84 / 134
81 ~陽人 side~
試合終了間際、最後の最後にダメ押しのシュートを蹴り上げる。
ボールは弧を描き、ゴールへと吸い込まれるように落ちて、守護神に捉えられる事なくネットを揺らした。
『ゴーーーール』
圧勝ーーー
青葉東中が見事に優勝し、有終の美を飾る事ができた。
後半戦中盤、監督に呼び出され、アップを始めた。「悔いのないようにな!」と監督に背中を押され、いよいよ念願の試合出場。
今までの悔しさを取り戻すように、3得点を決め、最後の最後に1点を追加した。
ーー……約束通り、優勝したよ……早く、柚希に逢いたい。柚希、どんな顔して見てたかな……?逢って、強く抱きしめたい。
柚希がいる辺りの観客席を見つめ、見える筈のないグラウンドから、胸を高鳴らせ愛しい人を探した。
※ ※ ※ ※
「すまない、陽人。……柚希が………柊に…拐われた……」
「えっ…………?」
予想だにしなかった征爾の言葉に、頭がついていけない。
鼓膜に言葉は入り、脳へ伝わってるけど……
理解が出来ない……
……いや、したくなかった。
現実を受け入れられないまま
ただ、日にちだけが虚しく過ぎていく。
優勝の打ち上げ、
サッカー部の引退式、
生徒会総会……
目まぐるしいくらい、忙しかった。
でも忙しいおかげで、何も考えないでいられた。
きっと、暇だったら、ネガティブな思考になっていたかもしれない。
ふとした瞬間、気付けば柚希の事ばかりで、頭がいっぱいになる。
柚希が戻ってきたら、守ってあげられなかった事、何度でも謝ろう。
許してもらおうだなんて、思ってない。
何でもわがまま聞いてあげて、
いっぱい甘やかして、
すべての時間を、柚希の為に使って……
深く傷ついた身体を、心を
少しでも癒して、和らげて……
何も出来なかった事を、只々償いたかった。
◇
そうしてる内に、週の後半になっていた。
柚希は一向に、帰って来ない。
ーー美空ちゃんに聞いたら、まずいかな……
柚希がいないのに、美空ちゃんは騒いでる様子はなく、いつも通りに過ごしていた。
柚希の事を愛していて、宝物のように思っている美空ちゃんが、行方不明になって騒がないなんてあり得ない。
多分、柊が上手く誤魔化しているんだろう。
ーー先に先生に聞いた方が、良いな……
「先生、内海が何日も休んでいるんですけど、何か知りませんか?」
「あぁ、内海なら転校したよ」
転…校……?
「どこの学校ですか?いつから?教えて下さい!」
「有働、悪いな。個人情報で教える事は出来ないんだ」
そう言うと、先生は苦笑いをして逃げるように去っていった。
学校ではこれ以上、何も教えてくれないだろう……
美空ちゃんに……話を聞こう。
柚希が拐われただなんて、きっと知らない。
余計な事を言って、美空ちゃんを不安にさせないように、気を付けながら話した。
「美空ちゃん……少し話がしたいんどけど、大丈夫?」
「陽人くん、どうしたの?」
「……柚希って、転校したの?」
「うん」
「どこに?」
「……陽人くん、ごめん。柚希が陽人くんには、何も言わないでって。大切な親友だから、自分で言いたいみたい。柚希から連絡いくと思うから、待っててくれるかな?」
「……そっか…わかった。……柚希は…元気でやってるの?」
「うん。幸せそうにしてるわ」
幸せそう……
“元気そう”ではなく、“幸せそう”……
多分、一人じゃない。
その傍らには、間違いなく柊がいる。
手元に柚希を置く事を許してもらえるくらい、美空ちゃんに信頼されていて。
幸せそうに柚希を振る舞わせるくらい、柚希に圧をかけ従わせている。
ーー早く……柚希を見つけないと……
部屋の中でベッドに腰を掛け、ぼんやりと窓を眺めた。いつも柚希の部屋の明かりが見えたのに、今は真っ暗で何も見えない。
その暗闇を見てると、柚希はいなくなったんだって改めて実感させられる。
ーー柚希をどうやって探すか……
思考を巡らせ模索してると、机の上でスマホが鳴った。
ベッドから立ち上がり、スマホを手に取って、急いでタップした。
ーー柚希からだ……!
ずっと音信不通だった柚希から、メッセージが届いた。
やっと連絡が来た事に、ホッとする。
メッセージを開き、内容を確認する。
「……ゆず…き…………」
震える手のひらから、スマホが滑り落ちる。
音を立てて床に落ち、
スマホの画面にヒビが入った。
ヒビ割れたスマホには……
俺の名前を叫び、
助けを求め……
柊に二度目のレイプをされている
柚希の動画が流れていた。
【第一章 完】
ボールは弧を描き、ゴールへと吸い込まれるように落ちて、守護神に捉えられる事なくネットを揺らした。
『ゴーーーール』
圧勝ーーー
青葉東中が見事に優勝し、有終の美を飾る事ができた。
後半戦中盤、監督に呼び出され、アップを始めた。「悔いのないようにな!」と監督に背中を押され、いよいよ念願の試合出場。
今までの悔しさを取り戻すように、3得点を決め、最後の最後に1点を追加した。
ーー……約束通り、優勝したよ……早く、柚希に逢いたい。柚希、どんな顔して見てたかな……?逢って、強く抱きしめたい。
柚希がいる辺りの観客席を見つめ、見える筈のないグラウンドから、胸を高鳴らせ愛しい人を探した。
※ ※ ※ ※
「すまない、陽人。……柚希が………柊に…拐われた……」
「えっ…………?」
予想だにしなかった征爾の言葉に、頭がついていけない。
鼓膜に言葉は入り、脳へ伝わってるけど……
理解が出来ない……
……いや、したくなかった。
現実を受け入れられないまま
ただ、日にちだけが虚しく過ぎていく。
優勝の打ち上げ、
サッカー部の引退式、
生徒会総会……
目まぐるしいくらい、忙しかった。
でも忙しいおかげで、何も考えないでいられた。
きっと、暇だったら、ネガティブな思考になっていたかもしれない。
ふとした瞬間、気付けば柚希の事ばかりで、頭がいっぱいになる。
柚希が戻ってきたら、守ってあげられなかった事、何度でも謝ろう。
許してもらおうだなんて、思ってない。
何でもわがまま聞いてあげて、
いっぱい甘やかして、
すべての時間を、柚希の為に使って……
深く傷ついた身体を、心を
少しでも癒して、和らげて……
何も出来なかった事を、只々償いたかった。
◇
そうしてる内に、週の後半になっていた。
柚希は一向に、帰って来ない。
ーー美空ちゃんに聞いたら、まずいかな……
柚希がいないのに、美空ちゃんは騒いでる様子はなく、いつも通りに過ごしていた。
柚希の事を愛していて、宝物のように思っている美空ちゃんが、行方不明になって騒がないなんてあり得ない。
多分、柊が上手く誤魔化しているんだろう。
ーー先に先生に聞いた方が、良いな……
「先生、内海が何日も休んでいるんですけど、何か知りませんか?」
「あぁ、内海なら転校したよ」
転…校……?
「どこの学校ですか?いつから?教えて下さい!」
「有働、悪いな。個人情報で教える事は出来ないんだ」
そう言うと、先生は苦笑いをして逃げるように去っていった。
学校ではこれ以上、何も教えてくれないだろう……
美空ちゃんに……話を聞こう。
柚希が拐われただなんて、きっと知らない。
余計な事を言って、美空ちゃんを不安にさせないように、気を付けながら話した。
「美空ちゃん……少し話がしたいんどけど、大丈夫?」
「陽人くん、どうしたの?」
「……柚希って、転校したの?」
「うん」
「どこに?」
「……陽人くん、ごめん。柚希が陽人くんには、何も言わないでって。大切な親友だから、自分で言いたいみたい。柚希から連絡いくと思うから、待っててくれるかな?」
「……そっか…わかった。……柚希は…元気でやってるの?」
「うん。幸せそうにしてるわ」
幸せそう……
“元気そう”ではなく、“幸せそう”……
多分、一人じゃない。
その傍らには、間違いなく柊がいる。
手元に柚希を置く事を許してもらえるくらい、美空ちゃんに信頼されていて。
幸せそうに柚希を振る舞わせるくらい、柚希に圧をかけ従わせている。
ーー早く……柚希を見つけないと……
部屋の中でベッドに腰を掛け、ぼんやりと窓を眺めた。いつも柚希の部屋の明かりが見えたのに、今は真っ暗で何も見えない。
その暗闇を見てると、柚希はいなくなったんだって改めて実感させられる。
ーー柚希をどうやって探すか……
思考を巡らせ模索してると、机の上でスマホが鳴った。
ベッドから立ち上がり、スマホを手に取って、急いでタップした。
ーー柚希からだ……!
ずっと音信不通だった柚希から、メッセージが届いた。
やっと連絡が来た事に、ホッとする。
メッセージを開き、内容を確認する。
「……ゆず…き…………」
震える手のひらから、スマホが滑り落ちる。
音を立てて床に落ち、
スマホの画面にヒビが入った。
ヒビ割れたスマホには……
俺の名前を叫び、
助けを求め……
柊に二度目のレイプをされている
柚希の動画が流れていた。
【第一章 完】
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
元カレに追い出された専門学生がネカフェでP活相手のパパちんぽに理解らせられてトロトロのメロメロになっちゃう話
ルシーアンナ
BL
既婚子持ちバイ×専門学生
Pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27436158
ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n1512ls/
fujossy https://fujossy.jp/books/31185
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。