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みんなで食べるご飯は美味しい

ただいま

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  今日の放課後は久しぶりに楽しかった。華夜ちゃんと友達になれた。

  ずっと、わたしとは別世界に住んでいるんじゃないかなと思っていた華夜ちゃんだったけれど、意外と共通点があった。

  それが嬉しくてたまらない。じゃあね、また明日と手を振って別れた今も頬が緩む。

「ねえ、奈夜ちゃん楽しそうだね」
「僕達はぷんすかなのにね」

  狛子と狛助がわたしを見上げて言った。

「だって、華夜ちゃんと仲良くなれたんだもん!  って君達、まだ神社に帰らないの?」

「うん、神様の言いつけなんだから!従うしかないもんね」
「そうだよ。それに僕達おばあちゃんのご飯も楽しみだもん」

  狛子と狛助はぴょんぴょんと飛び跳ねながら答えた。

「もうおばあちゃんのご飯が楽しみなだけでしょう?」

  わたしは文句を言いながらも本当は嬉しかった。ずっと、一人っ子で寂しかったから狛子と狛助がそばにいてくれることは心のどこかで歓迎しているのだった。

「ただいま~」

  わたしは元気よく玄関の引き戸を開けた。

 
  部屋で宿題をしているといい匂いがしてきた。おばあちゃんが夕飯を作ってくれている美味しそうな匂いだ。

  夕飯の前に宿題を終わらせたいなと思いながら問題を解いていると、

「おばあちゃんのご飯まだかな?」
「お腹が空いたよ~」

  狛子と狛助がそう言いながら宿題をしているわたしの周りをぐるぐる回る。

  わたしはそれを無視して勉強を続ける。

「もうお腹がぺこぺこで倒れちゃいそうだよ~」
「ぺこぺこたらぺこぺこなんだよ~」

  狛子と狛助がそう言いながら勉強をしているわたしの周りをぐるぐる回る。

「ちょっと、君達うるさいよ~!!」

  わたしは、シャープペンをバンッと座卓に叩きつけ顔を上げて怒った。

「うわぁ~ん!  な、奈夜ちゃんが怖いよ」
「まるで鬼のようで怖いよ~」

  狛子と狛助がわたしの周りをぐるぐる回りながら言った。

「怖いって、鬼のようっだってちょっとひどいよ~」

  わたしが大声で叫んだその時。

「奈良ちゃん、狛子ちゃん、狛助君ご飯よ」

  おばあちゃんの呑気な声が台所から聞こえてきた。
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