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華夜ちゃんの友達

先生が戻ってきた

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「奈夜ちゃんは神様に見守られていたんだね」

  華夜ちゃんはそう言って神様とわたしの顔を交互に眺めた。

「見守られていたのはとても有り難いな。だけど、お賽銭を喜ばれていたような気もするんだけどね」

  わたしは神様の顔をチラリと見て言った。

「いやいや、お賽銭はもちろん美味しく舐めさせてもらっているが奈夜ちゃんの素直な真っ直ぐな心に感動していたんだよ」

  神様は穏やかな笑みを浮かべた。

「あ、ありがとうございます」

  素直な真っ直ぐな心と言われるとなんだかちょっと照れくさくなってしまう。

「わたしも奈夜ちゃんを応援していたよ」
「僕も応援していたよ~」

  狛子と狛助がわたしの顔を真っ直ぐ見てにぱーっと笑った。もう子猫と子犬に笑いかけられたみたいできゅんとなる。

「奈夜ちゃんってば幸せだね」

  華夜ちゃんがとびっきりの太陽スマイルを浮かべた。

「うん、幸せかも」

  なんだか嬉しくなって頬が緩んだ。

  その時、ガラガラと引き戸が開き先生が戻ってきた。


  先生はきっとトイレでびょーんと飛び出していた鼻毛を処理してきたのだろう。先生の鼻をチラッと見てみたけれど鼻毛はなかった。

  鏡の前でがびーんとショックを受けてる先生の姿を想像すると笑いそうになる。ダメダメここは笑うところではないよとぐっと我慢した。

  クラスメイトのみんなもどうやら先生の鼻に注目しているようだ。

「ごほんごほん、みんな待たせたな。さあ、授業を始めるぞ」

  先生はわざとらしく咳払いをしながら教科書を開いた。わたしとクラスメイトのみんなは「は~い」と素直に答え教科書を開いた。

「ホッホッ、あの先生トイレで飛び出していた鼻毛をカットしたんだな。綺麗になっておるぞ」

  なんて神様がぽつりと呟くものだからわたしは思わず「ぷっ!」と笑ってしまったじゃない。

「町屋さん、何がおかしいのですか?」

  先生が教壇に教科書を置きわたしの顔をじっと見た。

「あ、いえ、すみません。何でもありません」とわたしは答えた。

  そして校長先生の椅子にふんぞり返って座る神様に視線を向けキッと睨んだ。神様は素知らぬ顔で鼻歌をふんふんと歌っていた。

  もう、神様の優しい言葉にちょっと感動していたのにやっぱり神様はこんな人(神様)でしかないんだ。
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