色んなストーカー

なゆか

文字の大きさ
1 / 53

執着とバランス

しおりを挟む
牧野「最悪、またやられた」

教室で友達の牧野ゆめが頭を抱えている。

入江「最近多いね、今度は何盗られたの?」

牧野「早苗とお揃いのミラー」

入江「あぁ、アレか」

牧野「お気にだったのに~」

ゆめは、私、入江早苗の小学校からの幼馴染み。

持ち前の明るさと、
人気雑誌のモデルをやっていて
学校ではかなり人気者である。

ファンクラブがあるとかで、ゆめは男女問わず
魅了してしまうせいか、私物がよく盗まれる。

入江「また買いなよ」

牧野「あれ、限定品なんだってば~高かったし」

入江「高いの?」

牧野「そりゃ~って、遠慮とかしないでね!
早苗は、私の大親友なんだから」

ゆめは、キラキラとした女子。
それに比べて、私は地味な為、
何で仲良いんだと周りから妬まれる事も多々あり、
ゆめに迷惑が掛かると
何度か距離を取ろうとしたが
ゆめは私を離さなかった。

牧野「早苗は、ずっと私と一緒ね」

そう言って、中学、塾、高校と
様々な事がゆめと一緒だった。

入江「とりあえず、職員室行ってみたら?」

牧野「なんで?」

入江「もしかしたら、忘れ物に
あるかもしれないよ」

牧野「うぅ~、可能性はゼロではないね…
行ってくるわ」

ゆめが教室から出て行った途端に、
クラスメート達が近づいて来た。

「また盗難?」

入江「今度は鏡がないみたいだよ」

「ゆめちゃん、ファン多いからなー」

「入江さんも同じの持ってるの?」

入江「色違いだけどあるよ」

「まじ羨ましいんだけど」

「私もゆめちゃんと親密になりたい~」

今のクラスの子達は、ただのゆめのファンで
私に危害を加えて来るような過激派じゃなくて
安心している。

玉木「黄色のだよね?」

1人を除いての話だが…

「げっ玉木が入って来ないでくんな」

「つか、なんで玉木が知ってんの?きっも」

玉木君
彼はゆめの過度なファンである。
ゆめのモノを盗んでるのは彼なんじゃないかと
言われるくらいゆめに信仰している。

「男なのに、スカートとかキモいんですけど」

玉木君はゆめに憧れ、
男子なのにスカートを履いている。

元々女顔なのと華奢な身体付きの為、
一見本物の女子に見える。

そんな彼はクラスメイトから嫌悪され、
基本1人でいるようだが、
ゆめが私から目を離す度に話しかけて来る。

最初は私が邪魔なんだろうなと
嫌悪感を剥き出しな態度だったが、
回数が増えるにつれ、
やけに馴れ馴れしくなっていった。

玉木「入江って、ゆめちゃんから
早苗って呼ばれてるよね?僕もそう呼ぶね」

玉木君は他のファンの子と同じで、
ゆめの話を聞きたがる。

玉木「それ、知ってるよ。
あっゆめちゃんが戻って来た、
またねっ早苗」

ゆめが来ると玉木君は席に戻り、ゆめからも
ヤバかったら言ってと言われていたが、
いつもの事だしなと平気だと流した。

しかし…

玉木「ゆめちゃんって、
本当に早苗の事大切に想ってるよね。
ゆめちゃんが、早苗の事大好きなら
僕も早苗の事が大好きだよ」

そう言われ、私は初めて彼にゾッとし、
今は警戒するようになった。

牧野「げっ撮影入った」

五時限目に入る時にゆめのスマホが鳴り、
仕事だと中抜けする事になった。

牧野「これも未来資金の為っ」

ゆめはお金を貯めている。

その未来資金を貯めている理由は、
モデルなどの芸能関係でもなく、
自分の家族の為でもない。

牧野「早苗に不憫ないように
お金たくさん稼ぐからね」

全て私の為だ。

ゆめは幼馴染みで仲は良い、でも金銭の面で
お世話になるなんて嫌だと何度も伝えたが、
私とずっと一緒に居る為だと折れなかった。

ゆめが私に固執するのは、
この足のせいなのかもしれない。

牧野「ちゃんと、タクシーで帰りなね」

ゆめはそう言って、教室から出て行った。

「入江さん、帰りは手伝いするね」

私の右足は義足だ。
それは小学生の時、ゆめを強姦から守る為に
足を切りざるえなくなる程の怪我を負い、
松葉杖を着く生活を送っている。

この足がゆめの重荷になっているんだ…
何度も私はゆめにとって邪魔な存在だと言われ、
ゆめに、かまってもらう為に
わざと怪我したんだと言われた事もある。

入江「ありがとう、だけど大丈夫だよ」

「そ…そう?」

その目…同情、そして腫れ物に触れるような態度。

心配をしてくれているのは理解してるだけど、
この壁は崩れる事は無いんだろうと思う。

放課後

タクシーで帰るには、
手持ちのお金が足りなかった為、
歩いて帰る事にした。

ざわざわ

「あれ…ゆめちゃんの」

「あぁ…1人で」

周りのざわつきに、
1人でいる時はいつもコレだと慣れっ子だった。

玉木「早苗、僕が送るよ」

入江「…え、1人で大丈夫だよ」

玉木「駄目駄目、早苗はそそっかしいからね」

玉木君は笑顔で私の腕を掴む。

玉木「じゃあ、行こっか」

周りの人は何も言わない為、
私は引き摺られるように
玉木君について行く。



玉木「目障り」

入江「…ごめん」

玉木「そうやって、同情買ってゆめちゃんに
守ってもらって」

入江「うん」

玉木「ゆめちゃんが君を手離せない気持ちが
嫌ってほど分かってくるよ」

教室とは違く、ローテンションな玉木君は
ブツブツ言いながら、タクシーを呼んだ。

「どちらまで?」

玉木「×市二丁目5の2までお願いします」

私の家の住所をなぜ知ってるんだと、
一緒にタクシーに乗り込んだ玉木君を見る。

玉木「ゆめちゃんの知ってる事を、
僕が知らないわけないでしょ」

そんなのストーカーじゃないかと、
さらにゾッとして窓際に追いやられる。

そして、タクシーは家に到着し
玉木君がお金を肩代わりし、一緒に降りた。

入江「お金…すぐに返すから」

家に入って来る勢いの玉木君を押す。

玉木「入ったっていいでしょ」

入江「駄目」

ガチャッ

「おい、何してんだよ」

玄関前で揉めていると中から兄が出て来た。

玉木「こんにちは、
早苗さんの友達の玉木って言います」

「友達?お前、ゆめ以外にお前を友達って言う奴
居たんだな?」

入江「…」

「で、タクシーで下校なんて大層な御身分だな?」

こんな兄の態度に、玉木君の顔から笑みが消えた。

入江「…タクシー代を」

「金もねーのに、その友達とやらに金借りたのか?」

兄は私の髪を掴み、引っ張った。

「で、いくら?俺が返してやるよ」

玉木「…え」

入江「じ…自分で」

「お前に金なんてねーだろッ黙ってろ」

バシンッ

玉木君の前で平手打ちをくらい、倒れ込む。

玉木「ちょ…何してるんですか⁈」

流石の玉木君も引いているようで、
私の横にしゃがみ込んだ。

「何って、しつけだ。
友達に金を借りるなんて悪いことしたからなー」

玉木「しつけって」

「で、いくら?」

玉木「…え」

「いくらかって、聞いてんだけど」

玉木「…1200円です」

玉木君は兄の迫力にタクシー代を答えた。

「分かった」

兄は廊下を戻って行く。

玉木「ねぇ、どう言うこと?
あれ、お兄さんでしょ」

入江「変なところ見せてごめんね」

玉木「そうじゃない、早苗は虐待されてんの?」

入江「…違うよ」

玉木「違うって、ならさっきのは何」

入江「…お金の貸し借りに厳しいだけ」

玉木「嘘だ」

ガチャッ

「ほら、釣りはいらないから」

兄は2千円を私の代わりに玉木君に差し出すが、
玉木君は受け取らなかった。

玉木「お兄さんは、普段から早苗さんを
殴ったりしてるんですか」

「あ?」

入江「玉木君…やめて」

「なんだ?お前、何か言ったのか?」

入江「…い…言ってない」

「お前が何か言わなければ、
こんな質問されねーだろッ」

兄は私の松葉杖を蹴り飛ばした。

玉木「なッ…」

入江「玉木君、タクシー代受け取って」

玉木「…な…何言ってるの」

入江「今日はありがとう、だから帰って」

私はこれ以上見られたくないと、玉木君に無理やり
2千円を握らせて、玄関の外へ押しやる。

「せっかくの友達にあの態度?
まだ、しつけが必要だな」

兄は私の髪を掴み、リビングまで引っ張られる。

入江「痛い…ッ…」

「お前に痛がる権利があんのか?
お前のその足のせいでどんだけ俺に迷惑を掛けたと
思ってんだよ」

バチンッ

兄の手が再び私に振り落とされる。

「お前は死ねば良かったんだ」



赤く腫れた頬、唇が切れて血が滲んでいる。

入江「ゲホッゲホ…」

お腹もあざが出来るくらい蹴られた。

昔は優しかった兄。
でも、私の足がこうなってから変わった。

元々新学校へ通う予定だった兄だが、
私の足のせいで学費が全て私の手術、
義足代になり諦めざる得なくなった。

それに加えて、高校でいじめを受けていたらしく
引き篭るようになった。

私のせいで全て台無しだと、非難し
私に暴力を振るうようになった。

両親は元々兄への愛情が深かった為に、
兄のやる事に口出しは一切なく、
私の味方はゆめだけだった。

やっぱり、私はゆめの足枷だと改めて理解する。

入江「あの時、私は死ねば良かったのかな」

ガラッ

その時、窓が空いた。

~~

次の日の学校

牧野「…早苗が昨日から帰ってないんだって…
アンタが早苗と一緒に居たって聞いたんだけど」

普段お洒落な牧野とは打って変わり、
髪がボサボサで気が立っている。

玉木「ゆめちゃんが、僕に
声掛けてくれるなんて光栄です」

牧野「アンタが何かしたんじゃないのッ
早苗をどこにやったのよ!」

静まり返る教室内に牧野の怒鳴り声が響き渡る。

玉木「ちゃんと家まで送りましたよ」

牧野「家まで?」

玉木「はい、あのお兄さんにも会いました」

牧野「…それで、早苗は」

牧野「彼女がまさかお兄さんに
暴力を振るわれているとは思いもしなかったです。
ゆめちゃんがお金を稼ぐ理由が分かりました」

周りに聞こえるような声量で言った玉木に、
クラスメイト達は動揺し始めた。

「暴力って…」

「それ、思い当たる節あるかも」

牧野「…ッ」

牧野は唇を噛み締め、玉木を睨む。

「ゆめちゃん…私、前に入江さんが着替えてる時に
背中に痣があるの見たとこあるよ」

牧野「分かってる…でも、こんな形でバラすなんて」

玉木「ゆめちゃんは本当に素晴らしい…まさに
女神様だよ。早苗をあの家から出させる為に
モデルをやってるんだよ、本当に凄い」

その言葉に称賛の声が上がる。

「ゆめちゃん、凄い」

「カッコいい」

「偉い」

その声に青筋を立てる牧野に玉木は笑い掛ける。

玉木「僕は何も知らないよ」

牧野「…嘘ついてたら許さないから」



それから、3日後…

牧野は更に荒れていた。

牧野「あの家…捜索届けはおろか…
警察にも言ってないなんて」



一週間後…

牧野「…あのクソ男…殺してやる」

牧野が入江家に押し入り、警察沙汰となり
モデル引退したと報道された。



ガラガラッ

「え、ゆめちゃん⁈」

牧野「アンタじゃないッ
早苗をどこにやったのよッ」

牧野が停学期間中、授業を受けていた玉木に殴りかかり
牧野は学園から退学となった。



そして、入江消失から一ヵ月後…

玉木「君のせいでゆめちゃんは全て失ったよ」

先程ニュース速報で
牧野ゆめが自殺したと報道された。

入江「…そっか」

玉木「これで君の決断が
間違っていた事が分かったよ。
ゆめちゃんにとって君は特別な存在だったんだ」

足枷である私がゆめの前から消えれば、
ゆめは自由になれると思っていたが違った。

玉木「ゆめちゃんは死んじゃったけど、
これからは僕が…いや
私が牧野ゆめとして、早苗を守るからね」

ゆめになった玉木君は、
私の頭を撫でた。

玉木「早苗、ずっと一緒だよ」

私は死ねば良かったんだなと
微笑むゆめに微笑み返した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...