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田中さんを連れての登城

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 「いやぁ~、武蔵君は遠慮しない感じなんだね?来る時に家を見たけど、現代の部屋と然程変わったように感じなかったから僕だけ違う所に行ったのかと思ったよ」

 「いやいや。やっぱ快適に過ごしたいじゃないすか!?お城もまあまあ凄いですよ!電気類は設備しました!もう少し後にエアコンとか冷蔵庫を設置するつもりです」

 「そっか。その時は僕にも言ってほしい。手伝うからさ」

 田中さんは本当に優しい人だ。設置する時は本当に手伝ってもらおう。

 「なんだい?新しい人を雇ったのかい?」

 「あっ、お婆さん?この人は田中さんって言ってオレの先輩です!凄い人なのですよ!」

 「ゴホンッ・・・御婦人!僕は田中次郎と申します。よろしくお願いします」

 「御婦人だなんてやだわ!こんな年増にそんな優しく言うなんて!これを持って帰りなさい!売れ残ったものだけど食べれるから!」

 なんだ!?田中さんは戦国時代ではかっこいい部類なのか!?

 「僕は嘘は言えない人間です。大根ですか!?僕は大根が大好きなので助かります!いただきますね」

 いや嘘しか言ってねーじゃねーか!?何が『嘘は言えない人間です』だよ!?どの口が言ってるんだよ!?

 それから田中さんもオレの店に立ってもらい、軽くお金の事を言うと、さすが現代人。算数は簡単だ。

 相変わらず昼まで客はたくさん来てもらい、用意した缶詰や化粧品類、衣服等なんかもほとんどが売れた。

 「兄ちゃん?私は全部売れたから帰るよ?また7日後なのかい?」

 「あっ、お婆さん!お疲れ様です!そうですね・・・また7日後になるかと思います」

 「そうかい。兄ちゃん達の横で商いできるから私が作った野菜もよく売れるんだよ。ありがとうね?」

 これが相乗効果というやつだろう。

 そしてやはりお昼には城下のお店も軒並み閉店だ。

 オレ達も店を閉める事にして荷物を片付ける事にした。

 「うん?武蔵君?もう終わりなの?」

 「そうなんですよ。戦国時代って仕事は昼くらいまでみたいなんですよ」

 「へぇ~そうなんだ。これからは何するの?」

 「帰ってご飯食べてお金の計算ですかね?それに田中さんをみんなにきちんと紹介していないので、紹介を兼ねてこの時代のご飯屋さんなんかいかがですか?」

 「おっ!いいね!武蔵君!お願いするよ!」

 「あやめさん達もそれでいいかな?」

 「はい!」


 あやめさんと伊織さんが連れて来てくれたところは茶店?のような場所だ。時代劇で見るような、表に木の長椅子が置いてありそこに座って食べるところだ。

 ちなみに片付け中に例の電動アシスト自転車の事を田中さんにツッコまれたがディスプレイ商品だと言い切った。

 「よし!じゃあ!お疲れ様!!!」

 「「「お疲れ様です!!」」」

 店の商品はうどんだけだった。まぁこれに関しては文句言ってもしょうがない。

 「う~ん・・・味が薄いね」

 「田中さん!そんな事言ってはいけないですよ!」

 「そうだけど・・・・。醤油の作り方とか教えてないんだと思ってね?」

 「まぁそれは追々・・・とりあえず、あやめさん、伊織さん、いろはちゃん、太郎君です。オレの家で住み込みで働いてくれてる人達です!」

 「若い子達だね?田中次郎といいます。これからちょくちょく来ると思うけどよろしくね?」

 「はい。合田様の許嫁のあやめと申します。田中様の事は合田様にーー」

 「許嫁だと!?武蔵君!?どういう事だね!?そんな事、ぼ、ぼ、僕は聞いてないぞ!?」

 「いやそりゃ言うわけないでしょ!?今日初めてちゃんと紹介したのですよ!?」

 「○▼※△☆▲※◎★●・・・・」

 いやいや何をブツブツ小声で言ってるんだよ!?田中さんは子供かよ!?

 それから色々話した。田中さんがやりたい事、伊織さんや太郎君達も商売が楽しいようでオレが居ない間も商いをしたいと。

 「いろはちゃんもそんな感じかな?」

 「はい!甲賀の里に居た時と比べられないくらいの生活になりました。合田様ありがとうございます。もう人を殺めるような事はしたくありません」

 は!?いろはちゃんって人殺した事あるの!?

 「い、い、いろはちゃんだったかな!?人を殺めるって・・・」

 うん。田中さんも動揺しているな。

 「田中様、これより先は私から申します。私達は元々草でした」

 あやめさんは往来の人に聞こえないような声で話をした。元々草だった事。草とは所謂、未来では忍者なる者の事だと。

 オレが色々未来の事を教えているから覚えたのだろうの思う。

 「そんな汚れた身分もない私達を合田様は家を用意してくださり、日の目に当たる仕事を用意してくださいました。私は合田様のためならば何でも致す所存。それが誰であっても・・・」

 「あやめ・・・あんた・・・」

 「お姉ちゃん・・・」

 いやいやあやめさん!?そんなにオレのこと思ってくれてたの!?

 「田中さん?オレもあやめさんを幸せにします。なんならオレは帰られなくなってもいいかとすら思います。まだそれは早いとは思いますが・・・」

 「うん?帰られなくなっても?」

 オレはドアを通れる秘密を田中さんに教えた。田中さんもその覚悟があるならそうすると良いと。

 「本気なんだね。ならこの僕が二人の結婚を許可してあげるよ」

 は!?何で田中さんの許可がいるんだよ!?あんた何者だよ!?

 「この話はとりあえず終わりにしましょう。田中さんはこれからどうします?あっ、織田様に一度紹介したいのでこの後時間ください!」

 「え?織田様って織田信長の事?」

 「ちょ!呼び捨ては気をつけてください!マジで首が飛びますよ!?」

 「あ、お、おぅ・・・ごめんごめん。会ってどうすればいいの?」

 「田中さんの事を少し言ってます。織田様に上手くプレゼンすれば色々助けてくれますよ」

 「分かった!織田信長公に会おう!!」

 いやいやまた変な呼び方だけど実際会ったらビックリすると思うぞ!?あの紫のオーラに!

 その後すぐに遠藤さんに渡りをつけてもらい登城することとなった。
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