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夏休み前の日曜日。
青葉市の親戚の葬儀へ、出る事になった。
親戚から白い目で見られてる美空は、ほとんど親戚付き合いはしてない。
亡くなった美空の伯父さん……大伯父とも、そんなには付き合いはないけれど、すごく温厚な人で美空を自分の子供のように可愛がったり、支援もしてくれたりと、遠くから見守ってくれていた。両親を亡くした美空にとっては、父親みたいな存在だ。
俺も幼い頃に、何度か会ってたみたいだ。とても可愛がってくれたって、美空は言ってたけど……あまりに幼い頃で、全然覚えていない。
大伯父は長い間病で床に伏せ、寿命の宣告を受けた時には、自分の死を受け入れ、とても穏やかに召されたみたいだ。
挨拶とお焼香だけ済ますと、葬儀場の駐車場へ向かう。
久々に帰って来た地元だけど、すぐに白金市に戻らなくてはならない。
車に乗る前に、塩でお清めをした。
「白鷹中の制服、新鮮だな。それに、柚希の髪色が元に戻ったのも……なんだか、嬉しい」
「まあ、卒業までの短い間しか着ないけど。新品なのに、もったいないよな」
「柊くんが用意してくれたんだもんね……やっぱり、私もお金出すよ」
「もし、美空が何か言ってきたら、気を使わないでって。柊がしたくてしてる事だから。寧ろ、地元から離れた知らない土地に、中学生の俺を連れていって、申し訳ないって」
「えー、でも悪いよ」
「良いんだって。俺に勉強教えたり、料理作ったりして、毎日充実してるみたいだし。ここは、甘えとこうよ」
「そうなの?……じゃあ、今度ご馳走するって、柊くんに伝えといてね」
「わかった」
他愛もない会話。
お互いに気遣う、美空と柊。
ふたりの間を取り持つ俺。
仲睦まじい、家族のやり取り。
そのやり取りは、イヤホンから聞こえる、柊の言葉をそのまま美空へ伝えているだけだった。
柊からの束縛と嫉妬は、以前にも増して更に酷く強くなっていた。
良い時は、蕩けるほど甘やかして、優しさで包み込んでくれる。
悪い時は、俺をがんじがらめに縛りつけて、恐怖で押さえつける。
俺と柊はまるで、薄氷の上に立ってる様な……
危うくて脆い、不安定な関係だった。
花火大会の日、以来ーーー
柊が心を開いてくれたから……
あれからずっと優しかったし、温かみのある表情を見せるようになってきたから……
柊は、変わったんだ。
もう、大丈夫なんだって。
だから……
安心して、柊に少しずつわがままを言うようになった。
柊は「いいよ」って、大抵のわがままは聞いてくれた。
昨日、美空から電話があった。
世話になったから大伯父の葬儀にどうしても出てほしいってせがまれ、「わかった」って即答した。
法事で青葉市に帰る事を伝えた時の、柊の怒りに満ちた顔を忘れる事が出来ない。
柊はどうしても外せない用事があり、一緒に出席する事が出来なかった。
だから、俺一人で青葉市に帰る事に、ものすごく激昂していた。
「なんとか、欠席出来ねぇのか?」
「そんなに、帰りたいのかよ……葬儀じゃなくて、別に帰りたい理由があるんじゃねぇの?」
「帰ったら、あいつに会うつもりなんだろ?ふざけんなっ!」
頬をぶたれ、景色が反転する。
髪を鷲掴みにされ起こされると、胸ぐらを掴んで揺さぶられ、低い声で恫喝され続けた。
酸欠で頭が回らず、苦しくて返事が出来ない。
萎縮して体を震わせながら、頭を振って否定した。
拷問のような時間は、暫く続いた。
どんな時も、電話を繋いだままにしておく事。
実家には、絶対に寄らない事。
送り迎えは、必ず美空がする事。
葬儀場以外には、何処にも行かない事。
……それを条件に、帰る事をやっと許された。
葬儀だというのに、耳にはいつものワイヤレスイヤホンを付けさせられ、電話は繋がっている。
だから、美空と俺の会話は、全て柊に筒抜けだ。
「お腹空いたねー。お昼、食べにいこうよ。それから、白金に帰ろう」
「あ……でも……」
『怪しまれるから、食べに行っていいぜ』
「……うん。俺も腹減った」
車は国道沿いにある、イタリアンのファミレスへ入り、俺と美空は店内に入った。
「柚希が幸せそうで安心した。離れちゃうし、心配だったからさぁ。柊くん、気配りがあって、優しい子だよね。本当、いい人と一緒になれて、良かったね」
美空の嬉しそうに笑う顔が辛かった。
柊は優しい。すごく甘やかしてくれる。
でも……
幸せって言われると、違和感があった。
注文していた、料理が運ばれる。
ミートドリアとエビのサラダ、ピリ辛チキン。ドリンクバーは、ホットのカプチーノを選んだ。
美空と外食する時はだいたいこの店だから、久々に口にする懐かしい味に、切ない気持ちになった。
封印していた記憶を、断片的に想い出す。
この店……
美空と久美さんと陽人の四人で、よく来ていたな……
みんな好みが一緒だから、テーブルの上は同じ料理だらけで……
食後はミルクジェラート頼んでたっけ……
「柚希、ホームシックになっちゃった?おうちに寄ろうか?」
美空がポケットティッシュを渡してきた。
陽人の事を考えていたら、自分でもわからないうちに涙が溢れていた。
ティッシュを2、3枚取り出し、涙を拭いた。
「寄らなくていい。美空、仕事間に合わなくなるから……そろそろ行こう」
白金市のマンションまで俺を送って、美空は夜はお店で仕事だ。日曜日で定休日だけど、お店の常連さんから頼まれたらしい。
往復で2時間以上はかかる。
店の準備もあるし、迷惑をかけたくない。
昼夜働いている美空を、少しでも休ませてあげたい。
それにーーー
約束を破って、実家に帰ったら……
柊に何をされるか、わからない……
青葉市の親戚の葬儀へ、出る事になった。
親戚から白い目で見られてる美空は、ほとんど親戚付き合いはしてない。
亡くなった美空の伯父さん……大伯父とも、そんなには付き合いはないけれど、すごく温厚な人で美空を自分の子供のように可愛がったり、支援もしてくれたりと、遠くから見守ってくれていた。両親を亡くした美空にとっては、父親みたいな存在だ。
俺も幼い頃に、何度か会ってたみたいだ。とても可愛がってくれたって、美空は言ってたけど……あまりに幼い頃で、全然覚えていない。
大伯父は長い間病で床に伏せ、寿命の宣告を受けた時には、自分の死を受け入れ、とても穏やかに召されたみたいだ。
挨拶とお焼香だけ済ますと、葬儀場の駐車場へ向かう。
久々に帰って来た地元だけど、すぐに白金市に戻らなくてはならない。
車に乗る前に、塩でお清めをした。
「白鷹中の制服、新鮮だな。それに、柚希の髪色が元に戻ったのも……なんだか、嬉しい」
「まあ、卒業までの短い間しか着ないけど。新品なのに、もったいないよな」
「柊くんが用意してくれたんだもんね……やっぱり、私もお金出すよ」
「もし、美空が何か言ってきたら、気を使わないでって。柊がしたくてしてる事だから。寧ろ、地元から離れた知らない土地に、中学生の俺を連れていって、申し訳ないって」
「えー、でも悪いよ」
「良いんだって。俺に勉強教えたり、料理作ったりして、毎日充実してるみたいだし。ここは、甘えとこうよ」
「そうなの?……じゃあ、今度ご馳走するって、柊くんに伝えといてね」
「わかった」
他愛もない会話。
お互いに気遣う、美空と柊。
ふたりの間を取り持つ俺。
仲睦まじい、家族のやり取り。
そのやり取りは、イヤホンから聞こえる、柊の言葉をそのまま美空へ伝えているだけだった。
柊からの束縛と嫉妬は、以前にも増して更に酷く強くなっていた。
良い時は、蕩けるほど甘やかして、優しさで包み込んでくれる。
悪い時は、俺をがんじがらめに縛りつけて、恐怖で押さえつける。
俺と柊はまるで、薄氷の上に立ってる様な……
危うくて脆い、不安定な関係だった。
花火大会の日、以来ーーー
柊が心を開いてくれたから……
あれからずっと優しかったし、温かみのある表情を見せるようになってきたから……
柊は、変わったんだ。
もう、大丈夫なんだって。
だから……
安心して、柊に少しずつわがままを言うようになった。
柊は「いいよ」って、大抵のわがままは聞いてくれた。
昨日、美空から電話があった。
世話になったから大伯父の葬儀にどうしても出てほしいってせがまれ、「わかった」って即答した。
法事で青葉市に帰る事を伝えた時の、柊の怒りに満ちた顔を忘れる事が出来ない。
柊はどうしても外せない用事があり、一緒に出席する事が出来なかった。
だから、俺一人で青葉市に帰る事に、ものすごく激昂していた。
「なんとか、欠席出来ねぇのか?」
「そんなに、帰りたいのかよ……葬儀じゃなくて、別に帰りたい理由があるんじゃねぇの?」
「帰ったら、あいつに会うつもりなんだろ?ふざけんなっ!」
頬をぶたれ、景色が反転する。
髪を鷲掴みにされ起こされると、胸ぐらを掴んで揺さぶられ、低い声で恫喝され続けた。
酸欠で頭が回らず、苦しくて返事が出来ない。
萎縮して体を震わせながら、頭を振って否定した。
拷問のような時間は、暫く続いた。
どんな時も、電話を繋いだままにしておく事。
実家には、絶対に寄らない事。
送り迎えは、必ず美空がする事。
葬儀場以外には、何処にも行かない事。
……それを条件に、帰る事をやっと許された。
葬儀だというのに、耳にはいつものワイヤレスイヤホンを付けさせられ、電話は繋がっている。
だから、美空と俺の会話は、全て柊に筒抜けだ。
「お腹空いたねー。お昼、食べにいこうよ。それから、白金に帰ろう」
「あ……でも……」
『怪しまれるから、食べに行っていいぜ』
「……うん。俺も腹減った」
車は国道沿いにある、イタリアンのファミレスへ入り、俺と美空は店内に入った。
「柚希が幸せそうで安心した。離れちゃうし、心配だったからさぁ。柊くん、気配りがあって、優しい子だよね。本当、いい人と一緒になれて、良かったね」
美空の嬉しそうに笑う顔が辛かった。
柊は優しい。すごく甘やかしてくれる。
でも……
幸せって言われると、違和感があった。
注文していた、料理が運ばれる。
ミートドリアとエビのサラダ、ピリ辛チキン。ドリンクバーは、ホットのカプチーノを選んだ。
美空と外食する時はだいたいこの店だから、久々に口にする懐かしい味に、切ない気持ちになった。
封印していた記憶を、断片的に想い出す。
この店……
美空と久美さんと陽人の四人で、よく来ていたな……
みんな好みが一緒だから、テーブルの上は同じ料理だらけで……
食後はミルクジェラート頼んでたっけ……
「柚希、ホームシックになっちゃった?おうちに寄ろうか?」
美空がポケットティッシュを渡してきた。
陽人の事を考えていたら、自分でもわからないうちに涙が溢れていた。
ティッシュを2、3枚取り出し、涙を拭いた。
「寄らなくていい。美空、仕事間に合わなくなるから……そろそろ行こう」
白金市のマンションまで俺を送って、美空は夜はお店で仕事だ。日曜日で定休日だけど、お店の常連さんから頼まれたらしい。
往復で2時間以上はかかる。
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それにーーー
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