夢源華守姫のノエシス

巴要

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醒夜と凪斗のGF レクチャー

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☆放課後 商業区

 放課後を迎え五月は醒夜、凪斗と共に三人で帰路につく。くりだした商業区はすでに、深い紅色に染められている。

「どうしようかな……私の初仕事……」

 五月は唸りつつ、依頼掲示板(ゼネラリストの仕事の依頼について書き込まれたものの一覧表)
が表示されたスマホの画面を真剣な表情でスクロールさせている。そこには請け負うべき仕事内容、依頼者、成功報酬等が記載されていた。

「ん? 何て読むんだろ、これ。アージェンシーと、ノミネートかな?」

 五月が記入された情報にurgency(アージェンシー)B/2や、nomInate(ノミネート)といった表記を見つけ、彼女の脳裏にクエスチョンが浮かぶ。

 そこで、横合いに並んでいた醒夜が呆れ気味に横やりを入れた。

「おいおい、子供の頃からの夢だったんだろ? んな事の下調べもしてねーのかよ? というか講習の時に教わんなかったのか?」

「あ、あはは……。TCG の実力があれば成れるって聞いてからは、ひたすら実力をつける事に夢中になっちゃって……。徹夜で特訓してたせいか、講習中も眠くて、内容も頭に入ってこなかったし……」

「そういうことなら、話しておいた方がいいか。urgency(アージェンシー)の項目は、特に、依頼(クエスト)受注時の目安になるからね。urgency(アージェンシー)は緊急性の事だ。これは、D~S迄ありSに近いほど、その依頼の急迫性は高くなる。そして、/(スラッシュ)を挟んだ数字の方はその依頼の難易度。こちらは1から5迄だ。urgencyが記入されている依頼はurgencyクエストと呼称され、優先されるべき対象となる」

 凪斗が五月に垂訓し、その先の教示を醒夜が継いだ。

「nomInate(ノミネート)方は説明するまでもないよな? 翻訳すると指名って意味だ。得意のゼネラリスト、名だたるゼネラリスト達に自分の依頼を受けて欲しい……そういった場合に|依頼者(クライアント)側がその指名を要求するわけだ。こっちはnomInate(ノミネート)クエストって呼ばれてるな。ま、nomInateされるには、数多くの成果や実績が必要だ。今のお前にゃ、まず関係のないもんだろーよ」

「アージェンシークエストに、ノミネートクエストか。依頼にも色々あるんだな……。憧れが先走ってファクターとしての技量にしか、目を向けてなかったけど……講習も、半分寝てたし……ライセンスを得た者としてこれじゃ、駄目だよね……これからは、技量に、専門の知識。沢山の成果をあげて……プロなんです、って胸を張れるようにならなきゃ。……うん課題は山積みだな」
 
 五月は自分なりの結論を出し、一人「ふーむ」と考え込む。

「ふ、五月よ。お前が本気だってんなら、この超絶頼りになる先輩、月影醒夜がゼネラリストがなんたるかを直々にレクチャーしてやっても良いぜ」

「そうだな。もし君が職務に誠心誠意勤しむ気が有るというなら──まぁ、アドバイスくらいはしよう」

「二人とも……うん、ありがとう。じゃあ分からない事が有る時は、色々頼らせてもらおうかな」

 醒夜と凪斗の申し出にしみじみと感じ入る五月。

(ふふ、二人とも、何だかんだで世話焼きな所があるんだよね。うーん、今さらだけど醒夜くんと凪斗くんって……何処か似たものを感じるなぁ)

「じゃあ、さっそく質問というか、ちょっとした雑談なんだけど……二人が依頼を選ぶ際の基準はどうしてるの? やっぱりアージェンシーのランクが高いものだったりする?」

「んなもん、成功報酬に決まってるだろ。悩んだ時は成功報酬。……これよ」

「動機が不純過ぎるな……」

「うん……なんというか、ここまできっぱりと公言されると、いっそ清いくらいかも……」

 きぱっと言い切る醒夜に脱力感を覚える凪斗と五月。

──その時。

『ちょっ、おい、アンタ! ちょっと! 待てって!』

 不意に前方の人だかりの中から男性の声が上がる。そして声の主はこう続けた。

『くそ……! 誰か! ソイツを捕まえてくれ! スリだ! スリ! ひったくり!』

(な……スリ!?)

 五月はとっさに声の発生源の方へ目を向ける。そこには、人混みを縫って走り抜ける裝年の男とそれを追う男女のペア。裝年の男は黒のニット帽をを目深に被っており、上腕にはヘビの様なロゴのタトゥーを入れていた。彼は女物の洒落たバックをかかえて、人通りの少ない路地の方へ駆け込んでいく。

「あの人……まさか──!」

 その様子を目撃した五月は覚えず、駆け出だしていた。

「あの、タトゥーは……。くっ……至宝! 待て!」

 凪斗が慌てて飛び出し、醒夜も「ち……!」そう舌打ちし、地を蹴った。
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