悪魔姫は世界征服よりも昼寝がしたい!

みずほたる

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伝説の薬師、草を食って現る

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プリンセス・サーバンツ姫様のしもべを設立して1週間。毎日施設にはしもべになろうとする者が並んでいるらしい。

「早く治癒師を見つけて病院を作らないと公約違反になっちゃうわね」

ヴィオラから状況を聞いてオカリナに治癒師を探させているのだがこれといって情報が入ってきていない。

「ま、焦りは禁物ね。ヤブ医者雇っても仕方ないし」

気晴らしに城の庭に出てみると、

「貴様ここで何をしてるのじゃ」

つい反射で絶望のオーラを放ってしまった。

その瞬間、周囲の草がバサァッとしおれた。

私の庭で草を食べている知らないオッサンを見たら、そりゃ絶望のオーラ放ってしまうよね。

「見ての通り草を食べてるだよ」

「食いたいなら森に行けばよかろう。妾の神聖たる敷地内に無断に忍び込んで草を食うとは、死にたいのか?」

「それはすまんかっただ。でもまぁよくこんな魔素を含んだ植物を生やしただ」

「魔素じゃと?」

「多分おめぇさんのその覇気を浴び続けてこうなっただな」

オッサンは立ち上がると、

「ここらへんの草もらっていってもいいべか」

「構わん。草むしりの手間が省けるととらえようぞ」

「さすが噂に名高い姫様だ。あのクソ勇者とは大違いだよ」

私はつい眉間にシワを寄せて、

「勇者じゃと? 貴様何者じゃ」

そんな時、オカリナが戻って来てオッサンの存在に気づいては、

「何故ここにおまえがいる!? まさか姫様の命が狙いか!」

大鎌を手に取ってかまえる。

「お主ら、知り合いか?」

「知り合いも何も伝説の勇者パーティの一人、薬師バスクラですよ。忘れたんですか?」

「忘れたも何も初対面じゃ。復活前の記憶はないと申していたはずじゃ」

「申し訳ございません」

オカリナが頭を下げるのを見て、バスクラが

「悪魔大元帥の姉ちゃんか。500年ぶりか? 元気そうでなりよりだ」

「なれなれしいぞ。私はあの時の恨み忘れていないからな」

「オラ、姉ちゃんに何かしただか?」

「何もされてない!」

「じゃあ恨まれる筋合いはねぇだな」

「しかし貴様は病気になったり怪我をした仲間を怪しい調合で治していたではないか」

「薬師だから当然だべ」

「ぐぬぬ。姫様。この者を殺す許可を下さい」

いきりたつオカリナを無視して、

「バスクラとやらは、妾のことは知っておるのじゃろう。なにゆえ来たのじゃ? 草が食べたくて来たわけじゃなかろう?」

「珍しい草の匂いにつられて来ただけだべ。姫様に興味はちっぽけもねぇだ」

「オカリナ。抹殺を許可する」

「お任せください!」

オカリナが大鎌を構えて、まさに突撃しようとしたその瞬間、バスクラは両手をあげて大げさに退き――変な笑顔を浮かべて緑色の液体が入った小瓶を見せて来た。

「まぁ待つだよ。お詫びにこの薬をやるだよ」

「姫様、騙されてはなりません。きっと毒です」

「美肌効果の薬だべ」

「仕方がない。もらってあげましょう」

「一気に飲み干すといいだよ」

オカリナは小瓶をグビッと飲むと、

『オカリナの魅力が1回復しました』

「何、今の声。一体どこから?」

オカリナは周りを見渡すと、

「天の声だべ」

「なるほど。理解しました。姫様。伝説の勇者に加担していた過去があるとはいえ、腕は有能です。姫様が守護する村の病院で働かせるのがよろしいかと提案します」

と言い、鎌を背中に戻した。

「ところでバスクラよ。何故勇者パーティーを抜けたのじゃ? 地位、名誉、金、全てを手にしていたじゃろう」

「追い出されたんすよ。馬鹿勇者が回復役はこんな巨大なオッサンさでなく若くて可愛い女の子がいいって」

「よくわからぬ」

「オラもそう思うだ。でも仕方ないから新しい薬を開発するため旅に出てたってわけだべ」

「そもそもお主、歳はいくつじゃ? 500歳以上は確定じゃろ? 人間にしては長生きすぎる気がするのじゃが」

「あぁそれは――」

バスクラは自分の腹をポンポン叩いた。

「自作の“若返り薬”を試してたら、こうなっただ。もう何年も歳を取らねぇ体になっちまった」

「副作用は?」

「腹が減る」

「……それ、完全に失敗ではないか?」

「いや、腹が減るってのは生きてる証拠だべ。オラ、腹が減ってるうちは生きる気があるんだよ」

「妙に深いことを言うでない!」

オカリナがあきれつつも、少しだけ感心したように腕を組んだ。

「姫様。やはりこの者、有用です。治癒師として雇用を提案します」

「ふむ。妾の領に病院を建てる予定じゃ。働きたいなら――雇ってやらぬこともない」

「ありがてぇだ!」

私は小声で笑った。

「病院を建てる公約、守れそうじゃな」

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