上 下
31 / 97
神様と狛犬と一緒に神社へ

感謝の気持ち

しおりを挟む

  わたしは気を取り直しお祈りを続けた。神様がうるさいと言った柏手を打った後は胸の高さで手を合わせ頭を下げた。

  さあ、お祈りの開始だ。

「神様、いつもわたしやみんなのことを見守ってくださりありがとうございます」

  わたしは、狛子と狛助が、『いつもわたしを守ってくれてありがとうって感謝の気持ちを込めてお賽銭を入れるものなんだよ~』と教えてくれたことを思い出し感謝の気持ちを伝えた。

  ただ、神様が目の前にいるのでなんだか照れてしまう。

  神様は何故だか両手で耳を押さえうんうんと首を縦に振っている。その神様の両隣にいつの間にか狛子と狛助が立っていて神様と同じように両手で耳を押さえ首を縦に振った。

  そして、わたしは、

「神様、わたしはおばあちゃんの美味しいご飯を毎日食べられて幸せです。これからもおばあちゃんの笑顔を長く見続けられますようにお願いします」

  おばあちゃんの笑顔を思い浮かべながらお祈りをした。

  それから、

「おじいちゃんが……成仏できますように。あ、でも今のままがいいのかな?  家族みんなが幸せでありますように、それからみんなも元気でいられますように」

  とわたしはお祈りをした。

「う~ん、奈夜ちゃんの願いは素晴らしいな。毎日神社に来てくれているんだからもっと自分のことを願ってもいいのだぞ」

  神様はわたしがお賽銭で入れた十円玉をペロペロ舐めながら言った。

「え~っと、わたしも努力するので学校でも友達がほしいです」

  わたしは両手を合わせながら神様の顔を見てお願いをした。

「そうか、そうだよな。奈夜ちゃんは中学生だもんな。やはり友達がいると毎日が楽しくなると思うぞ」

「はい、そうなんだけれど……」

  わたしはずっと友達がほしいと思っているのになぜだか中々友達ができなくて寂しかったのだ。新しい学校では……。

「奈夜ちゃんは神社ではうるさいくらい声が大きいけど学校では違うんだろう?  笑顔も浮かべず俯いているんじゃないかい?」

  流石神様だ、ズバリ言い当てる。

「はい、学校に行くと嫌われたくなくて何を話していいのかわからなくなってしまって黙っていると面白くない子と思われたみたいなんです」

  わたしは、そう答えて俯いた。

「う~ん、そうか。ありのままの奈夜ちゃんでいいのだぞ。嫌われたっていいじゃないか。奈夜ちゃんのことをわかってくれる子はきっといると思うぞ」

  神様が手を伸ばしわたしの頭を撫でた。その手はあたたかくて優しい温もりをじわりと感じた。

 「ありのままのわたしでいいのかな?」

「そうじゃな。まあ、そう言っても難しいのかもしれないが。でも、一人くらいは奈夜ちゃんのことをわかってくれる子はいるはずだぞ」

  わたしの頭を撫でる神様のその手はやさしくて大丈夫なんだなと思えてきた。

「神様ありがとうございます」

「礼はいらんぞ。お賽銭は有り難く舐めさせてもらうけどな」

  神様はそう言って十円玉を美味しそうに舐めた。

「神様って本当にお金が大好きなんですね!」

 わたしは、可笑しくてクスクスと笑った。

「俺はお金が大好きだぞ。奈夜ちゃんも学校でも素直に思ったことを言えば良いのじゃ。それに、その笑顔良いぞ」

  神様はホッホッと笑いながらわたしの頭をもう一度撫でた。

「あはは、お金が大好きなんて言ったらびっくりされそうだけどね」

「ん?  そうかい!  素直な奴だって褒められないかな」

  神様は首を横に傾げ十円玉を舐めた。

「褒められませんってば!  でも、神様の言ってることはわかります。まだまだ難しいけどもう少し努力してみます」

「その意気だぞ。頑張れ!」

「はい、頑張ります」

「奈夜ちゃん頑張ってね」と狛子と狛助も言ってくれた。

  わたしは神様と狛子と狛助に守られているんだと思うと嬉しくなった。
しおりを挟む

処理中です...