陽のあたる場所【加筆訂正中】

たまゆらりん

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  暁が美玲に近付き、背中を優しく擦る。
  「行こう……」と促し歩き出すも、美玲は後ろで立ち止まったまま微動だにしない。


  
「…………柊がいない世界なら……生きている……意味なんて…………ない……」



  ポケットからカッターを取り出し、美玲は自分の首の頸動脈へ、薄く鋭い刃をあてがおうとする。



「何すんだよ……!」



  暁がカッターを両手で掴んで止め、手から血を流している。



「死ぬな……」

「もう……、生きていたくない……」

「それでも、生きろ……」

「俺みたいな肉便器……生まれてきた、意味なんてないんだよっ!」

「これ…からだ……生きていて、良かったって……美玲が心の底から、そう思えるように……美玲の事、生涯大切にする……一生、何もしなくていい。身体なんか、売らせない。柊ちゃんの事、忘れなくて良いから……ただ、僕のそばにいてほしい……」 



  返事をせず、下を向いて声を殺して泣く美玲。



「幸せにするから、美玲……」



  傷だらけの美玲の全てを包み込むように、暁は優しくふんわりと抱きしめた。









「柚希、帰ろう」

「でも……」

「暁に任せろ。行くぞ」



  強く腕を捕まれ、早足で歩く柊に、たたらを踏みながらついていく。
  振り返り二人を見ると、抱きしめられる美玲が、縋り付くように暁の背中に腕をまわした。










  帰りの車の中で、柊から美玲の話を聞いた。



「あいつは幼少期から、実の父親に性的虐待を受けていた。その上借金のかたに、幼いうちから売春まで強要させられて……俺と暁が高1の時に、中1だった美玲を見つけた。その時の美玲は不潔で、飯も食わされず、目も虚ろでガリガリに痩せこけていた……。むせかえるような、ザーメンと小便の臭いが体に染み付いていて……周りには蝿が飛んでいて……美玲は半分死にかけていたんだ。父親をボコって、債権者から俺の店で美玲を買い取り、世話をした。だから、あんな店でも……救われてる子供はいるんだよ」



  美玲の壮絶な過去を聞いて、何も言えなくなった。

  ニュースでは、よく見聞きする虐待。
  身近で話を聞くのは初めてで……
  しかも、実の父親に…………

  衝撃的だった。
    


  愛されず、
  虐げられ……

  本当なら明るい未来があるはずの、
  子供の人生を変えてしまう……



  意地悪はされたけど……
  美玲に幸せになってほしいって……



  心から、そう願った。





 
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