「「中身が入れ替わったので人生つまらないと言った事、前言撤回致しますわ!」」

桜庵

文字の大きさ
118 / 170
最後の異世界生活~美桜編~

~突然の…~

しおりを挟む
美桜達がダリアやアザレアに苗植を終えてから一週間後。

この一週間の間、美桜やサントリナ、アイリスは孤児院に行き、孤児院の大人達とスリジエの花畑の手入れをしながら作れる数の苗を作ったり、枯れかけの花達を土に混ぜ、腐葉土を作ったり、麻の繊維の枯れた物を集めたりとせわしなく動いていた。

美桜達が作れるだけ作った苗は、街の人達と協力しながら、アザレアのまだ植えていない花壇に植えた。
残った苗はアザレアの次に許可が下りた街に植え、その街でも苗植の話題が広がっていた為、手伝いを申し出る人達で溢れた。

今回の苗植の段階では、保管分は確保出来そうになかったが、苗植は着々と進んでいき、植えていった花壇の手入れをしながら、今後、時間を掛けて花を国中に植えていき、美桜の考案のように保管し花の入れ替えを行っていく事になった。

無論、国民の職になるように手筈は整っている。


――応接室。
美桜やアイリス、サントリナの三人は食事を終え、応接室で今後の作業の話し合いをしていた。

「サントリナお姉ちゃんやアイリスさん、街の皆さんのおかげで作業もだいぶ早く進み、あとは開花を待つだけですね。あとは…今後の作業なのですが…。苗作りから手入れまで一連の作業は全部、職になって、街の人達が本格的に動いていくのですよね。もう、私達が出来る事はないんでしょうか…。」

「たしかに、思ったよりだいぶ早いわ。何事もなく順調に進んでよかったわ。私達に出来る事…。そうねぇ…。影からの支援…と言ったとこかしら…。けど…その辺はお父様やお兄様達がしてくださっているから実質やる事…ないわね…。」

「そういえば、最近、私達が街にずっと出掛けてばかりと言うのもあるとは思いますが、オリヴァー様やフロックス様、殿下を見かけませんわね。フローライト家でもお見掛けしないのは珍しいですわ。」

今後の作業の話し合いのはずが、話がそれつつあり、アイリスが疑問に思っていた事を口にした。
アイリスの疑問に答えたのはサントリナだった。

「お父様達なら王宮で泊まり込みで仕事をしていると執事のカクタスが言っていたわ。なんでも、他の街からの旅人…いえ、観光客…が多くなっているのだとか。もともと、炭鉱から発掘される鉱石を加工して貿易はしていたのだけれど、今回のスリジエの花の件やアザレアの件で国が賑わいを見せているから、他の国からの商人もノリに乗ってあちこちの国で話を広めているみたいなの。」

サントリナの説明に納得した表情を見せた美桜とアイリス。
アイリスはふと思い出したように、言葉を発した。

「それで街中に人の出入りが多かったのですね。そういえば、王都のダリアでアザレアの事がすごく話題になっていて、アザレアに訪れる人が増えたと言っていましたわね。ダリアの人達はオシャレや新しいものに目がないので、そう言った類のものが、人の口から広がるのは早いのですよね。」

アザレアに人が溢れるのは良い事だと美桜は少し誇らしげに話を聞いていた。
美桜はまたアザレアに行き、今度は何か出来る事はあるか話を聞きたいと思いをはせていた。


そうして、雑談をしながらしばしの休息とも言える一日を過ごしていた矢先の事だ。お茶のおかわりをもらいに、使用人がいるであろう廊下に向かおうとソファから立ち上がった途端、急に目の前が暗くなり、地面に座り込んでしまった。

美桜は自分に何が起こったか訳が分からず、体に力を入れ、どうにか立とうとするが、うまく力が入らず立てずにいた。
美桜の血色の良かった顔色が次第に青ざめ始めた。

そんな美桜の様子を見たサントリナやアイリスは慌てて美桜に駆け寄った。
声を掛けるが、美桜に届いているのかいないのか、反応が返ってこない。
そうして幾度か声を掛けていたが、美桜の意識が突然途切れ、その場に倒れた。
目の前で起こった突然の出来事にサントリナやアイリスまでも顔を青ざめ、慌てふためく。

だが、いつまでも慌てているだけではいけないと、自分に言い聞かせ、どうにか冷静を保とうとする二人。
サントリナは美桜の体を仰向けにし、アイリスは慌てて廊下に飛び出し、廊下にいた使用人に声を掛け、医者の手配を頼んだり、屋敷の手の空いている使用人を集めてもらうように頼んだ。

そうして、騒ぎを聞きつけた屋敷の使用人達が応接室に集まり、その中の一人が美桜を部屋に運ぶと、申し出る者がいたのでそのまま任せる事になり、残った者達は王宮にいるであろうオリヴァー達に連絡を出したり、医者の手配をしたりと、フローライト家は一時騒然となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...