陽のあたる場所【加筆訂正中】

たまゆらりん

文字の大きさ
4 / 134

2

しおりを挟む
「髪染めてなにイキってんだよ。お前みたいガリガリのチビ、どう足掻いたってただのいじめられっ子だから」



  廊下でいじめっ子でヤンキーの遠藤友紀(えんどうともき)達に捕まり、人目のない踊場へ連れていかれる。
  遠藤とは保育園から一緒で、ずっと同じクラスだ。保育園の年中までは名前の順で俺の次だった。
  子供の頃から俺は、ずっとこいつにいじめられ続けてきた。



「髪染めたら、余計に女みてぇだな」



  逃げ出せないように、前方を3人に囲まれて、壁際に追い詰めらる。
  遠藤に乱暴に髪を鷲掴みにされた。 
  今まで怖くて仕方なくて、逆らった事は一度もなかった。



  でも、今日からは変わらなきゃいけない。



  強くなりたくて

  変わりたくて

  髪を染めて、ピアスの穴を開けた。

  こんな事で変わる訳がないのは、わかっていた。

  それでも、形から入る事で、何かが変わってくれるという『可能性』を信じる事にした。



  覚悟を決めて拳を握り、嘲笑う遠藤を睨み付ける。


「はぁ?それでガン飛ばしてるつもりかよ!」



  いつも俯いていたから、まともに遠藤の顔を見るのは久しぶりだ。
  強面な顔の眉間にシワが寄り、益々凶悪な面構えになっていて正直怖い。
  上背もあって見下ろされてるから、威圧感に体が強張る。


  背中を冷たい汗が伝い、体が微かに震えているのがわかった。



  ーー目を逸らしたらダメだ。



  不意に遠藤は不敵な笑みを浮かべ、親指で唇をなぞってきた。



「煽ってるようにしか見えねぇよ。流石ヤリマンでビッチの子供だな。ほら、指しゃぶれよ」



  唇の隙間から親指を挿し込み、歯を抉じ開けようとする。
  そんな事したくなくて歯を食い縛るけど、力の差は歴然で、指を捩じ込まれてしまう。



「痛ッ!!!」



  侵入してきた指に、思いっきり噛みついた。



「おかまの癖にふざけんなよ!」

 

  頬を思いっきり張られた。
  軽い目眩がして、打たれた場所は熱を持ちじんじんと痛む。
  他人に明確に暴力を振るわれたのは、生まれて初めてだった。



「いつもベタベタ触ってきて、キモいんだよ!群れでしか行動出来ねぇ弱虫の癖に!言いたい事があるなら、一人で来いよ!」



  こんな大きな声を張り上げたのは、いつぶりだっただろう。

  自分でさえわからない。

  今までは弱々しくて、消え入りそうな声でしか喋ってなかった。



  遠藤や取り巻き達が怯んだ隙に、逃げ出して全速力で走り出した。
  背後ではふざけんなだの、覚えておけだの怒号が聞こえる。



  大丈夫ーーー



  陽人がいなくたって、もう大丈夫だ。



  勇気を振り絞り、一人でもあいつらから逃げる事が出来た。









  中学で見つけた隠れ処。
  鍵の壊れた屋上へと向かう。



  小さい頃からいじめられっ子だった俺は、保育園でも、小学生でも、中学に入っても隠れ処を見つけるのが得意だった。
  そこへ行けば安全だった。
  身を守ったり、ひっそりと泣いたりするのに、気配を消していつもそこで過ごしていた。



  屋上の手すりに肘をつき、ポケットから煙草を取り出す。
  美空の買い置きから盗んだメンソールを咥え、ライターで火をつけ煙を吐き出した。



「吸えてないよ」



  誰にも見つからない、俺の隠れ処に来るのはあいつだけだ。

  いじめっ子に見つからないように、転々とランダムに場所を変えてるのに、何故か陽人には見つかってしまう。


  俺の口許から煙草を奪い、煙草を吸ってふぅーっと紫煙を吐き出す。



「……次期生徒会長候補が良いのかよ」



  この間の、生徒会選挙の投票結果が開示されてないけど、多分陽人が生徒会長で間違いない。



「優等生だから逆にバレないんだよ。煙草を吸うのは初めてだけどね。子供の頃にお爺様に吸い方を教わったんだ。柚希も初めて吸ったんだろ?慣れてないのバレバレだよ」



  図星をつかれ、ぐうの音も出ない。
  ただ、人の見よう見まねで吸っただけだから、ハッキリ言って吸い方がわからない。



「肺まで煙を入れてから吐き出すんだよ。ま、体に悪いから煙草は止めな」



  煙草の火を消して、陽人が見つめてきた。



「もう、俺に構うなよ…」

「何年付き合いあると思ってるの?柚希が髪染めて避けてる理由、俺がわからないとでも思った?」



  視線を合わせないように、前を向いたまま口をつぐんだ。



「俺は柚希の事、大切な親友だと思ってるよ。柚希が俺の為に避けてるのは、なんとなくわかってる。でも俺は、親友を絶対止めるつもりはないから」

「陽人の為じゃねぇよ。お前とは合わないと思っただけ。だから、勘違いするな…」



  陽人の優しい言葉に、決心が揺らぎそうになる。
  親友と言ってくれた事に、じんわりと胸が熱くなる。



  俺にとっても陽人は、唯一無二の親友だ。



  陽人の夢の邪魔をしたくないから、側にいる事は尚更出来ない。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...