felice〜彼氏なしアラサーですがバーテンダーと同居してます〜

hina

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第二夜 守りたい夢

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「えっ!奏多が悩み事があるから、聞いてほしい?」

茜は最近機嫌が悪かった。
それは匠に大物の金蔓が貢ぐようになり、相手にされないようになっていたからだ。
いつも茜は匠を友人だと言っていたはずが、本当は恋をしていて嫉妬をしているのかただ張り合ってるだけなのか、その真意は陽菜には分からない。

そんな茜をなんとか説得し、奏多と三人で飲みに出かけたのはあれから一週間経ってからだった。
陽菜と圭の関係を勘違いして拗ねた奏多を宥めた苦労もそこにはあった。


午後9時、バーホワイトにて。
やはり集まるのは馴染みのホワイトだった。

そして今日は圭が休みでいない。
圭が休みの日は自宅で夕飯を作ってもらいのんびりしている陽菜は内心残念だった。
しかしこの問題を解決したいと毎日モヤモヤしていた。


しばらくお酒に嗜みながら、陽菜は奏多にややを入れて悩み事を茜に伝えさせた。
そして茜はその場の重たい空気を一掃するかのようにはっきりと告げた。

「あんたそんなことで悩んでんの。」
「え、茜…。」

予想外、いや茜らしい男気のある一言で奏多はたじろぎ何も言えなかった。
間に座っている陽菜は異様に緊張し、茜の次の言葉を待った。

「あんた医者になりたいんでしょ?それなら早く仕事なんて辞めて予備校に入るなりして、大学に行きなさい。」
「…茜さん。」

奏多は瞼いっぱいに涙を浮かべ、茜を見つめていた。
陽菜は茜の初っ端から厳しすぎる言葉に戸惑ったが、やはり信頼する先輩の助言が奏多にはピッタリだったようだ。

「男なら泣くな!頑張れ!」
「私も応援してる。」
「とりあえず、親に明日にでも話してきます。」

泣くのを堪えた奏多は憑き物が取れたように満面の笑顔でそう言った。
陽菜はその笑顔に心底ホッとし、茜の肩を叩いた。

「さて、今日は陽菜先輩の奢りってことで飲みましょう。」
「はーい!」
「えっ、なんで私の…。」

茜のあっけらかんな一言に陽菜は戸惑いそう言うと、茜のつり目に強く睨まれた。

「私、匠の金蔓のせいで金欠なの。無理ならマスターにつけておいてもらおう。」
「分かりました。私が払います。」

そもそも奏多から最初に相談されて役に立たなかった自分が茜に持ちかけた案件だ。
陽菜は渋々承諾し、その日はまた三人で酔いつぶれるほど飲んだのである。


しかしその日の陽菜が出した大金があまり意味がないものだったと分かったのは、数日後のことだった。

「茜さん、陽菜さん!!」

午後6時、産婦人科病棟にて。
まだ仕事中である茜と陽菜の前に、私服姿の奏多が現れた。
陽菜は奏多の顔を見て、なんだかデジャブを感じた。

「どうしたの?」

先に駆け寄ったのは陽菜だった。
奏多は目を腫らしており、またなにか尋常じゃないことが起きたのに違いなかった。
しかしその姿は激務を処理していた茜の逆鱗に触れてしまった。

「そんな姿で産婦人科病棟に来ちゃダメでしょ!大人しく下のラウンジで待ってなさい。」

怒声を浴びせられた奏多を小さくして、トボトボと病棟から出て行った。


それから一時間が経ち、仕事を終えた陽菜はルーナに行く予定であった茜を無理無理ラウンジに連れて行った。

「ごめんね、お待たせ。」
「さっきはすみませんでした。もうなんか混乱してて。茜さんに言われて少し頭冷えました。」

奏多は今日は休みだったらしい。
どうしても陽菜や茜に助けを求めて来たようだった。
茜は渋々、奏多の向かいのソファーに座り足を組んで言った。

「反対されたんでしょ?親に。」
「なんで分かるんですか!その通りです。」

陽菜も奏多と同様、茜の言葉に驚愕した。
そして奏多は自宅で親から反対された内容を話し始めた。

両親共に、自分たちのために20代半ばで仕事が落ち着いた息子にまた大学受験や大学の講義など苦労をさせたくないと反対されたのであった。
そんな苦労をさせるくらいなら、病院を売るからそのお金で裕福な暮らしをしてほしいと言われたらしい。

そんな話を聞いた茜は身を乗り出し、奏多に熱く語り始めた。

「私は親の気持ちなんて分からないし、親子の愛情とか知らないけど。奏多の両親は間違ってる!私は奏多の両親だけは、奏多の両親への思いを受け止めてほしかった。さあ、今から病院に乗り込むぞ。」
「え、本気で言ってる?まずくないそれ。」
「確かに25歳にもなった息子のために女が乗り込んでくるなんて親も恥ずかしいかもしれないけど、私はやるぞ!」

陽菜はすかさず制止しようとしたが、茜は有言実行、二人を自家用車に乗せてナビを使い奏多の病院へ乗り込んでいった。
肝心の奏多は呆気に取られて、何も言えないまま着いていくしかなかった。

また陽菜はこれからの展開に不安が募った。
そう、茜は誰よりも熱い女だったのだ。

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