陽のあたる場所【加筆訂正中】

たまゆらりん

文字の大きさ
36 / 134

34

  手を繋いでるのを人に見られるのが、どうしても照れ臭くて……

  部室から出る時に「やっぱり、無理」って絡めた指をそっと解いた。陽人は少し寂しそうだったけど、わかったって言ってくれた。



  一緒に並んで下校するのが馴れなくて、緊張して何も喋る事が出来ない。陽人も珍しく緊張してるのか、ずっと無言のままだ。綺麗な顔にうっすらと笑みを浮かべていて、一見余裕な感じに見えるけど、小さい時から見てるから何となくわかった。



  そんなに距離がある訳じゃないのに、校門までの道のりが、やけに長く感じた。






  沈黙が続く中、部室で陽人が言っていた事を思い出していた。



『女の子の格好でも柚希は可愛いから、またナンパされそうだよね……その時は俺と恋人のフリしようか』



  陽人の考えたアイデアだった。
  彼女とは最近別れたって言ってたから、ちょうど今はフリーみたいだ。



  例え形だけだとしても、陽人の恋人になれるという事に、幸せな気持ちでいっぱいになった。



  名前は莉奈ちゃんの名前を借りてるから、人前では「遠藤莉奈」を演じなきゃいけない。

  陽人は恋人らしく呼び捨てで「莉奈」って呼ぶ事になった。クラスは莉奈ちゃんと同じ1年3組って設定を決めた。









「陽人先輩……お話しがあるんですけど……良いですか?」



  校門から出る前に二人組の女子に、後ろから突然声を掛けられた。一人はモジモジしていて、一人はその子の背中に手を添えていて……
  雰囲気的に告白しに来たんだって、直感で感じた。



「何かな?ここで話せない事?」

「はい……出来れば二人だけのが良いです……」

「じゃ、莉奈ここで待っていて」

「…………」

「莉奈?」



  ーーあっ、俺は今“莉奈ちゃん”だった……



  忘れていて返事をしなかったら、陽人が顔をのぞいてきたから慌てて頷いた。



  二人は旧校舎の人気のない方へ歩いていった。



  その姿をずっと目で追っていた。

  正直、気になって仕方がなかった。



  陽人が自分以外の誰かと、二人きりでいる事がすごく嫌だった。






  ーーこんな事しちゃ、ダメだろ……



  そう思ってるのに、二人の後をつけてしまった。
  二人は旧校舎の昇降口前で立ち止まると、向かい合う。俺はちょうど死角になる、昇降口の入口横の凹んだ場所に隠れた。



「…………陽人先輩、好きです。私と付き合って下さい……」



  陽人は彼女を見つめたまま、少しの間黙っていた。そして真剣な眼差しになり、意を決したように口を開いた。



「ごめんね……好きな子がいるんだ。保育園の時から、ずっとその子の事が好きなんだ。だから……ごめん……」



  陽人にキッパリと断られ、女の子は俯いたまま泣いていた。暫くすると「スッキリしました。ありがとうございます」と、晴々とした表情で足早に去って行った。









  初めて聞いた……
  陽人に好きな子がいたなんて
  そんなの知らない……
  保育園からって
  一体、誰なんだよ……



  陽人とは子供の頃から、何でも話し合ってきた。
  まさか、その陽人に隠し事があるなんて知らなかった。
  隠していた事もそうだけど、ずっと好きな子がいたという事実が、ものすごくショックだった。






  ーーあぁ…くそ……なんで………涙、止まんないんだよ……



  告白した女子より、何倍もボロ泣きしていた。



  陽人が他の子といるのが許せなくて、

  誰かを好きなのが、悲しくて、苦しくて……



  自分がこんなに欲張りな人間だなんて、思わなかった。

  

  陽人が俺に気持ちがなくても……
  ひとつになれただけで幸せで嬉しくて、
  それだけで十分だった筈なのに……



  ひとつ手に入ると、次が欲しくなるみたいに、俺の心は欲張りで……
  


  陽人の気持ちまで、欲しいと思ってしまう。






  陽人は『友達』なんだ……

  それ以上にはなれない。

  恋人になりたいだなんて、望んじゃいけないんだ。

  例え上手く行ったとしても、結婚も子供も望めない。

  そうなれば、いずれは『別れの時』がくる……

  欲張ってしまえば、陽人を失う事になる……



  ずっと一緒にいたいなら、
  このまま、友達のまま
  側にいる事が一番なんだ。



  冷静になり、現実をみて、自分の気持ちに蓋をした。
  待っていてと言われた校門前へと、重い足を引き摺るようにして戻った。
  





「柚希……!無事で良かった……ナンパとかされなかった?大丈夫?」



  いなくなった事を咎めないで、俺の事を心配してくれる。



「トイレ行きたくて……人目に付かない所探してたら、時間かかって……」

「あっ……男子トイレ入れないからか……気付かなくてごめん」



  トイレなんて嘘なのに、気遣って謝ってくれる。



「謝んなくていいから……」

「柚希……元気ないね。嫌な事あった?」



  様子が変だと、すぐに気付いてしまう。



「探してて疲れただけ。気にすんなよ」



  これ以上、優しくされると辛い……



「……んっ、そっか。柚希、疲れたなら……甘いもの食べたくない?どっか行こう」



  そう思っていた時、陽人は突拍子もない事を言い出した。



「……学校帰りに寄り道、禁止だろ」

「ふふっ、マジメだな。俺は柚希とデートしたい」

「なんだよ、デートって」

「行きたいお店があってさ、実は今から行くって連絡しちゃったんだよね」

「俺、小遣いそんな持ってないから、いいよ」

「友達の家だから、大丈夫」

「陽人の友達じゃ、余計悪いし……」

「恋人と行くかもって言ったら、『絶対連れて来て!』ってうるさくてさ。友達の手前、付き合ってよ!お願いっ!」

「しょうがねぇな……わかったよ…」



  片手でごめんてポーズで、目を瞑って必死に懇願する陽人が可愛らしくて、断ることが出来ずに半ば強引にデートする事になった。



  さっきまで落ち込んでたのに、陽人の仕草にときめいて、デートをするのが嬉しかった。



  元々感情の波は激しい方だけど、陽人の事になると今まで以上にすごく不安定だ。



  ーー人を好きになると、強くも脆くもなるんだな……






  柊によってボロボロになった心と身体は、陽人に抱きしめられ、慰められた事で傷が癒える事が出来た。

  陽人が誰かと仲良くしたり、好きな子の存在が悲しくて、嫉妬したり、落ち込んだりして傷ついてしまう。



  ただの友達同士だった頃には、こんな気持ちにならなかった。






  一緒にいられて、すごく幸せなのに……



  苦しくて、辛い……





感想 9

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

元カレに追い出された専門学生がネカフェでP活相手のパパちんぽに理解らせられてトロトロのメロメロになっちゃう話

ルシーアンナ
BL
既婚子持ちバイ×専門学生 Pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27436158 ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n1512ls/ fujossy https://fujossy.jp/books/31185

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。