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伝説の悪魔姫と、ページ数の呪縛
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一階のボスが現れた。
私は闇の魔法を唱えた。
一階のボスを倒した。
「姫様お見事です」
オカリナはウンウンと頷くが、私は額に手を当ててため息をついた。
「……多分、あんただけよ喜んでるの。せめてどんなボスなのか、どんな魔法を使ったのか、どう倒したのか――それを書かないと、読者にも編集にも怒られる気がするわ。やっぱり三行は無理がある。」
「よくわかりません。正直、あと十九階あります。チマチマやっている方が問題がある気がします。」
「かといって、いきなり最下層まで話が飛んだら“はしょりすぎ”って言われるのよ!」
「……人間とは面倒ですね。」
「てか、アニメ版だとこの場面、三行から三秒に編集されると思うの」
「姫様。さっきから何を言ってるかわかりません」
⸻
仕方なく、私は三行バトルをやり直すことにした。
「では――やり直し、第二テイク!」
地下二階の洞窟の奥から、獣の咆哮が響く。
黒い鎧をまとったミノタウロス。手には巨大な戦斧。
見た目だけなら、明らかに“ザ・一階のボス”感がある。
「闇よ、我が手に集え――漆黒連鎖!」
黒い鎖が空気を切り裂き、ミノタウロスの四肢を絡め取る。
巨体が唸り、岩壁を砕いて暴れた。
「ふん……力任せの肉壁ね。燃えなさい」
闇の炎が生まれ、鎖を伝って敵を包み込む。
轟音と共に爆炎――いや、闇炎が炸裂。
ミノタウロスは、灰になって崩れ落ちた。
「はい、今のでだいたい十行ね。
これなら読者も納得するでしょ」
「なるほど。これを十九回やるわけですね?」
「……やっぱ三行でいいや。」
オカリナが小さく頷く。
「合理的判断です、姫様。」
こうして私たちは、地下三階へと進んだ。
テンポの神とリアリティの神の板挟みになりながら。
「ねぇ、オカリナ。ずっと考えてだんだけど、漫画版なら三行の代わりに3コマでバトルさせられるのかな?」
「4コマ目は勝利のガッツポーズしてるでしょうね」
「そんな4コマ漫画、どこが面白いの?」
「知りませんよ。さぁ姫様。地下三階のボスですよ」
「闇の炎」
「お見事です。姫様」
「もはや会話三行。あ、ガッツポーズしないと」
「さすが姫様。4コマ漫画家にも優しいご配慮です」
「でもね。オカリナ。私大変なことに気づいたの。あっ、闇の炎」
「なんでしょう? 姫様お見事です」
「ページ数が足りないわ! アニメだと謎のミュージカルシーンか冒頭のナレーションの時間が別に必要よ!」
「さすが姫様。致命的な欠点に気づくとは。この悪魔大元帥オカリナ。感服致しました。で、次は地下五階ですね」
「そうね」
こうして私は地下五階から十九階まで苦戦することなくボスを倒し、進んでいくのであった。
「さぁ、ページ数も半分になったし最下層はじっくりいくわよ!」
「さすが姫様。おいしいところだけもっていく。さすが伝説の悪魔姫です」
「さりげなくタイトル回収するなんて、悪魔大元帥の名は伊達じゃないわね」
「私の予感ですと、そろそろシリアスな場面になりますので気持ち切り替えましょう」
「ウム。そうじゃな」
私の瞳が黄金に輝く。この扉の奥に最難関迷宮のラスボスがいるのだ。そのヤバい気配はここにいても感じ取れる。
「さぁ姫様。修練の集大成をこのオカリナに見せて下さい」
「無論そのつもりじゃ」
オカリナが扉を開けて私は中に入る。
「ほほう。キマイラか」
“三つの本能を併せ持つ、理性なき王”
古代魔術師によって造られた禁忌の合成獣。
ライオンの上半身、山羊の胴体、蛇の尾――その三つが同時に生きており、それぞれが別々の意志を持つという異常な構造をしている。
「オカリナよ。まずいぞ」
「何故です?」
「こやつ弱すぎる。三行で終われる自信ある。そうなるとページ数が余るぞ!」
「後日談で誤魔化しましょう!」
「バカを言え。貴様のことじゃ。更なる修練とか言って妾が酷い目にあうオチがよめておるわ」
「さすが姫様。未来を予測するとは」
「ここはなんとしても、こいつに苦戦しなければ。もうこいつの技全部わざとくらって、死にかけて復活して必殺技で逆転するくらいしないとダメじゃろうな」
「もはや戦隊ヒーローとやってることと同じとは。姫様は子供心も理解しておられるのですね。天に召された魔王様も喜んでるでしょう」
「結構ページ数使ったかの?」
「いや、あんまりです」
「仕方がない。おいキマイラ。技を出せ。出来たら長い名前がいい」
「さすが姫様。今のはスキル挑発です。見事な挑発でした」
するとキマイラが尻尾を振って、
「降参です。勝てる気がしません」
「お主、最難関迷宮のラスボスじゃろう! 降参するな! これではページ数的に妾が帰った後修練する羽目になるではないか!」
「いやぁ無理っす。さりげなく闇の衣まとってるじゃないですか。俺の攻撃届きませんよ」
「ふむ。ならば解こう。これで魔力による防備はない。遠慮なく攻撃してくるとよい!」
「ふはははは! 騙されたな! おまえらはここで殺されるといい!」
「情けないラスボスじゃ。闇の流星」
あっさりキマイラは倒された。
「しまった。つい」
「姫様さすがです。ちょうどいい感じで終わりました!」
「おおそうか!」
こうして私の修練を兼ねた迷宮攻略は無事に終わり、地上に戻ってきたのだが、
「宝箱?」
私はキョトンとしてしまった。そんな私をみてため息をついた迷宮の魔女。
「各階にありましたよ。それなりの金品財宝がそれぞれに入ってたはず。とってこなかったのですか?」
「文字数やページ数のことばかり考えて気づかなかった。そんなのあるなら最後ページ数足りないとかやらなくて済んだじゃない!」
「なんですかそれ。普通にやったら普通にまとまるようにプロット組めたはずですよ」
「あんたがプロットとか言うなぁ!」
落ち込んでいる私にオカリナが、
「姫様。今回はあきらめましょう。さぁ帰って更なる修練です」
「だから最後にそれねじこむなぁ!」
私の絶叫が森中に響き渡るのであった。
私は闇の魔法を唱えた。
一階のボスを倒した。
「姫様お見事です」
オカリナはウンウンと頷くが、私は額に手を当ててため息をついた。
「……多分、あんただけよ喜んでるの。せめてどんなボスなのか、どんな魔法を使ったのか、どう倒したのか――それを書かないと、読者にも編集にも怒られる気がするわ。やっぱり三行は無理がある。」
「よくわかりません。正直、あと十九階あります。チマチマやっている方が問題がある気がします。」
「かといって、いきなり最下層まで話が飛んだら“はしょりすぎ”って言われるのよ!」
「……人間とは面倒ですね。」
「てか、アニメ版だとこの場面、三行から三秒に編集されると思うの」
「姫様。さっきから何を言ってるかわかりません」
⸻
仕方なく、私は三行バトルをやり直すことにした。
「では――やり直し、第二テイク!」
地下二階の洞窟の奥から、獣の咆哮が響く。
黒い鎧をまとったミノタウロス。手には巨大な戦斧。
見た目だけなら、明らかに“ザ・一階のボス”感がある。
「闇よ、我が手に集え――漆黒連鎖!」
黒い鎖が空気を切り裂き、ミノタウロスの四肢を絡め取る。
巨体が唸り、岩壁を砕いて暴れた。
「ふん……力任せの肉壁ね。燃えなさい」
闇の炎が生まれ、鎖を伝って敵を包み込む。
轟音と共に爆炎――いや、闇炎が炸裂。
ミノタウロスは、灰になって崩れ落ちた。
「はい、今のでだいたい十行ね。
これなら読者も納得するでしょ」
「なるほど。これを十九回やるわけですね?」
「……やっぱ三行でいいや。」
オカリナが小さく頷く。
「合理的判断です、姫様。」
こうして私たちは、地下三階へと進んだ。
テンポの神とリアリティの神の板挟みになりながら。
「ねぇ、オカリナ。ずっと考えてだんだけど、漫画版なら三行の代わりに3コマでバトルさせられるのかな?」
「4コマ目は勝利のガッツポーズしてるでしょうね」
「そんな4コマ漫画、どこが面白いの?」
「知りませんよ。さぁ姫様。地下三階のボスですよ」
「闇の炎」
「お見事です。姫様」
「もはや会話三行。あ、ガッツポーズしないと」
「さすが姫様。4コマ漫画家にも優しいご配慮です」
「でもね。オカリナ。私大変なことに気づいたの。あっ、闇の炎」
「なんでしょう? 姫様お見事です」
「ページ数が足りないわ! アニメだと謎のミュージカルシーンか冒頭のナレーションの時間が別に必要よ!」
「さすが姫様。致命的な欠点に気づくとは。この悪魔大元帥オカリナ。感服致しました。で、次は地下五階ですね」
「そうね」
こうして私は地下五階から十九階まで苦戦することなくボスを倒し、進んでいくのであった。
「さぁ、ページ数も半分になったし最下層はじっくりいくわよ!」
「さすが姫様。おいしいところだけもっていく。さすが伝説の悪魔姫です」
「さりげなくタイトル回収するなんて、悪魔大元帥の名は伊達じゃないわね」
「私の予感ですと、そろそろシリアスな場面になりますので気持ち切り替えましょう」
「ウム。そうじゃな」
私の瞳が黄金に輝く。この扉の奥に最難関迷宮のラスボスがいるのだ。そのヤバい気配はここにいても感じ取れる。
「さぁ姫様。修練の集大成をこのオカリナに見せて下さい」
「無論そのつもりじゃ」
オカリナが扉を開けて私は中に入る。
「ほほう。キマイラか」
“三つの本能を併せ持つ、理性なき王”
古代魔術師によって造られた禁忌の合成獣。
ライオンの上半身、山羊の胴体、蛇の尾――その三つが同時に生きており、それぞれが別々の意志を持つという異常な構造をしている。
「オカリナよ。まずいぞ」
「何故です?」
「こやつ弱すぎる。三行で終われる自信ある。そうなるとページ数が余るぞ!」
「後日談で誤魔化しましょう!」
「バカを言え。貴様のことじゃ。更なる修練とか言って妾が酷い目にあうオチがよめておるわ」
「さすが姫様。未来を予測するとは」
「ここはなんとしても、こいつに苦戦しなければ。もうこいつの技全部わざとくらって、死にかけて復活して必殺技で逆転するくらいしないとダメじゃろうな」
「もはや戦隊ヒーローとやってることと同じとは。姫様は子供心も理解しておられるのですね。天に召された魔王様も喜んでるでしょう」
「結構ページ数使ったかの?」
「いや、あんまりです」
「仕方がない。おいキマイラ。技を出せ。出来たら長い名前がいい」
「さすが姫様。今のはスキル挑発です。見事な挑発でした」
するとキマイラが尻尾を振って、
「降参です。勝てる気がしません」
「お主、最難関迷宮のラスボスじゃろう! 降参するな! これではページ数的に妾が帰った後修練する羽目になるではないか!」
「いやぁ無理っす。さりげなく闇の衣まとってるじゃないですか。俺の攻撃届きませんよ」
「ふむ。ならば解こう。これで魔力による防備はない。遠慮なく攻撃してくるとよい!」
「ふはははは! 騙されたな! おまえらはここで殺されるといい!」
「情けないラスボスじゃ。闇の流星」
あっさりキマイラは倒された。
「しまった。つい」
「姫様さすがです。ちょうどいい感じで終わりました!」
「おおそうか!」
こうして私の修練を兼ねた迷宮攻略は無事に終わり、地上に戻ってきたのだが、
「宝箱?」
私はキョトンとしてしまった。そんな私をみてため息をついた迷宮の魔女。
「各階にありましたよ。それなりの金品財宝がそれぞれに入ってたはず。とってこなかったのですか?」
「文字数やページ数のことばかり考えて気づかなかった。そんなのあるなら最後ページ数足りないとかやらなくて済んだじゃない!」
「なんですかそれ。普通にやったら普通にまとまるようにプロット組めたはずですよ」
「あんたがプロットとか言うなぁ!」
落ち込んでいる私にオカリナが、
「姫様。今回はあきらめましょう。さぁ帰って更なる修練です」
「だから最後にそれねじこむなぁ!」
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