3 / 25
第3話 マーケット散策 懐かしいアレ
しおりを挟む
この世界に関して星がどのように動いているのか、僕には分からない。だけど僕が転生したこの街、トスカラニア王国シエルナ領の領都、セントシエルは春らしい。季節は日本と同じようだ。
日中は大きな太陽と小さな太陽が出ている。朝日も夕日も変わらない。夜もまた大きな青白い月と小さなやや赤みのある月が出ている。太陽も月も1年のうちに何回か1つしか視えない時期があるらしい。
春とは言えまだ肌寒く、僕はベストや上着を羽織ることにした。ルナも外出の準備ができたようだ。まさに異世界町娘と言った感じだろうか。
街中を見ると建物や服装は中世ヨーロッパを思わせる。家は土やレンガ造りと木の枠をはめた感じだ。
道は石畳になっているが大通りは馬車が通行するために広くつくられており、段差などで通行人専用と分けている。所々に馬の水飲み場も設けられている。
「もう街に慣れてきた?」
ようやく会話ができるくらいに回復してきたルナが、隣を歩きながら話しかけてくる。僕の背丈は170cmくらい、彼女は150cmくらいだろうか。少し小柄だ。平民では珍しいプラチナブロンドの髪に深い青、サファイアのような瞳をしている。身分的に着る機会はほぼ無いだろうが、きっと貴族のドレスが似合うに違いない。
「そうだね。この街の風景は前世の世界でも似たところがあったからね」
「そう、良かった」
ルナは何か会話を続けたかったようだが、思うように話題が出てこないらしい。小さな歩幅で黙々とマーケットへ向かっていく。
このシエルナ領都セントシエルは計画的な街づくりになっている。ジャンの家がある地域は一般市民の住宅街と商業区域のちょうど間ぐらいにある。どこの街でも飯屋というのはそういう位置にできやすいらしい。また、ある程度の間隔で飯屋が点在するようになっている。それほど厳しくはないが、地区ごとの建物はある程度用途が定められているようだった。
マーケットは肉や野菜、日用品などいくつか点在しており、食料品マーケットは街の中心部にある。どこの区域に住んでるものでも寄りやすくなっており、また街の端はマーケットというより小さな商店が点在して食品を売っている。食品に限らずこの街はどこの区域に住んでても生活しやすいように設計されているのだろう。
ジャンさんの食堂、というよりかもう居候先……自宅からちょうど区域が分かれる大通りまで出てきた。食堂のあたりは道がせまく舗装もさほど整っていないため馬車が入れないが、ここからいくつかの区域までは馬車も通る道になっている。
「もう少し、こっちへ寄ろう」
馬車道側を歩いてたルナを引き寄せ、自分は馬車道側へ出る。馬車が通る機会は想像してたより少ないみたいだが、世の中何があるか分からない。よくある異世界転生小説なんてそんなに事故るのかというぐらいどの話も馬車で轢かれるのだ。当たりどころによっては致命傷だろう。
僕は回復魔法なんて覚えてない。
マーケットに来るのは初めてではないが、きちんと挨拶したり仕入れを意識してくるのは初めてだ。ルナに案内されながら肉屋、野菜屋、香辛料屋、パン屋などを回っていく。あまり細かく分かれてるわけではないようで、肉と香辛料を両方扱ってるお店もあった。
そんな中、パン屋で懐かしいものにあった。
「これは何ですか?」
ルナがいつも見かけないものを見つけたようだ。
「やぁルナちゃん。ん?それはねぇ、なんてったっけかなぁ。リソだったかリーゾだったか」
パン屋の一人娘、マフィさんは18歳のお姉さんだ。
「リソ?」
ルナが聞き慣れない言葉に首をかしげている。僕は何となくそれが何であるかが分かった気がした。
「あぁ、そうなんだよ。何でも南の国から最近流通するようになった食物でね。いまいち料理の仕方が分からないんだが、水分と熱があれば何かできるらしいんだ。ただ、そのままで食べては――」
ポリポリ。ポリポリ。うーん、やっぱり、これは米だな。生米だ。うん、それにこれは、丁度いい。
「え、いや、そこのお兄さん。えぇと、ショーマ君だっけか?そりゃ生で食っちゃだめなやつだよ!」
マフィさんが慌てて手元の水筒を渡してくる。
「あぁ、まぁ、大丈夫ですよ。僕はこのリソ、えぇと僕のふるさとではコメと言うのですが、このように少量なら大丈夫です。ただ、そのまま食べても美味しくは無いのですが」
ルナはそのまま食べても大丈夫と言われ、既に手のひらいっぱいにして口へ運ぼうとしていた。こういう小動物いたな。何スターだったか。
「ルナ、それはやめておいたほうがいいよ」
「え、あ、あの。か、香りをかいでみようかなぁって。えへへ……」
犬か猫か。ルナは自分の行動を一所懸命ごまかし始める。
「ほう、それじゃぁショーマはそいつの調理方法を知ってるってことかい?」
パン屋の娘は赤毛にそばかすと相場が決まっているのだ。マフィさんはそばかすが少しある頬に手をあてながら頬杖をつきはじめる。これは彼女の癖らしく、商機を見つけた時にする動作だとルナが以前言っていた。
「そうですね。作ってみたい料理がいっぱいあって。あ、今度からジャンさんの食堂を手伝うことにしたんですよ。とりあえず今日は5kg |ほどいただきたいのですが」
この世界の単位は分かりやすい。1キロンゲは前世で言うところの1キログラムほどだ。なんとなくアルファベットっぽい文字に転写すると単位記号はkgになる。転生特典として異世界語が最初から理解できるようにうなっていて助かった。レベル1から鍛えるような人生はあまりしたくない。
「おや、そんな買ってくれるのかい。じゃぁまた仕入れようかね。それじゃとりあえず5 kgね。まだ在庫はあるから少しずつ買ってくれればいいよ。ほいじゃ、5 kgなら1,000銅貨だ」
日本円にして5kgで1,000円か。たしか2,000円~3,000円が一般的な相場だから少しばかり安く感じるな。この世界では、まぁ他の食材の相場より少し安いくらいか。
「後で早速食べよ!」
ルナは食べ物のことしか頭にないようだ。
日中は大きな太陽と小さな太陽が出ている。朝日も夕日も変わらない。夜もまた大きな青白い月と小さなやや赤みのある月が出ている。太陽も月も1年のうちに何回か1つしか視えない時期があるらしい。
春とは言えまだ肌寒く、僕はベストや上着を羽織ることにした。ルナも外出の準備ができたようだ。まさに異世界町娘と言った感じだろうか。
街中を見ると建物や服装は中世ヨーロッパを思わせる。家は土やレンガ造りと木の枠をはめた感じだ。
道は石畳になっているが大通りは馬車が通行するために広くつくられており、段差などで通行人専用と分けている。所々に馬の水飲み場も設けられている。
「もう街に慣れてきた?」
ようやく会話ができるくらいに回復してきたルナが、隣を歩きながら話しかけてくる。僕の背丈は170cmくらい、彼女は150cmくらいだろうか。少し小柄だ。平民では珍しいプラチナブロンドの髪に深い青、サファイアのような瞳をしている。身分的に着る機会はほぼ無いだろうが、きっと貴族のドレスが似合うに違いない。
「そうだね。この街の風景は前世の世界でも似たところがあったからね」
「そう、良かった」
ルナは何か会話を続けたかったようだが、思うように話題が出てこないらしい。小さな歩幅で黙々とマーケットへ向かっていく。
このシエルナ領都セントシエルは計画的な街づくりになっている。ジャンの家がある地域は一般市民の住宅街と商業区域のちょうど間ぐらいにある。どこの街でも飯屋というのはそういう位置にできやすいらしい。また、ある程度の間隔で飯屋が点在するようになっている。それほど厳しくはないが、地区ごとの建物はある程度用途が定められているようだった。
マーケットは肉や野菜、日用品などいくつか点在しており、食料品マーケットは街の中心部にある。どこの区域に住んでるものでも寄りやすくなっており、また街の端はマーケットというより小さな商店が点在して食品を売っている。食品に限らずこの街はどこの区域に住んでても生活しやすいように設計されているのだろう。
ジャンさんの食堂、というよりかもう居候先……自宅からちょうど区域が分かれる大通りまで出てきた。食堂のあたりは道がせまく舗装もさほど整っていないため馬車が入れないが、ここからいくつかの区域までは馬車も通る道になっている。
「もう少し、こっちへ寄ろう」
馬車道側を歩いてたルナを引き寄せ、自分は馬車道側へ出る。馬車が通る機会は想像してたより少ないみたいだが、世の中何があるか分からない。よくある異世界転生小説なんてそんなに事故るのかというぐらいどの話も馬車で轢かれるのだ。当たりどころによっては致命傷だろう。
僕は回復魔法なんて覚えてない。
マーケットに来るのは初めてではないが、きちんと挨拶したり仕入れを意識してくるのは初めてだ。ルナに案内されながら肉屋、野菜屋、香辛料屋、パン屋などを回っていく。あまり細かく分かれてるわけではないようで、肉と香辛料を両方扱ってるお店もあった。
そんな中、パン屋で懐かしいものにあった。
「これは何ですか?」
ルナがいつも見かけないものを見つけたようだ。
「やぁルナちゃん。ん?それはねぇ、なんてったっけかなぁ。リソだったかリーゾだったか」
パン屋の一人娘、マフィさんは18歳のお姉さんだ。
「リソ?」
ルナが聞き慣れない言葉に首をかしげている。僕は何となくそれが何であるかが分かった気がした。
「あぁ、そうなんだよ。何でも南の国から最近流通するようになった食物でね。いまいち料理の仕方が分からないんだが、水分と熱があれば何かできるらしいんだ。ただ、そのままで食べては――」
ポリポリ。ポリポリ。うーん、やっぱり、これは米だな。生米だ。うん、それにこれは、丁度いい。
「え、いや、そこのお兄さん。えぇと、ショーマ君だっけか?そりゃ生で食っちゃだめなやつだよ!」
マフィさんが慌てて手元の水筒を渡してくる。
「あぁ、まぁ、大丈夫ですよ。僕はこのリソ、えぇと僕のふるさとではコメと言うのですが、このように少量なら大丈夫です。ただ、そのまま食べても美味しくは無いのですが」
ルナはそのまま食べても大丈夫と言われ、既に手のひらいっぱいにして口へ運ぼうとしていた。こういう小動物いたな。何スターだったか。
「ルナ、それはやめておいたほうがいいよ」
「え、あ、あの。か、香りをかいでみようかなぁって。えへへ……」
犬か猫か。ルナは自分の行動を一所懸命ごまかし始める。
「ほう、それじゃぁショーマはそいつの調理方法を知ってるってことかい?」
パン屋の娘は赤毛にそばかすと相場が決まっているのだ。マフィさんはそばかすが少しある頬に手をあてながら頬杖をつきはじめる。これは彼女の癖らしく、商機を見つけた時にする動作だとルナが以前言っていた。
「そうですね。作ってみたい料理がいっぱいあって。あ、今度からジャンさんの食堂を手伝うことにしたんですよ。とりあえず今日は5kg |ほどいただきたいのですが」
この世界の単位は分かりやすい。1キロンゲは前世で言うところの1キログラムほどだ。なんとなくアルファベットっぽい文字に転写すると単位記号はkgになる。転生特典として異世界語が最初から理解できるようにうなっていて助かった。レベル1から鍛えるような人生はあまりしたくない。
「おや、そんな買ってくれるのかい。じゃぁまた仕入れようかね。それじゃとりあえず5 kgね。まだ在庫はあるから少しずつ買ってくれればいいよ。ほいじゃ、5 kgなら1,000銅貨だ」
日本円にして5kgで1,000円か。たしか2,000円~3,000円が一般的な相場だから少しばかり安く感じるな。この世界では、まぁ他の食材の相場より少し安いくらいか。
「後で早速食べよ!」
ルナは食べ物のことしか頭にないようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる