ネジレコネクション ~ キャンパスは7色にねじれる ~

刺片多 健

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シークエンス 005

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本部長と呼ばれた年配の男性が車を停め、ハンドルから手をはなす。
「到着だ。降りなさい」

え?
ここって、俺の、マンション?
さっきの交番から目と鼻の先・・・

俺は戸惑う。
まだ車に乗って2分も経っていないからだ。
てっきり街中の大きな警察署に連れて行かれるものだと思っていた。

だってこのおっさん、本部長とか呼ばれてたよね?

「早く降りなさい」
年配の男性が振り返る。
「タオルはそのまま持って行きなさい」

「は、はい」
俺は車を降りる。

マンションの前で、マリ監督がニコニコしている。
「ヘンタさん、お帰りですわ」

レナが車を覗き込むと、ウィーンと助手席の窓が開く。

「お嬢さん、あまり無茶しないで下さい」
本部長がレナを見て苦笑する。

「分かってる」
レナが本部長に小さく手をあげる。

は?
お、お嬢さん?
レナはこのおっさんと知り合いなのか?

本部長の車は、何事もなかったかのように去って行った。

「あの~これって・・・」
俺があっけに取られていると、

「とりあえず上の部屋に行きますわよ!
 そのままだと、ヘンタさん、風邪をひいてしまいますわ!」

俺たちはマンションの301号室(俺の家)へと向かった。




--- 映研の活動拠点・301号室(俺の家) ---



シャワーを浴びた俺は、夕方に下のコンビニで買っていた下着と、部屋にあったジャージを着る。

「一体どういう事ですか?」
俺はバスタオルで髪をワシャワシャと乾かしながらリビングのソファーに座る。
ちなみにバスタオルはバスルームに元からあったものだ。

俺の隣でレナはテレビゲームをしている。
マリ監督はテーブルで紅茶を飲んでいる。

「レナさんは本部長の上司なのですわよ」

「は?」

「正確には、上司になるのは2年後だ」
レナがゲームをしながら答える。

「は?」

「本部長は定年後にレナさんの会社に入るのですわ」

「名前だけだ」
レナがゲームのコントローラーをカチャカチャする。

「それって・・・」

「天下りですわ」

「・・・・・」

天下り?
レナの会社ってそんなにデカいのか?
いや、そんなことより、

「その本部長が、なんであんなところにいたんだよ?」

「アタシが電話した」

「電話?」

「もしかしたらの保険だ。
 12時すぎに交番前に来いって。
 あの男なら、なんかあった時に対処できるだろ」

対処って・・・
あのオッサン、本部長だぞ!
どれくらいエライか知らないけど。

「そんな事より、ヘンタさん!
 あなたスゴイですわ!いい絵が撮れましたわよ!」

「あれが、ゼメキス・フィルムですか?」

「そうですわ!」

「俺、あの映画は、2までしか見てないんですけど、車が水に落ちるシーンなんかあったんですか?」

「あれは誤算ですわよ!
 途中で止まると思っておりましたんですのよ!」

「はぁ?何言ってるんですか監督!
 誤算じゃ済みませんよ!
 てか、分かるでしょ!ブレーキついてないんだから!
 俺、用水路で溺れたんですよ!
 しかも、警察に捕まりかけたんですよ!」

「ほれみろ!あの男が役に立っただろ?」
レナが俺をチラッと見る。

なに得意がってんだよコイツ。

「いやいや、あれが、映研の活動なんですか?
 あんな事して何になるんですか?」

「ガス抜きですわ」

「ガス抜き?」

「そうですわ!人生のガス抜きですわ!
 それを記録として残すのですわ!」

はぁ?
なに言ってんだよ、まったく・・・
周りに迷惑かけてるだけじゃねぇか。
本気で意味が分かんねぇよ。
ま、そんなことより、

「監督!」

「なんですの?」

「ゼメキス・フィルムとかいうのは終わったんですよね?」

「ええ、終わりましたわ」

「じゃあ、俺の携帯電話と学生証を返してください」

そう!これだ!
これが目的なのだ!
俺はこの為に、火だるま&水地獄に耐えたのだ!
てか、一瞬、気を失ったんだぞ!
死にそうになったんだぞ!
早く携帯返しやがれ!こんちくしょー!

「そうでしたわね」
マリ監督が棚の引き出しから携帯電話と学生証を取り出し、テーブルに置く。

なんだよ、そんな所にあったのか・・・
俺はてっきり、金庫の中かと思って開けたんだけどファイルしか無かったんだよな・・・

まあいい!
これで何もかも元通りだ!

よし!

俺はテーブルから奪うように携帯電話と学生証をつかみ取る。
すかさず携帯電話の写真を全消去する。

「エヘヘ・・・」
思わず笑みがこぼれる。

やった。
俺の勝ちだ。
これで俺は自由だ。

俺はニヤリとしながら、マリ監督に携帯電話をゆっくりと見せる。

「それが、どうかしましたの?」

「エヘヘ、写真を消去しました」

「そう・・・それで?」

俺は満面の笑みで、マリ監督に捨てぜりふを吐く。
「これで証拠は無くなりました!
 俺は、映研を退会します!」

「ふ~ん。そうですか」
マリ監督が興味なさそうに自分の携帯電話をいじり始める。

レナがゲームの手を止め、俺の方を見る。
「おい!ヘンタ!
 お前、入会申込書にサインしたのを忘れたのか!?」

「へッ!あんなのただの紙切れだ!」

「紙切れ?
 お前、バカだろ?」

「バカはどっちだ!」
ウヘヘ!
これで俺は、お前らとはオサラバだ!
ざまぁ見やがれ!

「まあまあ、ヘンタさん」
マリ監督が、自分の手に持っている携帯電話の画面を俺に見せる。
「それじゃ、コレは何ですの?」

え!?

画面には、大学の中庭で盗み撮りする俺が写し出されている。
斜め後ろから撮られた写真で、俺の手に持つ携帯電話の画面には、あの子がバッチリと写っている。

「そ!それって!」
俺は動揺する。
が!すぐさま俺は反撃に出る。

「それっ!盗撮ですよね!俺!許可してませんよね!」

「この写真に許可は必要ありませんわ」

「はぁ?何でですか!?」

「犯罪の決定的瞬間ですのよ!」

「へ?」

「報道のための犯罪現場の撮影は合法なのですわよ!
 犯人の許可なんか全く必要ありませんのよ!」

「は?」

「それとも、この写真を被害者の女性に見せましょうか?」

「え!?」

ダ!ダメだ!
それはマズイ!
クソッ!やばい!
ミスった!
追い込まれた!
俺は・・・俺は、映研から、逃げられないということなのか?

『・・・君、終わりだよ・・・』

大学の中庭でのマンビの言葉が脳裏をよぎる。
そうか、こういうことだったのか・・・
クソー!

「そ、それじゃ、俺に、どうしろと・・・」

「次のプロジェクトが終わったら、この写真のデータを消去しますわ!」

「本当ですか?」

「ええ、消しますわ!あなたの目の前で!」

俺は少し考えるが、答えはとうに出ている。

「分かりました・・・
 次は、どんなプロジェクトですか?」

それを聞いたマリ監督が、ニッ!と笑い立ち上がる。
「ペキンパーですわ!」

「は?
 ペキ?何?」

「次のプロジェクトは、
 ペキンパー・フィルムですわ!」

「・・・え?」

何?
なにそれ?
ペキンパーって何ーーぃ!!?

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