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懐かしい島豆腐とおばぁの笑顔

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  懐かしい幸せな味が口の中いっぱいに広がった。ニラの良い香りともやしのシャキシャキ感はもう最高でたまらない。

  豆腐チャンプルーは美味しくてご飯がどんどん進む。わたしは、湯気の立つほくほくのご飯と豆腐チャンプルーを交互に食べた。

  おばぁのご飯を食べる。こんなありふれた幸せがわたしにとってはとても大切でかけがえのないものだった。

  わたしのことを見つめるおばぁのその眼差しも温かくて愛されているのかなと思うと心がほわほわしたものに包まれた。

  わたしは夢中でご飯を食べ味わった。

「愛可ちゃん、美味しいかい?」

「うん、美味しいよ」

  顔を上げるとおばぁがにっこりと笑いわたしを見ていた。そして、おばぁも島豆腐を口に運び食べた。

「自分で言うのもなんだかだけど、うん、この豆腐チャンプルーは美味しい」

  おばぁはそう言って豆腐チャンプルーをパクパクと食べた。そんなおばぁのことがわたしは大好きだった。

ぽかぽか太陽の日差しのように暖かくて優しい笑顔のおばぁ。わたしもおばぁみたいな笑顔の似合う女の子になりたいなと思った。

  そして、わたしがいつかおばあちゃんになったその時はしわくちゃになってしまったとしても幸せな横じわを刻んでいたのであれば幸せかな。

  豆腐チャンプルーとおばぁの太陽みたいな笑顔がキラキラと輝き眩しい夢を見た。このまま夢の中で過ごせたらどんなに幸せなことだろうか。

  ぽかぽかで暖かくて幸せな夢の世界の中でわたしは穏やかな時間を過ごしていた。

  だけど現実はそんなに甘くはなくて……。

  朝を告げる目覚まし時計のジリリリリージリリリリーンという大音量のベル音が鳴り響きわたしを容赦なく叩き起こす。

  まだ夢の世界にいたいのに。

  ジリリリリージリリリリーンと目覚まし時計のベル音が鳴り続ける。

  わたしは眠たい目を擦りながら憎き目覚まし時計に手を伸ばし止めた。

「起きなくちゃ」

  わたしは、仕方がないので渋々起き上がりカーテンを開ける。朝の日差しがおはようとわたしに微笑みかけてくれた。
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