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美味しいちんすこうとおばぁのお菓子屋
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「ちんすこう食べるかい? サービスだよ」
おばぁはそう言いながら黒糖味のちんすこうをわたし達に差し出した。
「あ、ありがとうございます」
「そうだ、お茶でも淹れてくるさね」
おばぁはわたし達の返事も待たず店の奥に引っ込んでしまった。
わたしの手のひらに黒糖と書かれたちんすこうがある。おばぁってばかごの中にも同じ黒糖のちんすこうがあるのにな。
「おばぁにちんすこう貰えてラッキーだね」
きらりちゃんはニヒヒッと笑いながらちんすこうの包みを開けたかと思うと食べているではないか。
「ちょっときらりちゃん。おばぁの淹れてくれるお茶を待たなきゃダメだよ」
「え? でも美川さんも食べているよ」
「え!?」
わたしは、視線を美川さんに向けた。すると、美川さんは幸せそうにちんすこうを食べていた。
ああ、もうこの二人はなんだか似ているのだから困ったものだ。
「ちょっと二人とも~そんなに急いで食べることないんじゃない?」
「そっかな? 美味しいものはパッパッと食べなきゃね。ねっ、美川さん」
「そうだね。きらりちゃん。気が合うじゃないか」
美川さんは目尻を下げてふにゃふにゃふにゃーと幸せそうな表情で黒糖味のちんすこうを食べている。
その時、おばぁが湯気の立っている温かいさんぴん茶とちんすこうを朱塗りのお盆に載せてやって来た。
「ちんすこうたくさんあるからどうぞ」
おばぁはそう言いながら小さな木製のテーブルにお盆を置いた。
「わ~い、美味しそう。ちんすこう色んな種類があるね」
「おっ、これは嬉しいです」
「わっ、ありがとうございます」
わたし達はお礼を言って歓声を上げた。
「さあさあ、遠慮なくお食べ」
おばぁも顔をしわくちゃにしてニコニコと笑っている。幸せな空気が店内にふんわりと流れた。
「うん、美味しいです」
口の中にふんわりと紅芋の風味が広がる。そして、温かいさんぴん茶とほろっとした紅芋のちんすこうがよく合う。
お菓子を食べる時間は幸せな時間だ。
「うふふ、昔はこうしてみんなでテーブルを囲みお菓子を食べたよ」
おばぁはさんぴん茶をズズッと飲みながら言った。
「今はお客さんは来ないの?」
「そうさね……たまにしか来ないね」
「おばぁのお店夢が溢れているのにどうしてなんだろう?」
きらりちゃんは首を傾げプレーン味のちんすこうを食べた。
「お嬢ちゃん。夢が溢れているなんておばぁは嬉しくなるぞ。でも、夢なんて溢れているかね?」
おばぁは目を細め笑っている。
「うん、だって、いろ~んなお菓子があってあれも食べたいこれも食べたいって遊園地みたいだよ~」
「あはは。そうかい、そうかい」
おばぁは口元に手を当て幸せそうに微笑みを浮かべた。
「うん、そうだよ」
「そうですよ。わたしも色々なお菓子があって選ぶのが楽しいですよ」
「俺も楽しいですよ」
わたし達はそう言ってちんすこうを食べた。
「近所にスーパーも出来たしおばぁの駄菓子屋はもうお呼びじゃないと思って閉めようかなと考えていたところなんだよ」
おばぁはさんぴん茶をズズッと飲みながら寂しそうに笑った。
「おばぁ、そんなことないですよ! おばぁの駄菓子屋さんはきらりちゃんの言うように夢が溢れていますよ」
「……そうかな?」
「そうですよ! わたしは、このお店いいなぁと思いますよ」
わたしは、おばぁの寂しそうな表情を見ていると胸がギュッと締め付けられそうになったので声に力をこめた。
「……ありがとう」
おばぁは軽く微笑んだ。その時、
「おばぁ」と女性の声が聞こえてきた。
誰だろ? わたしはその声に振り返った。
おばぁはそう言いながら黒糖味のちんすこうをわたし達に差し出した。
「あ、ありがとうございます」
「そうだ、お茶でも淹れてくるさね」
おばぁはわたし達の返事も待たず店の奥に引っ込んでしまった。
わたしの手のひらに黒糖と書かれたちんすこうがある。おばぁってばかごの中にも同じ黒糖のちんすこうがあるのにな。
「おばぁにちんすこう貰えてラッキーだね」
きらりちゃんはニヒヒッと笑いながらちんすこうの包みを開けたかと思うと食べているではないか。
「ちょっときらりちゃん。おばぁの淹れてくれるお茶を待たなきゃダメだよ」
「え? でも美川さんも食べているよ」
「え!?」
わたしは、視線を美川さんに向けた。すると、美川さんは幸せそうにちんすこうを食べていた。
ああ、もうこの二人はなんだか似ているのだから困ったものだ。
「ちょっと二人とも~そんなに急いで食べることないんじゃない?」
「そっかな? 美味しいものはパッパッと食べなきゃね。ねっ、美川さん」
「そうだね。きらりちゃん。気が合うじゃないか」
美川さんは目尻を下げてふにゃふにゃふにゃーと幸せそうな表情で黒糖味のちんすこうを食べている。
その時、おばぁが湯気の立っている温かいさんぴん茶とちんすこうを朱塗りのお盆に載せてやって来た。
「ちんすこうたくさんあるからどうぞ」
おばぁはそう言いながら小さな木製のテーブルにお盆を置いた。
「わ~い、美味しそう。ちんすこう色んな種類があるね」
「おっ、これは嬉しいです」
「わっ、ありがとうございます」
わたし達はお礼を言って歓声を上げた。
「さあさあ、遠慮なくお食べ」
おばぁも顔をしわくちゃにしてニコニコと笑っている。幸せな空気が店内にふんわりと流れた。
「うん、美味しいです」
口の中にふんわりと紅芋の風味が広がる。そして、温かいさんぴん茶とほろっとした紅芋のちんすこうがよく合う。
お菓子を食べる時間は幸せな時間だ。
「うふふ、昔はこうしてみんなでテーブルを囲みお菓子を食べたよ」
おばぁはさんぴん茶をズズッと飲みながら言った。
「今はお客さんは来ないの?」
「そうさね……たまにしか来ないね」
「おばぁのお店夢が溢れているのにどうしてなんだろう?」
きらりちゃんは首を傾げプレーン味のちんすこうを食べた。
「お嬢ちゃん。夢が溢れているなんておばぁは嬉しくなるぞ。でも、夢なんて溢れているかね?」
おばぁは目を細め笑っている。
「うん、だって、いろ~んなお菓子があってあれも食べたいこれも食べたいって遊園地みたいだよ~」
「あはは。そうかい、そうかい」
おばぁは口元に手を当て幸せそうに微笑みを浮かべた。
「うん、そうだよ」
「そうですよ。わたしも色々なお菓子があって選ぶのが楽しいですよ」
「俺も楽しいですよ」
わたし達はそう言ってちんすこうを食べた。
「近所にスーパーも出来たしおばぁの駄菓子屋はもうお呼びじゃないと思って閉めようかなと考えていたところなんだよ」
おばぁはさんぴん茶をズズッと飲みながら寂しそうに笑った。
「おばぁ、そんなことないですよ! おばぁの駄菓子屋さんはきらりちゃんの言うように夢が溢れていますよ」
「……そうかな?」
「そうですよ! わたしは、このお店いいなぁと思いますよ」
わたしは、おばぁの寂しそうな表情を見ていると胸がギュッと締め付けられそうになったので声に力をこめた。
「……ありがとう」
おばぁは軽く微笑んだ。その時、
「おばぁ」と女性の声が聞こえてきた。
誰だろ? わたしはその声に振り返った。
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