生活を何度も繰り返す中、ついに私たちは『黄昏の楽園』と呼ばれるであろう、遊園地にたどりついた。
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