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お兄ちゃん!お兄ちゃん!!

わたしの顔が!!

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  翌朝、目を覚ますと大量の汗をかいていた。わたしは、一階に下りて洗面所に行き顔を洗う。

 水道の水が冷たくて心地いい。顔もさっぱりしたところで鏡を見ると何か違和感を感じた。

  なんだろと思い鏡に近づくと!

  鏡の中のわたしは……。

  わたしの顔には。

   そう、わたしの額に赤いものが付いていた。

  え、これは何?

  まるで血のようだ。わたしの額からたらりと血が流れていた。

  真っ赤な鮮やかな血が一筋、た、ら、り、と。

「きゃーーーーーーーーーー!!」

  どうして、血が……。

  わたしは、大きな声で叫んだ。


  
 どうして、何これは?

 わたしの叫び声に気がついたお母さんが、駆けつけてきた。

「史砂ちゃんどうしたの?」

「ち、ち、血が……」

  わたしは、鏡に映る自分を指差した。

  って、あれ?  なんで!    嘘でしょう?  


   わたしの額からたらーりと流れていたはずの赤い血が消えていたのだから。

  鏡に映るわたしの顔には傷一つなかった。

「史砂ちゃん、どうしたの?」

  お母さんは、心配そうにわたしの顔を覗き込んだ。

   これ以上お母さんに心配をかけたくない。だからわたしは、「ううん、なんでもないよ」と言った。

「なんでもないって、叫び声ではなかったけど」

  お母さんは、眉間に皺を寄せてわたしの顔をじっと見た。


  
「お母さん、ごめんっ、虫がえっと、ゴ、ゴキブリがいたんだよ」

   わたしは、無理矢理笑顔を作りながら言った。

「本当なの?  じゃあ退治しないとね」

  お母さんはそう言いながら、洗面台の上や下をチェックしている。

「ゴキブリは気のせいだったかも。早とちりしちゃたかも」

 わたしは、えへへと笑い、頭を掻いて誤魔化した。


  
  お母さんは、多分信じていないと思うけれど、「そうなの?  大丈夫ね」と言って洗面所から出て行った。

  わたしは、息をつく。

  だけど、今の額からの血はなんだったのだろうか。本当にわたしの見間違いだったのかな。

  わたしは、額をそっと触り鏡をもう一度見る。やはり、傷も無いし血も流れてはいない。

  そうだ、そうだよね。わたしの勘違いだ、きっとそうだから気にしないでおこう。そう思って、洗面台から離れようとしたその時、鏡に白い人影が映った。


  
 わたしは、鏡に映った白い人影にビクッとなり心臓が縮み上がりそうになる。

  その白い人影は左右にゆらゆら揺れる。

  心臓がドキドキドキドキ、ドキンドキンドキンと早く打つ。

  声を上げそうになるけれど、お母さんがまた駆けつけてきそうなので、心配はかけまいとぐっと耐えた。

  鏡に映るあなたは誰ですか?

  お兄ちゃんなんですか?

  どうしてわたしの前に現れるのですか?

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