異世界へ追放された魔王、勇者召喚に巻き込まれて元の世界で無双する

朔日

文字の大きさ
105 / 121
どうも、聖剣です

どうも、ダンジョンです

しおりを挟む
「大きいです…」
「っていうか…」
「深い…」
「入れるのか…?」

 岩肌を無理やりえぐり取ったかのような洞穴の前に全員が立つ。

「これがダンジョン…」

 それがアゲハ以外の、全員の感想だった。

「フレイたちも初めてなのか?」

 さらっと自分も初めてであるかのように振る舞うアゲハ。

「ダンジョンは閉鎖空間で魔物のテリトリーだから、Aランク以上じゃないと入れないんだ。Aランクでも学生のうちは念の為、安全重視で立ち入り禁止だし」

「そうなのか」

「単なる洞穴ならともかく、ダンジョンは魔物が無限に溢れ出てくるからな。一般人や子どもは近づかないように言われるんだ」

 補足するクレア。

 ルイスは入っていたが、あれは闇ギルドの依頼だから入れたということか。
 いや、でもルイスなら表でも入っていそうだな。アゲハは思い直す。

 アゲハ自身はといえば、人間界のダンジョンに入ったことは……なくはないだろうが、きっとごく数回だろう。ダンジョンを外から吹き飛ばしたことのほうが多いはずだ。

 ちなみに魔界のダンジョンには何度か入ったことがある。ダンジョンは魔物の家も同然。パーティーに呼ばれることもしばしばあった。

 そんなことを思い出しているうちに、フレイを筆頭にして全員が魔武器を携え、ダンジョンの入口である岩壁の穴をくぐり抜けてゆく。

「不法侵入か」

「やめてくれよアゲハ。なんか悪いことしてる気分になるだろ」

 勝手に他人の家に上がって武器を持ち逃げするのは十分に悪いことだと思うのだが。地球なら空き巣や強盗と呼ぶわけだし。

 しかしながら人間からすればダンジョンは魔物の巣窟で、素材集めの場所で、ランクアップの試験場でもある。そこに罪の意識などあるはずもない。

「聖剣っていうからには、1番奥に保管されてんのかな?」

「その可能性が高いだろうな」

 先頭のフレイとクレアが暗闇を進みつつ話をしている。

 そこへ、明るい入口に比較的近い場所にいたリズベットが勇の背中を蹴り飛ばした。

「ぐはっ! え!? 何!? 敵?」

「光属性あるんだから明かりくらい出しなさいよ」

 ズサァーと転がって寝転んだままキョロキョロしている勇に向かってだと酷く聞こえるが、言っていることはまともである。

「勇様になんてことをーー」

「あ、確かに! 【プリズムライト】!」

 リズベットに詰め寄ろうとした王女をド天然発言で押しのけ、勇は洞窟内に大きな光の球を浮かべた。

「目が! 目がぁあ!!」

 驚くなかれ、フレイの台詞である。

「こちらにもラピ◯タが存在しそうだな」

 雲の中に隠れた島が実際にあるかはさておき、アゲハは某国民的アニメを思い出して感心していた。

 そのとき遠くに聞こえてきたのは、地面を大きなものが這いずり回るかのような、地響きのような重低音。

「何か来るぞ!」

 気配に敏感なアゲハと、土属性のクレアだけが気づいた。クレアの警告に、全員が魔武器を構えて奥を見つめる。
 近場にしては眩しすぎる勇の光球は、広い洞窟をすべて照らすには心許ない。奥は依然として闇に溺れたままだ。

「……伏せろ!」

 暗闇の中に赤い点が浮かんだ――と暗視できるアゲハだけが視認した瞬間だった。アゲハの呼び声に全員が地に伏すと同時に、魔法の刃が全員の上をものすごい勢いで通り抜けていく。当たっていれば全員仲良く即首ちょんぱだったことだろう。

「あれはワイルドベア……いや、ダークベアか! 聖剣の近くになぜ闇の魔物が…」

「考えてる暇はなさそうだぜクレア。どうするよ」

 のっしのっしと歩いてついに姿を現したダークベアはゆうに3メートルを超える巨体をのそのそ揺らしながらなお接近してきていた。絶対にダンジョン入口付近に現れる魔物ではない。黒い全身に赤い目のダークベアは、すでにダンジョンボスといった貫禄を醸し出している。

 クレアとフレイは膝をついて立ち上がろうとする。
 アゲハも立ち上がり、勢いよく地に伏したせいで咳き込んでいたペタとリズに手を差し伸べる。

「皆は僕が守る!」

 カチッ。

「え?」

 勇が飛び出そうと――なんなら起き上がろうとした瞬間だった。膝をつき壁に手をついた瞬間、壁が四角く凹んだ。間抜けな声は体勢を崩した勇のものだ。

「もしかして……」

「ダンジョントラップだ!」

 気づいた頃には、地面に大穴があき、全員が落下している最中だった。

「落ちてるぅううー!!」

 誰かしらの叫びがダンジョン中にこだました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...