悪魔姫は世界征服よりも昼寝がしたい!

みずほたる

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シエスタは、会議を踊らせる

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「はじめまして。旧ミナエモン村、今は観光都市カスタネットの市長を任されておりますヴィオラです。今日は忙しい中お集まりいただきありがとうございます」

ホワイトボードの前で、エルフの市長ヴィオラが参加者に丁寧に頭を下げる。

「……カスタネットの市長は本当にエルフなんだな」

農業都市ティンカーベルの市長コナミが、初めて見たような顔で言う。

「俺とソプラノは知っていたぞ」

西村が肩をすくめ、隣の獣人ソプラノもウンウンと頷く。

二人とも、ハーモニカ(米)とピアニカ(漁業)の市長だ。

四大都市の市長が揃ったところで――

「なんで私まで会議に参加しないといけないのよ」

元ナチュラル王国王女フラットが、椅子にふんぞり返って文句を言う。

「新国家樹立に向けて、労働環境を早急に整えよって姫様が言ったのよ。で、フラットなら妾の期待に応えてみせるはずじゃ、って姫様が言ったから誘ったのよ」

コナミが説明すると、フラットは呆れた顔になった。

「労働環境ねぇ……そりゃ確かに、この国のみんな働きすぎよ。今思えば姫様の元でメイドやってた時が、一番労働時間短かったわね」

「働けば働くほど収穫があるからな。つまり豊かになる。いいことじゃないか」

西村の発言に、フラットは眉間を押さえた。

「それはわかる。わかるけど……休むことも大事よ。労働は身体が資本なんだから」

「ではおまえは休め。俺は働く」

「いやそうじゃなくて!」

二人のやり取りがエンドレスになりそうだったので、ヴィオラが話を戻した。

「……バランスをとりましょう。西村は、労働時間どれくらいがいいと思う?」

「24時間だ」

会議全員「はぁ!?」である。

「あなたバカ? 寝ずに働けって言うの?」

「三徹くらい余裕だろう」

「余裕なのはあんただけよ!」

「ではフラット、お前さんはどれくらいが適正だと思う?」

「8時間よ。これ以上働いたら脳みそ溶けるわ」

「残りの16時間……暇を持て余すだけじゃないか」

「“プライベートを充実させる”って言いなさいよ!」

コナミが、お茶を飲みながらさらっと言う。

「個人の自由でいいんじゃない?」

「会議の意味ないわね!? あなたは何のために来たのよ!」

おそらく会議が全然進まないと見たヴィオラは、姫様の意見を引き合いに出した。

「ちなみに姫様は――『頼むからシエスタだけは死守してくれ』と言ってたわ」

「なんだシエスタって?」

「昼食後のお昼寝タイム、らしいわ。私は正直いらないと思うけど」

ソプラノも同意する。

「いらないわね。昼休憩だけでいいわ」

「そのシエスタの時間は何時間なんだ?」

西村の質問に、ヴィオラはホワイトボードにさらっと書いた。

《シエスタ:5時間》

「午後はいつ働くのよ!!!」

コナミが叫ぶ。

「私もそう思って聞いたら――『30分働いたら家に帰りたい』と」

「意味がわからん」

「つまり、昼ごはん → 5時間昼寝 → 30分仕事 → 帰宅……ってことよね?」

コナミが指折り確認すると、全員が黙り込んだ。

――その時、西村が突然、何か悟ったように立ち上がった。

「わかったぞ!!」

「何がよ」

「姫様は、シエスタの時間“以外”、働くつもりなんだ!」

「何一つわかってないわよ、あんた!!」

フラットのツッコミが響き、ヴィオラはとうとう頭を抱えた。

「……この国、ほんとに大丈夫なのかしら……」

そんな時、フラットの持つ光の杖が幼女の姿に変身した。

「ナチュラル王国初代女王オルフェリア様!」

「フラットさぁ。アンタが姫様に呼ばれた意味を忘れたか。ご先祖様として情けない」

「オルフェリア様のお考えをお聞かせ下さいませんか?」

「そんなに昼寝したら夜眠れなくなると思うんだよね」

「そっち!?」

「それに昼寝するくらいなら、美味しい物食べた方がいいと思うんだけど」

オルフェリアの言葉に、

「どっちにしても、国が成り立たないわよ」

と、コナミ。

「そうか。わかったぞ!」

西村がまた席から立ち上がる。

「姫様自身が何とかするから、俺らには休めってことじゃないか?」

「え? そういうこと?」

「民を愛する姫様だ。自らを犠牲にして民のために一人で働くつもりだ。しかし、姫様だけに働かせるわけにはいかん! 俺は働くぞ!」

「そうね。姫様だけに甘えるわけにはいかないわ。だって自分の国でもあるんだから!」

沸き立つ会議室であった。




その後、ミナエモン城。

「姫様。会議の結果がでました」

オカリナは一枚の書類を渡して来た。

「労働時間。一日八時間。繁忙期は残業あり。シエスタはお気持ちで十分です」

お気持ちってなんじゃ?

私は書類を読み終えると静かにため息をつくのであった。

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