13 / 50
醒夜と凪斗のGF レクチャー
しおりを挟む
☆放課後 商業区
放課後を迎え五月は醒夜、凪斗と共に三人で帰路につく。くりだした商業区はすでに、深い紅色に染められている。
「どうしようかな……私の初仕事……」
五月は唸りつつ、依頼掲示板(ゼネラリストの仕事の依頼について書き込まれたものの一覧表)
が表示されたスマホの画面を真剣な表情でスクロールさせている。そこには請け負うべき仕事内容、依頼者、成功報酬等が記載されていた。
「ん? 何て読むんだろ、これ。アージェンシーと、ノミネートかな?」
五月が記入された情報にurgency(アージェンシー)B/2や、nomInate(ノミネート)といった表記を見つけ、彼女の脳裏にクエスチョンが浮かぶ。
そこで、横合いに並んでいた醒夜が呆れ気味に横やりを入れた。
「おいおい、子供の頃からの夢だったんだろ? んな事の下調べもしてねーのかよ? というか講習の時に教わんなかったのか?」
「あ、あはは……。TCG の実力があれば成れるって聞いてからは、ひたすら実力をつける事に夢中になっちゃって……。徹夜で特訓してたせいか、講習中も眠くて、内容も頭に入ってこなかったし……」
「そういうことなら、話しておいた方がいいか。urgency(アージェンシー)の項目は、特に、依頼(クエスト)受注時の目安になるからね。urgency(アージェンシー)は緊急性の事だ。これは、D~S迄ありSに近いほど、その依頼の急迫性は高くなる。そして、/(スラッシュ)を挟んだ数字の方はその依頼の難易度。こちらは1から5迄だ。urgencyが記入されている依頼はurgencyクエストと呼称され、優先されるべき対象となる」
凪斗が五月に垂訓し、その先の教示を醒夜が継いだ。
「nomInate(ノミネート)方は説明するまでもないよな? 翻訳すると指名って意味だ。得意のゼネラリスト、名だたるゼネラリスト達に自分の依頼を受けて欲しい……そういった場合に|依頼者(クライアント)側がその指名を要求するわけだ。こっちはnomInate(ノミネート)クエストって呼ばれてるな。ま、nomInateされるには、数多くの成果や実績が必要だ。今のお前にゃ、まず関係のないもんだろーよ」
「アージェンシークエストに、ノミネートクエストか。依頼にも色々あるんだな……。憧れが先走ってファクターとしての技量にしか、目を向けてなかったけど……講習も、半分寝てたし……ライセンスを得た者としてこれじゃ、駄目だよね……これからは、技量に、専門の知識。沢山の成果をあげて……プロなんです、って胸を張れるようにならなきゃ。……うん課題は山積みだな」
五月は自分なりの結論を出し、一人「ふーむ」と考え込む。
「ふ、五月よ。お前が本気だってんなら、この超絶頼りになる先輩、月影醒夜がゼネラリストがなんたるかを直々にレクチャーしてやっても良いぜ」
「そうだな。もし君が職務に誠心誠意勤しむ気が有るというなら──まぁ、アドバイスくらいはしよう」
「二人とも……うん、ありがとう。じゃあ分からない事が有る時は、色々頼らせてもらおうかな」
醒夜と凪斗の申し出にしみじみと感じ入る五月。
(ふふ、二人とも、何だかんだで世話焼きな所があるんだよね。うーん、今さらだけど醒夜くんと凪斗くんって……何処か似たものを感じるなぁ)
「じゃあ、さっそく質問というか、ちょっとした雑談なんだけど……二人が依頼を選ぶ際の基準はどうしてるの? やっぱりアージェンシーのランクが高いものだったりする?」
「んなもん、成功報酬に決まってるだろ。悩んだ時は成功報酬。……これよ」
「動機が不純過ぎるな……」
「うん……なんというか、ここまできっぱりと公言されると、いっそ清いくらいかも……」
きぱっと言い切る醒夜に脱力感を覚える凪斗と五月。
──その時。
『ちょっ、おい、アンタ! ちょっと! 待てって!』
不意に前方の人だかりの中から男性の声が上がる。そして声の主はこう続けた。
『くそ……! 誰か! ソイツを捕まえてくれ! スリだ! スリ! ひったくり!』
(な……スリ!?)
五月はとっさに声の発生源の方へ目を向ける。そこには、人混みを縫って走り抜ける裝年の男とそれを追う男女のペア。裝年の男は黒のニット帽をを目深に被っており、上腕にはヘビの様なロゴのタトゥーを入れていた。彼は女物の洒落たバックをかかえて、人通りの少ない路地の方へ駆け込んでいく。
「あの人……まさか──!」
その様子を目撃した五月は覚えず、駆け出だしていた。
「あの、タトゥーは……。くっ……至宝! 待て!」
凪斗が慌てて飛び出し、醒夜も「ち……!」そう舌打ちし、地を蹴った。
放課後を迎え五月は醒夜、凪斗と共に三人で帰路につく。くりだした商業区はすでに、深い紅色に染められている。
「どうしようかな……私の初仕事……」
五月は唸りつつ、依頼掲示板(ゼネラリストの仕事の依頼について書き込まれたものの一覧表)
が表示されたスマホの画面を真剣な表情でスクロールさせている。そこには請け負うべき仕事内容、依頼者、成功報酬等が記載されていた。
「ん? 何て読むんだろ、これ。アージェンシーと、ノミネートかな?」
五月が記入された情報にurgency(アージェンシー)B/2や、nomInate(ノミネート)といった表記を見つけ、彼女の脳裏にクエスチョンが浮かぶ。
そこで、横合いに並んでいた醒夜が呆れ気味に横やりを入れた。
「おいおい、子供の頃からの夢だったんだろ? んな事の下調べもしてねーのかよ? というか講習の時に教わんなかったのか?」
「あ、あはは……。TCG の実力があれば成れるって聞いてからは、ひたすら実力をつける事に夢中になっちゃって……。徹夜で特訓してたせいか、講習中も眠くて、内容も頭に入ってこなかったし……」
「そういうことなら、話しておいた方がいいか。urgency(アージェンシー)の項目は、特に、依頼(クエスト)受注時の目安になるからね。urgency(アージェンシー)は緊急性の事だ。これは、D~S迄ありSに近いほど、その依頼の急迫性は高くなる。そして、/(スラッシュ)を挟んだ数字の方はその依頼の難易度。こちらは1から5迄だ。urgencyが記入されている依頼はurgencyクエストと呼称され、優先されるべき対象となる」
凪斗が五月に垂訓し、その先の教示を醒夜が継いだ。
「nomInate(ノミネート)方は説明するまでもないよな? 翻訳すると指名って意味だ。得意のゼネラリスト、名だたるゼネラリスト達に自分の依頼を受けて欲しい……そういった場合に|依頼者(クライアント)側がその指名を要求するわけだ。こっちはnomInate(ノミネート)クエストって呼ばれてるな。ま、nomInateされるには、数多くの成果や実績が必要だ。今のお前にゃ、まず関係のないもんだろーよ」
「アージェンシークエストに、ノミネートクエストか。依頼にも色々あるんだな……。憧れが先走ってファクターとしての技量にしか、目を向けてなかったけど……講習も、半分寝てたし……ライセンスを得た者としてこれじゃ、駄目だよね……これからは、技量に、専門の知識。沢山の成果をあげて……プロなんです、って胸を張れるようにならなきゃ。……うん課題は山積みだな」
五月は自分なりの結論を出し、一人「ふーむ」と考え込む。
「ふ、五月よ。お前が本気だってんなら、この超絶頼りになる先輩、月影醒夜がゼネラリストがなんたるかを直々にレクチャーしてやっても良いぜ」
「そうだな。もし君が職務に誠心誠意勤しむ気が有るというなら──まぁ、アドバイスくらいはしよう」
「二人とも……うん、ありがとう。じゃあ分からない事が有る時は、色々頼らせてもらおうかな」
醒夜と凪斗の申し出にしみじみと感じ入る五月。
(ふふ、二人とも、何だかんだで世話焼きな所があるんだよね。うーん、今さらだけど醒夜くんと凪斗くんって……何処か似たものを感じるなぁ)
「じゃあ、さっそく質問というか、ちょっとした雑談なんだけど……二人が依頼を選ぶ際の基準はどうしてるの? やっぱりアージェンシーのランクが高いものだったりする?」
「んなもん、成功報酬に決まってるだろ。悩んだ時は成功報酬。……これよ」
「動機が不純過ぎるな……」
「うん……なんというか、ここまできっぱりと公言されると、いっそ清いくらいかも……」
きぱっと言い切る醒夜に脱力感を覚える凪斗と五月。
──その時。
『ちょっ、おい、アンタ! ちょっと! 待てって!』
不意に前方の人だかりの中から男性の声が上がる。そして声の主はこう続けた。
『くそ……! 誰か! ソイツを捕まえてくれ! スリだ! スリ! ひったくり!』
(な……スリ!?)
五月はとっさに声の発生源の方へ目を向ける。そこには、人混みを縫って走り抜ける裝年の男とそれを追う男女のペア。裝年の男は黒のニット帽をを目深に被っており、上腕にはヘビの様なロゴのタトゥーを入れていた。彼は女物の洒落たバックをかかえて、人通りの少ない路地の方へ駆け込んでいく。
「あの人……まさか──!」
その様子を目撃した五月は覚えず、駆け出だしていた。
「あの、タトゥーは……。くっ……至宝! 待て!」
凪斗が慌てて飛び出し、醒夜も「ち……!」そう舌打ちし、地を蹴った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる