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五月 ドレスアップ
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☆ガードショップ【シャングリラ】
デタッチドスリーブ(襟がむき出しになり胴部分と袖が分かれているスリーブ)にパニエスカート(外側に広がったフリルをふんだんに使ったスカート、お洒落なサロンエプロン付き)頭にはプリム(メイドさんのカチューシャ正式にはブリム)と大きなリボンの髪止め。足元は編み上げパンプスに内にはレースが飾られたニーソックス。全体として薄桃色と白を基準としたいわゆる《甘ロリ》。そんな甘ロリ衣装を身に纏っているのは──。
「……あの……醒夜くん。これ、何と言うか……露出度が高過ぎるし……ちょっと派手じゃない……?」
勿論、五月だ。仕事内容の説明が終了した後「まずは制服に着替えてこい」そう言われ更衣室通された五月は着替えた自分の格好のあまりの奇抜さに、たじろぎを隠さず醒夜に尋ねる。
更衣室から、そんな《甘ロリメイド》姿を披露した彼女に対するサークルメンバーの反応は三者三様だった。
凪斗は、目を見張り、弄っていたスマホを取り落とし。
龍太郎は、『……これは……。まぁ、アレ……醒夜、グッチョブ! ……としか言いようがないか……』等と納得がいった様子で呟き。
醒夜はというと一人、満足げにウンウン頷いていた。
「……そ、それに、その……他の店員さんと明らかに制服が違うよーな気がするんだけど」
五月は、シックで落ち着いた黒色の制服とオレンジのエプロン姿の他の店員達を見回す。(ちなみに醒夜達も同じ格好をしている)
「当たり前だな。それ、俺様特注だから」
「……と、特注……!? な、なにゆえ……?! というか、何も、カードショップでこんな格好しなくたって……! って言うよりヤダ! 恥ずかしいよ! 普通の制服がいい! それに、ホラ。こんな浮わついたカッコ、仕事中に良くないよ! ねぇ? 凪斗くん? 龍太郎?」
「……え……。あ、あぁ。そうだな。……けどまぁ、君の場合、普段が地味目な服装ばかりだからな。いいんじゃないか? たまには、気分を変えて、そういった格好も。何より、このまま服装を変えるのは勿体無……──じゃなかった。君の仕事は客引きだろう? だとしたら……──そっちの方が目を引くからね。効率的にそっちの方がいいんじゃないか?」
赤くなった凪斗が目の遣り場に困った様に、脇を向きつつ答え、
『そうだよ。そこまで似合っているものをわざわざ着替えてしまうという選択は、ナンセンスだと言わざるをえないね。ボクとしては』
龍太郎が、凪斗に同調する。
「…………────っ。ううう………」
救いの手を呆気なく払われ、五月は恥ずかしさの余り顔をリンゴの様にし、俯いた。
『しかし、セイヤ。特注ドレスとはまた、凝った趣向を用意したね。……いや、可愛い女の子に自分のリクエストした服を着て貰いたい男心……ってヤツかな? もしかして、今回のバイトって、そっちが本命?』
「そんな訳……まーなきにしもあらず」
そんな悪びれた素振りの無い醒夜に「どっち!?」と五月が突っ込む。
「別にどっちでもいいだろ。そんな事は。それより、仕事として受注した以上、しっかりこっちに従って貰わなきゃな。恥も外聞も捨てろ。そして、効率だけに目を向けろ。任せたぜ。プロのゼネラリスト──至宝五月」
『うわぁ……ズルいな、あの言い方』
「確かに……扱い慣れているな。流石に」
そう、醒夜は知っているのだ。こうした言い方をすれば、五月が断れない事を。
「……そ、そうだ。私はゼネラリスト。ゼネラリストは、人助けのプロ。そう……プロなんだ……。そしてプロは時と場所、場合を選んではいけない……」
そんな独り言の後、吹っ切れた様子の五月がバッと、顔を上げる。
「わかった! まっかせて! 取り敢えず、片っ端から通行人に呼び掛けて、お客さんを呼び込むから」
そう言い置いて店の外へと駆けて行く五月に、醒夜は親指を立てて見送るのだった。
デタッチドスリーブ(襟がむき出しになり胴部分と袖が分かれているスリーブ)にパニエスカート(外側に広がったフリルをふんだんに使ったスカート、お洒落なサロンエプロン付き)頭にはプリム(メイドさんのカチューシャ正式にはブリム)と大きなリボンの髪止め。足元は編み上げパンプスに内にはレースが飾られたニーソックス。全体として薄桃色と白を基準としたいわゆる《甘ロリ》。そんな甘ロリ衣装を身に纏っているのは──。
「……あの……醒夜くん。これ、何と言うか……露出度が高過ぎるし……ちょっと派手じゃない……?」
勿論、五月だ。仕事内容の説明が終了した後「まずは制服に着替えてこい」そう言われ更衣室通された五月は着替えた自分の格好のあまりの奇抜さに、たじろぎを隠さず醒夜に尋ねる。
更衣室から、そんな《甘ロリメイド》姿を披露した彼女に対するサークルメンバーの反応は三者三様だった。
凪斗は、目を見張り、弄っていたスマホを取り落とし。
龍太郎は、『……これは……。まぁ、アレ……醒夜、グッチョブ! ……としか言いようがないか……』等と納得がいった様子で呟き。
醒夜はというと一人、満足げにウンウン頷いていた。
「……そ、それに、その……他の店員さんと明らかに制服が違うよーな気がするんだけど」
五月は、シックで落ち着いた黒色の制服とオレンジのエプロン姿の他の店員達を見回す。(ちなみに醒夜達も同じ格好をしている)
「当たり前だな。それ、俺様特注だから」
「……と、特注……!? な、なにゆえ……?! というか、何も、カードショップでこんな格好しなくたって……! って言うよりヤダ! 恥ずかしいよ! 普通の制服がいい! それに、ホラ。こんな浮わついたカッコ、仕事中に良くないよ! ねぇ? 凪斗くん? 龍太郎?」
「……え……。あ、あぁ。そうだな。……けどまぁ、君の場合、普段が地味目な服装ばかりだからな。いいんじゃないか? たまには、気分を変えて、そういった格好も。何より、このまま服装を変えるのは勿体無……──じゃなかった。君の仕事は客引きだろう? だとしたら……──そっちの方が目を引くからね。効率的にそっちの方がいいんじゃないか?」
赤くなった凪斗が目の遣り場に困った様に、脇を向きつつ答え、
『そうだよ。そこまで似合っているものをわざわざ着替えてしまうという選択は、ナンセンスだと言わざるをえないね。ボクとしては』
龍太郎が、凪斗に同調する。
「…………────っ。ううう………」
救いの手を呆気なく払われ、五月は恥ずかしさの余り顔をリンゴの様にし、俯いた。
『しかし、セイヤ。特注ドレスとはまた、凝った趣向を用意したね。……いや、可愛い女の子に自分のリクエストした服を着て貰いたい男心……ってヤツかな? もしかして、今回のバイトって、そっちが本命?』
「そんな訳……まーなきにしもあらず」
そんな悪びれた素振りの無い醒夜に「どっち!?」と五月が突っ込む。
「別にどっちでもいいだろ。そんな事は。それより、仕事として受注した以上、しっかりこっちに従って貰わなきゃな。恥も外聞も捨てろ。そして、効率だけに目を向けろ。任せたぜ。プロのゼネラリスト──至宝五月」
『うわぁ……ズルいな、あの言い方』
「確かに……扱い慣れているな。流石に」
そう、醒夜は知っているのだ。こうした言い方をすれば、五月が断れない事を。
「……そ、そうだ。私はゼネラリスト。ゼネラリストは、人助けのプロ。そう……プロなんだ……。そしてプロは時と場所、場合を選んではいけない……」
そんな独り言の後、吹っ切れた様子の五月がバッと、顔を上げる。
「わかった! まっかせて! 取り敢えず、片っ端から通行人に呼び掛けて、お客さんを呼び込むから」
そう言い置いて店の外へと駆けて行く五月に、醒夜は親指を立てて見送るのだった。
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