陽のあたる場所【加筆訂正中】

たまゆらりん

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エピローグ1 ~柊 side~

  人に愛される資格なんて、ないと思っていた。



  俺が生まれたせいで母は亡くなり、父を不幸にした。
  だから、父に愛されない事は、当然の報いだと思っていたし、父が俺を憎むのは、何も間違ってないと思ってた。



  俺みたいな奴は、
  誰にも愛されないし、
  誰も愛せない……

  そう、思っていた。



  柚希に、出逢うまではーーー



  初めて柚希と逢った日。

  美空を暴くつもりで家を訪ねると、そこには柚希がいた。

  美空とそっくりだけど、雰囲気が違うと思った。
  お喋りで強気で明るい美空とは違い、控え目で静かな感じで……
  俺が想像していた母親像に、すごく近いなって思った。

  ただ死んだ母さんに似てるからってだけで、興味を持った。
  無理矢理抱いて、それで満足して終わりの筈だった。
  今までは一度抱けば興味が失せ、二度以上体を重ねる奴はごく稀で……



  柚希だけは、興味が失せるどこか……
  気が付いたら、好きになっていた。

  人を好きになるなんて初めてで、どうしていいのかわからなかった。

  俺みたいな人間、誰にも愛されないと思っていたから……

  きっと柚希は、俺の事なんて、愛してくれない……



  暴力で、脅して……恐怖を与えれば、逃げないで一緒にいてくれると思った。

  柚希はいつも怯えていた。
  それでも……
  側にいてくれれば、それだけで十分だった。



  陽人と結ばれ、陽人の前で幸せそうに笑う柚希を見て、嫉妬で目の前が真っ赤に染まった。

  どうせ、俺の方を振り向いてくれる事なんてない。
  だから、柚希の気持ちなんて、どうでもいい。
  ただ、他に好きな奴を作る事だけは、許せないと思った……

  陽人を忘れさせる為に、壊して狂わしてやろうと思った。
  柚希を洗脳する為に罰を与え、甘い甘い飴のような優しさを与えた。
  家族も、何もかも失った柚希は俺に依存した。
  やっと、俺を見てくれた。
  嬉しかった。

  そのうちに柚希から近付いてきて、一緒に寝てくれるようになったのには、とても驚いた。

  俺を見る目に優しさを感じ、手作りの料理を食べた時は、心が温かくなった。

  一緒に花火を眺め、柚希からキスをしてくれた日は、魂が熱くなった。



  好きになっても、
  好きになっても、
  好きな気持ちは、膨らむ一方で……



  柚希の事が、どうしようもないくらい好きになっていた。



  大切にしたい、優しくしたい……

  そう、思う一方で、



  “絶対に、失いたくなくない”



  そういう気持ちの方が、圧倒的に強かった。



  花火大会の日以来、
  柚希は『愛してる』や『好き』だという、
  愛の言葉を言わなくなった。

  今までは俺が怖くて、嘘を吐いて言っていたのはわかってる。
  嘘だとしても愛の言葉が聞けなくなった事は、すごく寂しくて……
  少しずつ、じわじわと気持ちが焦っていった。



  情けないくらい……
  俺は、弱い……
  卑怯で、狡くて、
  小さい人間だ。

  だから俺は、柚希を信じ、優しくするよりも……

  がんじがらめに束縛し、監視する事を選んだ。



  法事で地元へ戻るって聞いた時、真っ先に陽人の顔が思い浮かんだ。

  あいつに会うんじゃないか、
  あいつの所に逃げるんじゃないか……

  許せない……!



  二度と暴力は振るわないと誓ったのに、気付いたら頬を叩いていた。
  苦しそうに悲しい顔で涙を流す柚希を見て、条件付きで帰る事を許した。

  美空から陽人の名前を聞いて柚希の様子が、明らかに変わったのがわかった。

  押さえつけて、漸く振り向いてくれたのに……



  一瞬で、陽人に奪われた。



  それからは不安しかなかった。

  柚希は逃げるんじゃないかって。
  俺を捨てるんじゃないかって。
  怖くて怖くて、仕方がなかった。






  ーー独りになりたくない……



  今までこんな事、思った事なんてなかった。
  ずっと独りだったし、誰かといたいだなんて思わなかった。

  人を傷つけたり、殴ったりしても……
  何も感じなかった。

  でも、柚希を傷付ければ、俺も傷付いた。
  柚希を殴ると、拳が痛くなった。



  柚希といると、
  熱い血が全身を巡って、
  無機質な身体が体温を持ち、
  心臓がドクドクと動いて、
  生きてるって感じがした。



  柚希を失いたくなかった。

  惨めでも馬鹿みたいでも……

  陽人を殺してでも、柚希を取り返したかった。



  でも、多くの人を傷付け、罪を犯しすぎた俺に……



  とうとう、神様は天罰を下した。 



  警察に捕まる事なんて、今までなんとも思わなかった。
  ただ、会社の跡継ぎとして、逮捕されて父に迷惑をかける訳にいかない。
  だから、捕まらないように上手く躱してきたし、幸いにも俺に心酔した周りにいる連中が、俺を庇い身代わりになってくれて、今まで警察に捕まる事はなかった。



  手錠を掛けられ、逮捕された事よりも…………
 
  柚希が俺に背中を向け、
  陽人と歩いて行ってしまう姿に、

  心が引き裂かれそうだった。



  遠くに行ってしまう柚希を、引き止めたくて……

  泣きながら、名前を呼んだ。



  子供の頃から、自分が泣いた記憶なんて、ほとんどない。



  柚希がいなくなってしまう……



  そう考えたら、知らないうちに涙が溢れていた。



  柚希が振り向き、俺に近付いてきた時、母さんが来てくれたような、不思議な感覚を覚えた。



  初めて……
  柚希の心からの言葉を、聞いた気がする。
  あれほど酷い仕打ちをしたのに、柚希は俺を許してくれた。

  そして……



ーーーー「愛してる」ーーーー



  恋愛とは違う、愛だけど。

  柚希が俺の事を愛し、
  抱きしめてくれた事に……

  救われた気持ちになった。





 
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