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どうして俺だけ人間なんだ!

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  俺は百歳まで生きて天寿を全うした。だけど、一つだけ心残りがあるそれは……。

  俺は猫が大好きだった。けれど俺は猫アレルギーだったので可愛らしい猫に触れることができなかったのだ。

  もふもふ猫の可愛らしい姿を見ると胸がきゅーんとする。きっとあのもふもふに手を触れると柔らかくてふわふわで気持ちいいんだろうなと思うのだけど……。

  なんせ俺は猫アレルギーだ。猫が近づいてくると鼻水が出るしくしゃみや目の痒みなどと様々な症状が出るのだ。

  大好きな猫を触りたい。仲良くしたい。俺はもふもふタイムをしたいぞ。

  だから、今度生まれ変わったらもふもふな猫に囲まれて暮らしたいと天国の神様に言った。

  すると、「了解しました」と神様は真っ白な口髭を引っ張りにっこりと微笑みを浮かべた。

  おっと、そんなにあっさり了解してくれるんですか!!

  俺は嬉しくてそれはもう嬉しくてたまらなかった。だって、猫に囲まれて暮らせると思ったらそうだろう。

  来世はもふもふ猫と幸せな時間を過ごせるんだと思うとウキウキした。

  俺はゆっくり目を閉じた。百年間の人生は幸せだった。感謝するよ、ありがとう。

ーーーー


「だから、どうして、人間は俺だけなんだよ!」

  俺は時々叫びたくなる。その理由は……。

  朝、目を覚ますと朝食の良い香りがふわふわと漂ってきた。俺は眠たい目を擦りながら台所に行く。

「あら、猫太ねこたおはよう」

「おはよう、お母さん」

「今日は猫太の大好きなオムライスよ~」

  お母さんは微笑み浮かべた。


  その笑顔があまりにも可愛らしくて俺のお母さんなのに思わずぎゅっと抱きしめたくなる。

  だって、俺のお母さんは白、茶、黒色の三色の毛色を持つ三毛猫なのだ。もふもふの猫なんだよ。

「オムライス嬉しいな。だけど、俺は幼い子供じゃないよ」

「あらあら、猫太は、わたしにとってはいつまでも子供よ」

  なんてことを猫の顔をしたキュートなお母さんが言うのだからなんて答えたら良いのか分からなくなる。

  それに俺には百年間の前世の記憶があるのだから。そんな俺が猫だらけの異世界に転生した。

  見かけは十代の少年だけど前世での百年間の記憶がありジジイだ。だけど、この世界に猫太として転生した俺の心はなぜだか少年のようにちょっと幼い。

「お母さん、ケチャップたっぷりかけてね」

  俺は椅子に腰を下ろしオムライスを待った。
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