陽のあたる場所【加筆訂正中】

たまゆらりん

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  逃げようと体を翻したものの、轟は上背があってガタイが良いくせに、意外に俊敏だった。
  一気に距離を縮められ、呆気なく腕を捕まれた。引っ張られ、力ずくでベッドへ押し倒され、上から轟が覆い被さってきた。



「お前、名器なんだってな?」

「はぁ?何言ってんだよ……」

「だって、あの樋浦さんのオンナなんだろ?あの人、固定のオンナ作ったの初めてなんだぜ。今まで何百人って抱いてきた中で選ばれたんだから、アッチの具合がすげぇイイんだろうな」

「んな訳ねぇだろ!勝手な妄想すんなよ!」

「それに、お前妙な色気あってすげぇムラムラする。何にもしてねぇのに、お前見てるだけでちんこ完勃ちしてヤバい」

「くっつけんな!キモいんだよ!くそっ!」

「昨日も樋浦さんと、ヤリまくったんだろ?」






  ーー昨日……俺……………柊と…………違…う……いや…だ……………






  陽人といると幸せに満ち溢れ、柊の記憶を霞ませてくれた。
  それでも、きっかけがあれば、簡単に忌々しい記憶が蘇ってしまう。



  さっきまで抵抗するのに、轟を叩いたり蹴っていた手足が、その事を思い出すと震え出し、強張って動かなくなる。

  俺が怯えだすと、轟はニヤけて卑猥な目付きに変わり、ワイシャツを無理矢理引き裂いて、あちこちにボタンが飛び散った。
  がっちりと手首を掴まれ、シーツに縫い付けられる。



「ひっ…………!」

「はっ、すげぇ!キスマークだらけ。相当ヤリまくってんなっ!それに、お前の乳首、色も形もエロくてヤバい」

「やっ………」

「可愛い声出るんだな。沢山啼かせてやるよ。見張りいるし、誰も来ないから好きなだけ声出せよ」

「はな…せ………」



  獣のように舌なめずりをし、息を荒くして、轟が顔を近付けてきた。



  ーー嫌だ……こんな奴に……あぁ…くそっ……






  もう……ダメ、だ…………






  そう思った矢先、カーテンが勢いよく開く音が保健室に響いた。






「騒がしくて、眠れないんだけど」






  ーーえっ……誰……?誰だかわからないけど……すごく綺麗……天使みたいだ………それに、存在感?オーラみたいなのがすごい……圧倒される……



  オカルトとかUMAなんて全く信じてないけど、天使かと思うほど無垢で可憐な美しさだった。

  艶やかな長めの真っ直ぐな黒髪に、フサフサの長い睫、黒目が凄く大きくて澄んだ綺麗な目をしてる。肌は真っ白で陶器のように滑らかで、びっくりするほど顔が小さい。顔のパーツやスタイルはどれも完璧で、全てが黄金比で整っている。

  陽人も相当綺麗な顔だと思うけど、目の前の天使は神がかり的な美しさで、放たれているオーラが崇高で威圧感が凄い。多分1km離れていても、そこにいるってわかるくらいだ。



  その天使はうちの学校の男子の制服を身に纏い、上履きのゴムの色が紺色だから1年だ。
  俺が襲われそうになっていた、隣のベッドでカーテンを閉めて寝ていたようだ。






「えっ!?えっ、マジで……お前、うっそ!!!稀瑠空(きるあ)!?本物???オーラ半端ねぇ~!!!マジでヤバいくらい、すっげぇ美少年!!!………でも……何でここにいるんだよ?」

「ヤンキーが入ってきて、ここにいた人追い出してたけど、僕は良いって言われたよ。寝不足で休んでたから」

「いや…そっか……ま、稀瑠空だから……別に、ぜんぜん、良いぜ!…………えっと、俺は……」

「3年の轟さんでしょ?有名だから知ってるよ」

「うっそ、マジで!俺の事知ってるの?すげぇ嬉しい!」

「前から興味があったから」

「えー!信じらんねぇ!稀瑠空が俺に!?」

「仲良くなりたいから、僕と連絡先交換しようよ」

「すげー嬉しい!」 

「交換終わったら、この人と話したいから、二人だけにしてくれないかな?」

「全然、いいぜ!稀瑠空と知り合えて、すげぇ幸せ!」

「誰にも、僕の連絡先教えないでね」

「教える訳ないって!秘密だって!」



  さっきまで獣のようだった轟は、すっかり飼い慣らされた犬みたいになり、稀瑠空に従ってさっさと保健室を出て行った。






「初めまして。俺は1年の飛鳥稀瑠空(あすか きるあ)。よろしくね。ユズ先輩、思った通りの可愛い人で良かった」



  ーーなんで俺の事知ってるんだ?不良連中なら画像出回ってるからわかるけど、こんな綺麗な1年の子が……それに、さっきまでこの子“僕”って言ってたよな……?



「えっ?なんで、俺の事知ってるの?」

「何でだろうね」



  稀瑠空は天使のような、無垢で可憐な笑みを浮かべる。でも、その笑みは少しだけ、小悪魔的な感じもした。

  その美しくて神秘的な姿にポカンと見とれていると、「はい」と買物袋を渡してきた。 



「えっ?」

「それじゃ、帰れないでしょ?たまたま購買部で買ったやつだから。俺のシャツ使って。サイズは合うと思うよ」



  ボタンが取れてはだけた俺のシャツを、白くて綺麗な手が指差した。
  稀瑠空のが2~3cmほど身長は高い感じだけど、俺も稀瑠空も華奢だから、シャツのサイズはXSで多分同じだ。



「……ありがとう」

「ユズ先輩、俺と連絡先交換しよ」



  内向的で人見知りだから、あまり人と関わりたくなくて……
  友達なんて陽人くらいしかいなくて、電話帳にも陽人しか入ってない。



  それを、今知り合ったばかりの綺麗な後輩にいきなり交換って迫られて、慣れなくて戸惑ってしまう。



「えぇ、あぁ……いいけど………って、さっきと違うスマホ!?」

「あぁ、あれは雑魚用。これはプラベ用。あと仕事用も持ってるよ。前はもっとあったけど、使いづらいから今は3台」



  2台持ちとかはわかるけど……
  仕事用って何だ???
  中学生じゃ、バイト無理だろ……
  この子って一体……






「稀瑠空って何者……?」



「それは、また今度会った時ね。ユズ先輩」
 





  天使はベッドから立ち上がると、羽のようにふわりと体を翻し、軽やかに去っていった。


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