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一の湯
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「あっ……あった! 赤城旅館!!」
ずるずると重い荷物を引きずって辿り着いたのは、鄙びた温泉地のさらに奥、山の麓にある小さな小さな温泉旅館だった。
東京から新幹線とローカル線と路線バスを乗り継いで約四時間、体はくたくたではあるが、鼻を掠める微かな硫黄の匂いが秋奈の心を少し癒した。
「すみませーん、誰かいませんかー!?」
お目当ての旅館に足を踏み入れたものの、出迎える人はない。"赤城旅館"と印刷された安っぽいスリッパが一組だけ並べてあったから、秋奈はそれを履いてロビーを見回した。
古びた外観からしてあまり流行りの旅館ではないだろうと予想はしていたけれど、やはり客は秋奈一人のようだ。しかも今日は連休でもなければ土日ですらない、平日の水曜日。ほとんどの人たちはお仕事の真っ最中だろう。
本当は秋奈にも仕事の予定が入っていたはずなのだが、最近事務所に入ってきたばかりの新人にまんまと奪われてしまった。地方企業のちょっとした広告ポスターの撮影とはいえ、久々に水着指定だったから念入りに体を仕上げてきたというのに、この仕打ちはあんまりではないだろうか。
話が逸れたが、とにかくそんな悔しいことがあったので秋奈は手っ取り早く癒されたかったのだ。急に暇が出来たわけだし、近所の猫カフェで一日中モフモフを味わうか、一人カラオケで喉が潰れるまで歌うか、海辺に行って意味もなく叫んでみるか。
そんなことを考えながら家路に着いていつものようにポストを開けたら、見慣れない白い封筒が一通入っていた。差出人の名前も無ければ消印すら押していなかったけれど、秋奈は細かいことを気にしない性質だ。何だろう、と訝しみながらも、部屋に戻ってすぐその封筒をびりびりと開けた。
雨宮 秋奈 様
ご当選おめでとうございます。
貴女様を、燕山温泉 赤城旅館にご招待いたします。
封筒には、そう書かれた薄い紙一枚と、旅館の地図が載った宿泊券が一枚同封されていた。
これ幸いと、秋奈は早速着替えと化粧道具をバッグに詰め込んで旅行の準備を始めた。ご当選ということは、いつか出した何かの懸賞が当たったのだろう。暇つぶしに何度かスマホで懸賞に応募した覚えがあったから、秋奈は深く考えずにうきうきとその旅館までの経路を調べて眠りについた。そして今朝、朝一番の新幹線に乗ってこの温泉地までやってきたというわけである。
「……それにしても、誰も出てこないなんておかしいな。本当にこの旅館やってる?」
いくら声を掛けても人っ子ひとり出てこないので、秋奈はロビーに置かれていたソファにどかっと腰を下ろした。
少し埃くさいし、壁紙はところどころ剥がれかかっているし、今は昼間だからいいけれど夜中になったらそこそこホラーな雰囲気になりそうだ。一人旅だし、今夜は温泉に浸かってご飯を食べたら即寝てしまおう。ボロいのは我慢するから、料理や温泉の質が良いことを願うしかない。
もしかしたらチェックインの時間がまだなのかな、と秋奈が諦めてスマホゲームを起動したとき、廊下の方からパタパタという足音が聞こえてきた。ソファに座ったままそちらに目をやると、小走りでやってきたのは紺地の着物を身に纏い、野暮ったい黒縁眼鏡をかけた青年だった。
「え……あ、あきな、ちゃん!?」
「へっ?」
どうもこんにちはと挨拶する前に、その青年は目を見開いたまま秋奈の名を呼んだ。しかも、ちゃん付けで。
「えーっと……宿泊券が届いたので、今日泊まりたいんですけど……ていうか、どこかでお会いしましたっけ?」
「えっ、あ、しゅ、宿泊券? ああっ、あれのことかな!? まっ、まさか本当に届けたなんて、しかも、秋奈ちゃんが本当に来てくれるなんて! ああどうしようどうしよう、もっと良い格好しておけばよかった、はあどうしよう!?」
「ちょ……っ、ちょっと落ち着いてください!」
目にかかるほど長い前髪を振り乱して、青年はぶつぶつとよく分からないことを言っている。あたふたしてばかりで話にならないので、秋奈は少し語気を強めて彼に言った。それが効いたのか、青年はぴたりと動きを止めて、それから何度も深呼吸を繰り返して慎重に口を開いた。
「……よ、ようこそ、お越しいただきました。当旅館の主である、か、要と申します」
畏まってそう挨拶したかと思えば、要と名乗ったその主人は秋奈の目をじっと見つめて、どういうわけかぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「はっ!? え、ど、どうしました!?」
「ぶぇ……すっ、すびばせん、わたくし、その……あ、秋奈ちゃんの、大ファンでして……っ!」
「え……えええっ!?」
今度は秋奈が目を見開く番だった。どうも様子がおかしいと思えば、この旅館の主人はなんと売れないグラビアアイドルである秋奈のファンだと言うではないか。
その衝撃の告白にぱくぱくと口を開け閉めするだけで何も言えずにいると、要は眼鏡を外して雑に目元を拭ってから、目に涙を溜めたままにっこりと微笑んだ。
「わ、私、今まで生きてきてこれほど嬉しいことはありません。早々にお恥ずかしいところをお見せしてしまいましたが、誠心誠意おもてなし致しますので、どうかお許しください」
そう言って、要は床につきそうなほど深々と頭を下げた。
「さあ、どうぞ。こちらがお部屋でございます」
「ありがとうございます! わあっ、窓から滝が見える!」
「はい、当館の自慢の一つです。あ、窓を開けても構わないのですが、虫が入ってくるので気をつけてくださいね」
「はーい!」
窓際に駆け寄って外を見ながら、秋奈は上機嫌で返事をした。もうすっかり落ち着きを取り戻した要は、そんな秋奈を微笑ましく見つめながら急須にお湯を注いでいる。
「それにしても、すごい偶然ですよねぇ。宿泊券が当たったことだけでもすごいのに、まさかそこのご主人が私のファンだなんて!」
「は、はあ、本当ですね! 私も、なんだか夢みたいで……」
「私みたいなグラドル、マイナーもいいとこでしょう? ファンだって言ってくれる人に会うのも初めてなんだから! こんな偶然もあるんですねぇ」
ええ、はい、と曖昧に相槌を打つ要に首を傾げながらも、湯呑みを差し出されると秋奈は嬉しそうにそれを手に取った。程よく熱いお茶を一口飲んで、それから正座している要に質問を投げかける。
「あの、いつから私のこと知ってくれてるんですか?」
「え、ええっと、もう三年も前になりますか。お客様が置いていかれた雑誌に、秋奈ちゃ……雨宮様が写っていらして」
「あ、秋奈でいいですよ? 秋奈ちゃんって呼ばれる方が嬉しいですし」
「い、いえ、そういうわけにはいきません! 今日は、その、お客様ですので!」
「気にしなくていいのになぁ。ていうか三年前って、デビューしたばっかりの頃ですね! その雑誌、もしかしたら初めて撮ったグラビアかも」
ずずっとお茶を啜りながら昔のことを思い出して、あの頃はもっと肌が綺麗だったのにな、なんて一丁前に感傷に浸る。すぐさま要が「今でも変わらずお綺麗です」と小声で返してくれるから、ちょっとだけ良い気分になった。
真面目で人の良さそうな要に、秋奈はすっかり心を許していた。決してイケメンではないけれど、古くさい眼鏡を替えて前髪を切ったらもっと格好良く見えるだろうに、もったいない。そんなお節介なことを考えていると、要が遠慮がちに話しかけてくる。
「……あの、雨宮様。失礼を承知でお尋ねしたいのですが」
「んー? なんですか?」
「そのー……最近は、どんなお仕事をされているのですか? 以前はよく雑誌でお見かけしたのですが、ここ最近は、その、なかなか雨宮様を見つけられなくて」
とても言いづらそうではあるが、要はそう秋奈に尋ねた。ファンであるという彼からしたら、雑誌で私を見る機会が減ったことを不思議に思っていたのだろう。
彼の言う通り、以前は週刊雑誌のグラビアページに小さいながらも載せてもらっていたのだが、最近はとんとお呼びがかからなくなった。撮影会や握手会なんかも開かれなくなって久しいし、副業であるはずの派遣の仕事を週四で入れている有様だ。
「あー……あはは、なんていうか、最近呼ばれなくなっちゃって。事務所に若い子が入ってきたから、やっぱそっちの方に仕事が行くみたいなんです」
「えっ……」
「要さんも分かってるとは思うけど、私、人気無いから。顔も体もぱっとしないし、この程度のグラドルじゃ若さには敵わないですよねぇ」
へらへらと自虐的なことを言ってみたけれど、内心は泣きそうだった。この業界に憧れて入ったはいいものの、ちやほやしてもらえたのは最初の半年だけだ。それ以降は、胸の大きさが足りないだの、プロポーションがいまいちだのと喧しく言われるのみで、写真集も出してもらえない。握手会だって開かれたのはたったの2回だけで、それも大して話題にならなかったのだ。
「……実を言うと、そろそろ潮時かなって思ってるんです。この前、社長にヘアヌード写真集なら出せるかもしれないぞって言われて、やめてくださいって怒ったけど本当はちょっと揺らいじゃったし」
「へっ……へへへへ、へあぬーど!?」
「あ、出ませんよ? 残念ながら」
裸になったところで人気が出るとも思えないし、と苦笑しながら付け足すと、要は少しほっとしたように笑った。何を想像したのか顔が真っ赤になっているが、それについては触れない方がいいだろう。
「でも、今日要さんに会えて元気が出ました! こんな私にも、要さんみたいに応援してくれるファンがいるんだって分かったから」
「あき……雨宮、様」
「あはは、だから秋奈ちゃんでいいですって。私、もっともっと仕事が増えるように頑張ります! いつか写真集が出たら、絶対に買ってくださいね」
冗談交じりにそう言って笑うと、要は真剣な顔つきで「全財産はたいて買い占めます」と重々しく頷いた。
ずるずると重い荷物を引きずって辿り着いたのは、鄙びた温泉地のさらに奥、山の麓にある小さな小さな温泉旅館だった。
東京から新幹線とローカル線と路線バスを乗り継いで約四時間、体はくたくたではあるが、鼻を掠める微かな硫黄の匂いが秋奈の心を少し癒した。
「すみませーん、誰かいませんかー!?」
お目当ての旅館に足を踏み入れたものの、出迎える人はない。"赤城旅館"と印刷された安っぽいスリッパが一組だけ並べてあったから、秋奈はそれを履いてロビーを見回した。
古びた外観からしてあまり流行りの旅館ではないだろうと予想はしていたけれど、やはり客は秋奈一人のようだ。しかも今日は連休でもなければ土日ですらない、平日の水曜日。ほとんどの人たちはお仕事の真っ最中だろう。
本当は秋奈にも仕事の予定が入っていたはずなのだが、最近事務所に入ってきたばかりの新人にまんまと奪われてしまった。地方企業のちょっとした広告ポスターの撮影とはいえ、久々に水着指定だったから念入りに体を仕上げてきたというのに、この仕打ちはあんまりではないだろうか。
話が逸れたが、とにかくそんな悔しいことがあったので秋奈は手っ取り早く癒されたかったのだ。急に暇が出来たわけだし、近所の猫カフェで一日中モフモフを味わうか、一人カラオケで喉が潰れるまで歌うか、海辺に行って意味もなく叫んでみるか。
そんなことを考えながら家路に着いていつものようにポストを開けたら、見慣れない白い封筒が一通入っていた。差出人の名前も無ければ消印すら押していなかったけれど、秋奈は細かいことを気にしない性質だ。何だろう、と訝しみながらも、部屋に戻ってすぐその封筒をびりびりと開けた。
雨宮 秋奈 様
ご当選おめでとうございます。
貴女様を、燕山温泉 赤城旅館にご招待いたします。
封筒には、そう書かれた薄い紙一枚と、旅館の地図が載った宿泊券が一枚同封されていた。
これ幸いと、秋奈は早速着替えと化粧道具をバッグに詰め込んで旅行の準備を始めた。ご当選ということは、いつか出した何かの懸賞が当たったのだろう。暇つぶしに何度かスマホで懸賞に応募した覚えがあったから、秋奈は深く考えずにうきうきとその旅館までの経路を調べて眠りについた。そして今朝、朝一番の新幹線に乗ってこの温泉地までやってきたというわけである。
「……それにしても、誰も出てこないなんておかしいな。本当にこの旅館やってる?」
いくら声を掛けても人っ子ひとり出てこないので、秋奈はロビーに置かれていたソファにどかっと腰を下ろした。
少し埃くさいし、壁紙はところどころ剥がれかかっているし、今は昼間だからいいけれど夜中になったらそこそこホラーな雰囲気になりそうだ。一人旅だし、今夜は温泉に浸かってご飯を食べたら即寝てしまおう。ボロいのは我慢するから、料理や温泉の質が良いことを願うしかない。
もしかしたらチェックインの時間がまだなのかな、と秋奈が諦めてスマホゲームを起動したとき、廊下の方からパタパタという足音が聞こえてきた。ソファに座ったままそちらに目をやると、小走りでやってきたのは紺地の着物を身に纏い、野暮ったい黒縁眼鏡をかけた青年だった。
「え……あ、あきな、ちゃん!?」
「へっ?」
どうもこんにちはと挨拶する前に、その青年は目を見開いたまま秋奈の名を呼んだ。しかも、ちゃん付けで。
「えーっと……宿泊券が届いたので、今日泊まりたいんですけど……ていうか、どこかでお会いしましたっけ?」
「えっ、あ、しゅ、宿泊券? ああっ、あれのことかな!? まっ、まさか本当に届けたなんて、しかも、秋奈ちゃんが本当に来てくれるなんて! ああどうしようどうしよう、もっと良い格好しておけばよかった、はあどうしよう!?」
「ちょ……っ、ちょっと落ち着いてください!」
目にかかるほど長い前髪を振り乱して、青年はぶつぶつとよく分からないことを言っている。あたふたしてばかりで話にならないので、秋奈は少し語気を強めて彼に言った。それが効いたのか、青年はぴたりと動きを止めて、それから何度も深呼吸を繰り返して慎重に口を開いた。
「……よ、ようこそ、お越しいただきました。当旅館の主である、か、要と申します」
畏まってそう挨拶したかと思えば、要と名乗ったその主人は秋奈の目をじっと見つめて、どういうわけかぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「はっ!? え、ど、どうしました!?」
「ぶぇ……すっ、すびばせん、わたくし、その……あ、秋奈ちゃんの、大ファンでして……っ!」
「え……えええっ!?」
今度は秋奈が目を見開く番だった。どうも様子がおかしいと思えば、この旅館の主人はなんと売れないグラビアアイドルである秋奈のファンだと言うではないか。
その衝撃の告白にぱくぱくと口を開け閉めするだけで何も言えずにいると、要は眼鏡を外して雑に目元を拭ってから、目に涙を溜めたままにっこりと微笑んだ。
「わ、私、今まで生きてきてこれほど嬉しいことはありません。早々にお恥ずかしいところをお見せしてしまいましたが、誠心誠意おもてなし致しますので、どうかお許しください」
そう言って、要は床につきそうなほど深々と頭を下げた。
「さあ、どうぞ。こちらがお部屋でございます」
「ありがとうございます! わあっ、窓から滝が見える!」
「はい、当館の自慢の一つです。あ、窓を開けても構わないのですが、虫が入ってくるので気をつけてくださいね」
「はーい!」
窓際に駆け寄って外を見ながら、秋奈は上機嫌で返事をした。もうすっかり落ち着きを取り戻した要は、そんな秋奈を微笑ましく見つめながら急須にお湯を注いでいる。
「それにしても、すごい偶然ですよねぇ。宿泊券が当たったことだけでもすごいのに、まさかそこのご主人が私のファンだなんて!」
「は、はあ、本当ですね! 私も、なんだか夢みたいで……」
「私みたいなグラドル、マイナーもいいとこでしょう? ファンだって言ってくれる人に会うのも初めてなんだから! こんな偶然もあるんですねぇ」
ええ、はい、と曖昧に相槌を打つ要に首を傾げながらも、湯呑みを差し出されると秋奈は嬉しそうにそれを手に取った。程よく熱いお茶を一口飲んで、それから正座している要に質問を投げかける。
「あの、いつから私のこと知ってくれてるんですか?」
「え、ええっと、もう三年も前になりますか。お客様が置いていかれた雑誌に、秋奈ちゃ……雨宮様が写っていらして」
「あ、秋奈でいいですよ? 秋奈ちゃんって呼ばれる方が嬉しいですし」
「い、いえ、そういうわけにはいきません! 今日は、その、お客様ですので!」
「気にしなくていいのになぁ。ていうか三年前って、デビューしたばっかりの頃ですね! その雑誌、もしかしたら初めて撮ったグラビアかも」
ずずっとお茶を啜りながら昔のことを思い出して、あの頃はもっと肌が綺麗だったのにな、なんて一丁前に感傷に浸る。すぐさま要が「今でも変わらずお綺麗です」と小声で返してくれるから、ちょっとだけ良い気分になった。
真面目で人の良さそうな要に、秋奈はすっかり心を許していた。決してイケメンではないけれど、古くさい眼鏡を替えて前髪を切ったらもっと格好良く見えるだろうに、もったいない。そんなお節介なことを考えていると、要が遠慮がちに話しかけてくる。
「……あの、雨宮様。失礼を承知でお尋ねしたいのですが」
「んー? なんですか?」
「そのー……最近は、どんなお仕事をされているのですか? 以前はよく雑誌でお見かけしたのですが、ここ最近は、その、なかなか雨宮様を見つけられなくて」
とても言いづらそうではあるが、要はそう秋奈に尋ねた。ファンであるという彼からしたら、雑誌で私を見る機会が減ったことを不思議に思っていたのだろう。
彼の言う通り、以前は週刊雑誌のグラビアページに小さいながらも載せてもらっていたのだが、最近はとんとお呼びがかからなくなった。撮影会や握手会なんかも開かれなくなって久しいし、副業であるはずの派遣の仕事を週四で入れている有様だ。
「あー……あはは、なんていうか、最近呼ばれなくなっちゃって。事務所に若い子が入ってきたから、やっぱそっちの方に仕事が行くみたいなんです」
「えっ……」
「要さんも分かってるとは思うけど、私、人気無いから。顔も体もぱっとしないし、この程度のグラドルじゃ若さには敵わないですよねぇ」
へらへらと自虐的なことを言ってみたけれど、内心は泣きそうだった。この業界に憧れて入ったはいいものの、ちやほやしてもらえたのは最初の半年だけだ。それ以降は、胸の大きさが足りないだの、プロポーションがいまいちだのと喧しく言われるのみで、写真集も出してもらえない。握手会だって開かれたのはたったの2回だけで、それも大して話題にならなかったのだ。
「……実を言うと、そろそろ潮時かなって思ってるんです。この前、社長にヘアヌード写真集なら出せるかもしれないぞって言われて、やめてくださいって怒ったけど本当はちょっと揺らいじゃったし」
「へっ……へへへへ、へあぬーど!?」
「あ、出ませんよ? 残念ながら」
裸になったところで人気が出るとも思えないし、と苦笑しながら付け足すと、要は少しほっとしたように笑った。何を想像したのか顔が真っ赤になっているが、それについては触れない方がいいだろう。
「でも、今日要さんに会えて元気が出ました! こんな私にも、要さんみたいに応援してくれるファンがいるんだって分かったから」
「あき……雨宮、様」
「あはは、だから秋奈ちゃんでいいですって。私、もっともっと仕事が増えるように頑張ります! いつか写真集が出たら、絶対に買ってくださいね」
冗談交じりにそう言って笑うと、要は真剣な顔つきで「全財産はたいて買い占めます」と重々しく頷いた。
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